水産研究本部

試験研究は今 No.506「黒ボッキと茶ボッキ」(2003年8月22日)

黒ボッキと茶ボッキ

  北海道のホッキガイ(標準和名:ウバガイ)の生産量は全国の70パーセント(約5,000トン)を占めています。支庁別では胆振が40パーセント、根室が20パーセント、渡島・檜山が10パーセントを占めています。ホッキガイは殻の色により、黒ボッキ、茶ボッキと呼ばれています。この殻の色の違いはホッキガイの生息する場所の底質の違いによると言われており、茶ボッキを黒ボッキの漁場に移植すると黒くなることが報告されています(試験研究は今 No.238)。市場ではこの色の違いによって黒ボッキの方が高く売られているようです。そこで私たちは味や栄養に関係する成分について両者を比較してみました。

  試料は全道7カ所から4~8月にかけて漁獲された殻長10センチメートルの黒、茶ボッキで、刺身で食べる「足」の部分を分析しました。生物測定では殻、軟体部、足の歩留まりに大きな差はなく、足の歩留まりは8~15パーセントでした(表1)。主な成分を比較するとたんぱく質、グリコーゲン(炭水化物に含まれ、味のまとめ役、こく味を付与)、タウリン(滋養強壮や血液中のコレステロール低下作用があるアミノ酸)、アラニン・グリシン(甘みを呈するアミノ酸)のいずれも黒と茶で、差はありませんでした(図1、2、表2)。以上の結果から見た目(外観)は違っても私たちが食べる中身(成分)はほとんど差がないことがわかりました。

表1 ホッキガイの生物測定表
産地・月 殻色 殻長mm 体重g 殻g (%) 軟体部g (%) 足g (%)
網走支庁A・4月 103 322 168(52) 81(25) 25(8)
105 333 172(52) 90(27) 27(8)
十勝支庁A・5月 95 229 108(47) 82(36) 21(9)
94 239 121(51) 80(34) 22(9)
十勝支庁B・5月 95 243 118(49) 88(36) 26(10)
95 226 109(48) 82(36) 24(11)
根室支庁A・5月 98 240 114(48) 75(31) 20 (8)
100 291 160(55) 80(28) 22 (8)
網走支庁A・5月 110 379 193(51) 149(39) 48(13)
110 378 204(54) 123(33) 40(11)
根室支庁A・7月 97 216 106(49) 65(30) 25(11)
96 232 125(54) 61(26) 21(9)
胆振支庁A・7月 104 259 112(43) 84(33) 34(13)
103 264 124(47) 87(33) 34(13)
胆振支庁B・7月 109 321 149(47) 99(31) 34(11)
104 290 144(50) 86(30) 32(11)
胆振支庁A・8月 104 259 110(43) 85(33) 35(13)
101 261 114(44) 84 (32) 36(14)
胆振支庁A・9月
 
103 238 100(42) 71(30) 34 (14)
102 276 129(47) 77(28) 37(13)
胆振支庁B・9月
 
111 336 154(46) 91(27) 43(13)
105 272 121(45) 77(28) 38(14)
胆振支庁C・9月
 
103 254 141(55) 76(30) 35(14)
99 230 105(46) 66(29) 31(13)
網走支庁A・9月
 
108 357 202(57) 103 (29) 46(13)
108 388 215(55) 117(30) 56(15)
*10個平均,(%)は体重に対する割合    
    • 図1
    • 図2

表2 殻色別ホッキガイの成分(全試料の平均値)
(足100g当たり)
殻色 水分(g) グリコーゲン(g) たんぱく質(g) 脂質(g) 灰分(g) タウリン(mg) アラニン(mg) グリシン(mg)
74.4 7.2 15.2 1.1 1.5 671 798 510
74.3 7.5 15.0 1.0 1.5 692 806 520
(釧路水産試験場 利用部 宮崎亜希子、辻浩司)