水産研究本部

試験研究は今 No.433「サケ白子、ホタテガイ白子から光学素子を」(2000年9月25日)

サケ白子、ホタテガイ白子から光学素子を

  近年、資源の有効利用と環境保全から未利用水産物の利用技術の開発が求められています。北海道では1年間にサケの白子が約7500~12500トン、ホタテガイの白子が約5000トン排出されています。これらは一部が食用、飼料用などに使われている以外は廃棄されている現状にあります。それぞれの白子には遺伝子の本体であるDNAが高濃度で含まれています。最近、千歳技術大学と東京工業大学の共同研究でサケ白子由来のDNAと脂質との複合体から透明フィルムの作成が可能であることが見いだされました。この知見を活用して、平成11年度から科学技術庁の総合研究委託費により海洋生物由来DNAの新機能材料化に関する研究がスタートしました。この研究は、21世紀が、電子デバイスから光デバイスに転換することが予想されることを踏まえ、海洋生物由来DNAを出発物質として薄膜化(フィルム化)が容易な特性を有する光学材料の開発を行い、光の波長変換、光スイッチ等を行う将来の光コンピューターの基盤をなす非線形光学素子、光エネルギーを電子機能に変換する光電変換素子、発光素子を開発することを目的としています。

本研究の内容と参加機関はつぎのとおりです。

1:海洋生物由来のDNAを基礎材料とする薄膜作成:

2:北海道工業技術センター、北海道立中央水産試験場、日本化学飼料株式会社、東京工業大学
サケを中心としたDNAフィルムの光学特性の評価:

3:千歳技術大学、北海道大学電子科学研究所、科学技術庁金属材料技術研究所
サケを中心としたDNAフィルムの物性評価、用途展開:

  通産省工業技術院電子技術総合研究所、キャノン株式会社、北海道大学地球環境科学研究科

  このうち中央水産試験場では、ホタテガイ白子からのDNAの抽出技術の開発を担当しています。いままでに、ホタテガイ白子には,成熟期で5%前後のDNAが含まれていることを明らかにし、図1の方法での高分子DNAの抽出法を確立しました。実験室レベルでの抽出法ですが、この方法で抽出したホタテガイDNAはフィルム原料として使用できるとの評価を得ています。
    • 図1
    • 写真 エタノールを加え沈殿したDNA
 本年度は、ホタテガイ白子の時期別・地域別DNA含量を把握するとともに、より低コストでの抽出技術を検討しています。

(中央水産試験場 加工利用部 麻生真悟)