水産研究本部

試験研究は今 No.504「小樽赤岩沖に新しい海水温自動観測ブイが入りました」(2003年7月24日)

小樽赤岩沖に新しい海水温自動観測ブイが入りました

  中央水試では、新庁舎建設時の平成6年にテレメータブイSEACOMを導入し(北水試だより26号参照)、当初余市沖水深50メートルに設置、その後平成9年からは現在の小樽赤岩沖水深40メートル地点に移設して水温観測を行ってきました。

  この間、冬場の時化等の原因による故障や破損に見舞われたため、夏場中心の観測に切り替え継続し、得られた水温情報は、後志北部地区水産技術普及指導所を通じてホタテガイ養殖漁業関連業務で活用されたほか、札幌市保健所の行う夏季の食中毒予報の参考資料としても使われてきました。

  この種の調査機器の耐用年数は一般に5年と言われていますが、途中から半年間の使用に変更したとはいえ、9年目にとうとう使用不能になってしまいました。昨今の財政状況から高額な備品の更新や修理費の捻出もままならず、一時は観測の継続を断念しましたが、最近では従来と比べ安価で北海道の海象条件下でも周年稼働できる自動観測ブイが開発されているため、新たに業務委託方式で継続することにしました。

  新しい海水温自動観測ブイには、CANS-miniOM1型という機種を採用しました。データの継続性を考慮して今までと同じ小樽市赤岩沖水深約40メートル地点で、水深1、10、20、30メートルの4層の水温を1時間毎にリアルタイムで得ること、そして年2回程度のバッテリーの交換時を除き、ほぼ周年
データを得ることを条件にしました。

  平成15(2003)年6月19日、地元小樽市漁業協同組合並びにホタテガイ養殖部会の協力を得て、委託業者がブイを設置し、「小樽赤岩沖水温データ」は「海象台CANSホームページ http://www.cans.gr.jp/」(現在閉鎖中)に直ちに掲載されました。写真1~6に、ブイの形状と設置状況を紹介しました。

  現在、1時間毎に更新される最新の水温情報は、携帯電話やパソコンのインターネットで、CANSのホームページにアクセスすることで見ることができます。漁業など海の仕事に携わる方ばかりでなく、一般道民の方も道央圏での海のレジャーで十分活用できるでしょう。

  一方、漁業関係者からは、漁場として利用している海域の流向流速のデータを水温データと同時に知りたいというニーズがあります。 今回、独立行政法人北海道開発土木研究所(略称:開土研)でも、石狩湾沿岸水深50メートル前後での海水温と流向流速について1年間の調査を計画し、小樽市漁協に協力を求めていました。そこで、中央水試と開土研が調査協力を行うことにしました。具体的には、CANSブイに別の小型の記録式水温計を付けたことと、隣接した地点の海底にADCP(ドップラー式流向流速計)を設置して、多層の流向流速データを得るようにしたことです。これらの調査機器は、後日開土研が回収します。中央水試もデータの提供を受けて、CANSブイの海水温データの品質管理に利用します。 また流向流速のデータは、沿岸海域での漁場利用や調査研究の基礎資料として活用が期待されます。
(中央水試海洋環境部 吉田英雄)
    • 写真1
      写真1:ブイ全体 車の荷台にあるのが通信ユニット部、次いで浮子部、バッテリー部が続く。左にあるのはアンカー用の土嚢。

      小樽市祝津漁港にて。

    • 写真2
      写真2:赤岩沖水深約40メートル地点でのブイ設置作業風景。

      アンカー用土嚢を投入した直後。持っているのは通信ユニット部先端。

    • 写真3
      写真3:海上の通信ユニット部。

      約2メートル海面に出ている。

    • 写真4
      写真4:海面下からみた通信ユニット部。

      ユニット部の約半分が海面下にある。

    • 写真5
      写真5:水中の浮子部とバッテリー部。

      センサーケーブルがロープに沿って這う。

    • 写真6
      写真6:海底のアンカー用土嚢。

      重さは約300キログラム。