水産研究本部

試験研究は今 No.712「第1回コンブ研究会の開催」(2012年4月27日)

コンブ研究会について

  「コンブ研究会」は、平成23年10月、北海道立総合研究機構(道総研)の水産試験場、食品加工研究センター、工業試験場および北方建築総合研究所の研究者と行政(道水産林務部)の関係者をメンバーとして発足しました。
 
  すでに報道されているように道産コンブの生産量は、近年、減少し続けています。その要因のひとつとしてコンブ生産に従事する漁業者数の減少や高齢化による生産体制の弱体化が指摘されています。コンブ製品は漁業者自らが加工(乾燥)を行いますが、この乾燥作業が重労働で大きな負担になっています。本研究会では、コンブの乾燥方法の効率化(新しい乾燥技術)を中心に研究の課題化を目指しています。当面、本研究会を通じてコンブに関するあらゆる情報を共有していきたいと考えています。

第1回コンブ研究会の概要

  第1回目の研究会は平成24年2月27日道総研工業試験場会議室において開催され、会員外も含めて24名が参加しました。
 
   本研究会では、コンブの加工メーカーとしてヤマトタカハシ株式会社(福井県)代表取締役会長北村裕氏から、(1)「コンブ流通の現状と問題点」について、また、生産現場からは歯舞漁業協同組合指導部長 平山明氏より、(2)「歯舞地区で行われているコンブ乾燥の実態」についての話題を提供していただきました。以下にその概要を記します。

(1)コンブ流通の現状と問題点 ヤマトタカハシ株式会社代表取締役会長北村裕氏
  • コンブ減産は加工メーカーにとっても大きな問題であり、コンブの価格高騰を招いている。原料供給、価格の不安定化は、(需要拡大のための)新製品開発も難しくしており、コンブ生産の安定化を望みたい。
  • 一般家庭への液体・粉末調味料が普及し、いわゆる出汁系コンブの消費が不振となっている。特に、贈答用コンブ(特に上級品)が売れなくなっており、上級品と下級品との値幅が小さくなっている傾向にある。
  • 機械乾燥と品質の関係については、機械乾燥が特に高温短時間で行われた場合、品質が劣化すると考えている。たとえば、おぼろこんぶ用途にすると硬く割れやすく、削りにくくなる例がある。
  • 漁業者は色の「黒さ」を重視して、機械乾燥を優先する傾向があるようだが、ユーザー側では特に加工用コンブは極端な色落ちを除いてあまり黒さを問題にしていない。
  • 現在の検査規格はユーザー側から見ても大変複雑なものとなっている。上記のように加工用コンブでは色調にあまりこだわりがなく、長さも多少短くても問題とはならない。格付け基準を見直しても良い時期にきているのではないか。
(2)歯舞地区で行われているコンブ乾燥の実態 歯舞漁業協同組合指導部長 平山明氏
  • コンブの採藻から乾燥、選葉、梱包までの工程をスライドにより写真を交えて詳細に説明していただいた。
  • 歯舞地区では、天候にかかわらず機械乾燥がメインとなる。これは、色調や歩留りの点からも機械乾燥が優れていると考えているからだ。特にさお前(成長途上の若いコンブ)の場合、天日乾燥では緑色になりやすく等級が落ちるという問題がある。

おわりに

  本コンブ研究会では、終始活発に質疑や意見交換が行われ、参加者のコンブに関する理解が深まったものと感じています。また、生産者(漁業者)側と加工業者側では乾燥コンブに対する品質(色調)の考え方に違いがあること、加工サイドからは機械乾燥に対して品質上の懸念を持っていることなどが確認できました。研究の課題化を検討する上で参考にしたいと考えています。

(釧路水産試験場 加工利用部 飯田訓之)

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