水産研究本部

試験研究は今 No.219「水産試験場施設事情あれこれ」(1995年3月24日)

水産試験場施設事情あれこれ

  現在、道立中央水産試験場について平成7年度完成を目指して、改築を進めており、魚病に関する研究や、水産工学的な研究、水産物の安全性に関する研究など最近の研究ニーズに対応した施設が整備されつつあります。

  さて、今回は各都府県の試験研究施設への取り組みについて考えてみました。

  他の都府県についても、北海道同様、それぞれ独自の水産試験場を持っており、時代のニーズに合わせ見直しを行っています。

  最近、都府県においても水産試験場の改築に非常に積極的に取り組んでおり、次のような状況になっています。
1:最近の水産試験場改築の考え方
  各県の改築に当たっての考え方については、老朽化ばかりの理由ではなく、試験研究部門の統合や各本支場の統合や機能の分化、研究の中核機能を持つ施設の整備などに加えて、新しい研究機能を持った施設を備えることなどが主流を占めています。

  この考え方は、とりもなおさず限られた施設で最大の成果をどのように得るのか、難しい研究ニーズにどのように対処していくかを追及したものです。道立中央水産試験場についても、研究の中核的な機能を備えた『開かれた水試』として、生まれ変わっています。
2:庁舎の外観
  昭和30年代や40年代に建設された庁舎施設については、時代を象徴しているのか、大部分がこれしかないといったマッチ箱の定型的な施設が多かったわけです。

  ところが、最近建設の庁舎については外壁がゆったり湾曲していたり傾いていたり、何か宇宙的な印象を受ける、あのガウディの建築とはいかないまでも、ユニークで景観や地域に配慮した建物が多くなっています。中には、庁舎全体が船の形になっていたり、細かなところにお国自慢が伺われたり、漁業者などをいろいろ考えて建築しているということがわかります。

  いくら庁舎が立派でも、成果が上がらなければ、何もならないですが、もっと成果を上げようと、次のような新しい機能も考えています。
3:新しい研究機能
  各都府県で新しい研究機能としては、藻類の組織培養や染色体工学などの生物工学、育種などのバイオテクノロジー、育種、遺伝に関する実験施設が、新しい水試には、ほぼ全部設備されています。

  また、最近問題となっている、魚病などの防疫研究の施設などについても、設置が増えてきています。

  他に北海道の水産試験場に無い施設としては、水産試験場の前浜にクレーンや筏を専門に設置した、魚類中間育成場を設けた大阪府水産試験場や、専門の海面生簀や養殖筏を持つ岡山県水産試験場や大分県水産試験場などがあり、直接管理しながら、成果を出せるような施設となっています。
4:一般向けの施設等
  今までの施設と違った新しい概念の施設としては、県民に広く新しく水産を知ってもらうための地域を考えた一般的な施設として、いろいろなものが考えられています。

例えば、
  • 一般来庁者が水と親しむ施設
    • 植栽やベンチを置いたウォーターフロント公園(熊本)
    • 海岸線を型どった人工池での貝類、小魚の飼育(岩手)
  • 展示水槽パネル
    • 大型回遊水槽でのマダイ、ブリ等の飼育(熊本)
    • 展示水槽、ジオラマ、ミニ水族館
    • 有料の海洋漁業科学館(石川)
  • 教育・実習施設
    • 海の教室などの視聴覚室(宮城)
    • お魚学習館(岡山)
    • 研修室、展示室
    • 漁業者の自主研究活動を進める開放実験室(愛媛)
  このように、各都府県ともに研究の大目的は、資源管理、増殖栽培、利用加工の技術開発ですが、社会情勢のニーズの変化により、「人」と「環境」を考えた研究周辺の整備をも行ってきていますので、皆さんも機会があれば、他県の事情を見聞されるのも良いのではないでしょうか。(水産部漁政課研究企画係)
都道府県 完成年度
岩手県 5
宮城県 4
東京都 4
神奈川県 4
石川県 4
大阪府 3
岡山県 3
佐賀県 3
愛媛県 2
熊本県