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道南農業試験場

世代促進温室

世代促進の目的

 水稲新品種育成に要する期間を1年短縮することです。 
 北海道の水田では、1年1作しか栽培することは出来ません。しかし、水稲の育成には遺伝的な固定が必要なため、10回は自殖(採種)することが必要で、1年1作だと品種育成には10年間必要となってしまいます。これでは生産者、消費者のニーズに合致した品種を迅速に育成することが出来ません。また初期世代F1~F3までは、遺伝的な固定が出来ておらず、選抜効率が悪い問題もあります。

 そこで、現在の道総研の水稲育種では、夏に交配を行った後、冬に上川農試の冬期温室でF1世代※を栽培する「F1養成」により1年、その後、道南農試の大型温室で1年間にF2、F3世代の2回栽培する「世代促進」を行うことにより、もう1年、合わせて2年間短縮することが出来る方法を採用しておりますこれにより最短で8年で新品種育成が可能となります。中期世代(F4~F7)からは、ある程度遺伝的な固定が進んでいるため、上川農試と中央農試でそれぞれ選抜を行い、優良な品種を育成します。また世代促進は、「ゆめぴりか」のような良食味品種だけでなく、「はくちょうもち」のような糯品種、「吟風」のような酒米品種の育成にも用いられています。最近10年間で育成された道総研の水稲品種は、ほぼ全て世代促進をおこなっております。

※F1世代:雑種第一代の世代のことで、交配後1回採種(自殖)した世代を示す。F4などは交配後4回採種(自殖)した世代のことを示す。

〇世代促進を行った水稲品種

品種世代促進を行った年
きたしずく2003年
きたふくもち2006年
そらゆたか2006年
そらゆき2007年
えみまる2009年
そらきらり2015年

 

〇栽培方法
 畑の状態で播種し、その後水を入れる、乾田直播の形式で年に2回栽培を行っております。気温の低い春や秋は、温室内の温湯暖房パイプで加温して生育を促進しております。世代促進で扱う系統は、初期世代のため選抜の効率が悪いです。そのため選抜は行わず、組合せごとにまとめて播種や刈り取りを行い、世代促進を行っております。現在は、上川農試と中央農試合わせて、毎年80組合せ程度を新しく交配しておりますが、ほぼ全てを世代促進に供試しております。供試する組合せは、毎年異なった80組合せ程度になります。

図1.大型温室の外観(Ⅰ期は右側、Ⅱ期は左側で栽培)

 

図2.世促温室の各棟の構造図(2棟とも共通)

 

〇設備内容

項目

内容

竣工

平成10年9月(1999.9)
温室ガラス温室2棟:鉄骨構造、鉄筋コンクリート、4~5mm強化ガラス。
天窓・側窓は温度による電動自動開閉。地温,気温制御。

大きさ

ガラス室:15m×69.5m(1042.5m)、有効水田面積:12m×62.5m(750m)。
管理棟:機械室、種子予措室、調査室、脱穀室、資材保管室。

水田

作土(30cm)、砂(10cm)、砂利(20cm)。 
底部コンクリートに温水管(不凍液)埋設。

栽培期間・温度設定

Ⅰ期は4月播種~7月収穫、Ⅱ期は8月播種~11月収穫。 温度は20~30℃程度に調節

暖房

重油ボイラーで湯を加熱後、世促温室内のフィンパイプで放熱して加温する。

制御システム

冬季補光ランプ、全自動農薬散布、3層ビニールカーテン自動開閉。
循環用エアロミキサー、換気扇、天窓・側窓自動開閉。

給水・排水

井戸(深さ100m)水使用。パイプライン給水。暗渠排水。


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