水産研究本部

試験研究は今 No.654「今年(平成21年)のサンマ漁について ~7月に流し網漁業で漁獲されたサンマについて~」(2009年12月9日)

試験研究は今 No.654「今年(平成21年)のサンマ漁について —7月に流し網漁業で漁獲されたサンマについて—」(2009年12月9日)

はじめに

道東海域では、黒潮系の北上暖水の発達とともに太平洋沿岸域を北上し、6月上旬頃から三陸沿岸の定置網で漁獲され始め、7月上旬〜8月中旬には道東沖でさんま流し網漁業の漁獲対象となる北上群と、黒潮勢力の強まる春から夏にかけて太平洋のはるか沖合(公海)を北上し、千島列島沖合の親潮域で摂餌し、その後8月中旬頃から10月にかけて道東沖合へ来遊し、本格的なさんま棒受け網漁業の漁獲対象となる南下群があります。

今年も道東でのサンマ漁は7月上旬の流し網漁業に始まり、下旬から小型棒受け網、8月に入ると大型棒受け網船が出漁し盛漁期を迎えました。10月31日までの漁獲量(暫定値)は、北海道で111,028トン(昨年同期:112,263トン)、全国では204,702トン(同:216,166トン)となっていて、昨年よりは若干少ないようです。

今年7月にサンマ流し網漁船によって漁獲されたサンマを調べたところ、例年に見られない特徴がありましたので紹介します。
    • 図1
      図1 サンマの北上群と南下群の回遊と漁場形成

今年のサンマについて

 例年、7月にさんま流し網漁業で漁獲されるサンマは北上群が主であり、その特徴は生殖巣(卵や白子)が発達していて(道東沖での産卵が間近)、肥満度が低く(痩せている)、サンマウオジラミの寄生率が高いことが知られています。

今年 7月28日にさんま流し網漁船から採取した標本を2005年以降(2008年は欠測)の同時期のデータで比較してみると、例年とは異なった特徴が現れていました。

(1) 生殖巣重量指数(GSI:生殖巣重量/体重×100)図2には各年の標本の肥満度と GSI(生殖巣重量指数)の関係を示しました。各年のGSI(縦軸)をみると、今年(2009年)以外は4.0 以上の個体が出現していますが、今年は標本の98パーセントが1.0以下であり、4.0以下の未成熟個体のみで占められていました。例年8月以降に棒受け網漁業で漁獲される南下群のGSI はほぼ1.0以下となっています。

(2) 肥満度(体重/体長 3×1000)図2の肥満度をみると、2005年〜2007 年は肥満度が4.0〜6.1の間にあり、平均値はほぼ5.0であるのに対して、今年は4.6〜6.9の間にあり、他の年に比べ高い値を示していました。また、平均は5.7であり、この値は8月中旬〜下旬に漁獲される南下群と同程度の値となります。

    • 図2
      図2 さんま流し網漁業で漁獲されたサンマの肥満度とGSIの関係

      (GSIが4.0以上のものは成熟期と考え られる)

(3) サンマウオジラミの寄生率図3には標本中の見られたサンマウオジラミの寄生率の年変化を示しました。2005年〜2007年は寄生率90パーセント以上でしたが、今年は57パーセントであり、南下群の寄生率(40〜55パーセント)とほぼ同様の値でした。

    • 図3
      図3 サンマウオジラミ寄生率(さんま流し網漁業)

あとがき

今年の7月のサンマは、生殖巣が未熟で、肥満度が高く、サンマウオジラミの寄生率が低い、まさに盛漁期に漁獲される様なサンマ(南下群)が多く漁獲されていたようでした。また、今年の道東沖でのサンマの終漁期は例年(11月上旬)より2旬も早く、10月中旬でした。

今年の南下群の道東海域への来遊は、例年よりも早かったため、終漁期(三陸沖への南下)も早かったのではないかとも思われます。

(釧路水産試験場資源管理部 三橋正基)

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