水産研究本部

試験研究は今 No.514「十勝・釧路海域におけるシシャモの漁況予測」(2003年12月18日)

十勝・釧路海域におけるシシャモの漁況予測

はじめに

  シシャモは北海道太平洋沿岸の特産種で、海と河川を行き来するという生態を持っています。初冬に河川に上った親魚は川底に卵を産み付けます。翌年春にふ化した仔魚はそのまま海に流され、その多くは沿岸域で1年半生活した後、産卵のため河川に上ります。河川に上る前の、卵を持った雌は「子持ちシシャモ」として有名です。シシャモの産地としては胆振支庁の鵡川町が知られていますが、十勝・釧路支庁管内におけるシシャモ漁獲量は近年ではほぼ毎年1,000トン以上を維持しており、シシャモ全漁獲量の大半を占めています。漁獲量は西暦奇数年に多く、偶数年に少ないという変動傾向が認められます。

  釧路水産試験場では毎年、十勝・釧路海域のシシャモ漁況を予測するために、漁期前に魚群分布調査を行っています。今回は、2003年の調査結果について紹介します。

シシャモの分布密度と魚体組成

  2003年の調査は十勝海域(日高・十勝郡界沖~大津沖)では9月2日~11日、釧路海域(厚内沖~跡永賀沖)では9月24日~10月8日に行いました。小型底曳網の10分間曳きによる魚群分布調査を十勝海域で31地点、釧路海域で26地点で行いました。図1に2001~2003年のシシャモ分布密度を示しました。2003年のシシャモの分布範囲は1991年以来の調査結果と比較して狭く、シシャモが一曳網当たり5キログラム以上漁獲されたのは両海域を合わせて22地点でした。分布密度も低く、平均漁獲量は十勝海域で8.0キログラム(1991~2002年の平均値:10.5キログラム)、釧路海域で3.8キログラム(1991~2002年の平均値:6.8キログラム)でした。漁獲されたシシャモの年齢は満1歳(2年魚)が多く、体長は雌では10.0~10.4センチメートル(十勝)ないし11.0~11.4センチメートル(釧路)、雄では11.5~11.9センチメートル(十勝)ないし12.0~12.4センチメートル(釧路)が主体でした。
    • 図1

漁況予測

  漁期前の魚群分布密度とシシャモ桁網漁業の漁獲量とは正比例の関係にあるので、釧路水試ではこの関係を用いて十勝、釧路両海域の予測漁獲量を計算しています。図2と図3には両海域の漁獲量と、予測漁獲量の計算に用いている分布密度指数の経年変化を示しました。2003年の十勝海域における分布密度指数(水深35メートル以浅である16地点の一曳網当たり平均漁獲量)は11.58で平均値(1982~2002年:9.58)よりも高い値でした。予測漁獲量(広尾・大樹・大津漁協の合計漁獲量)は647トンと計算されました。釧路海域では厚内沖~釧路沖の分布密度指数(沖合側4地点を除く17地点の一曳網当たり平均漁獲量:キログラム)と跡永賀沖の分布密度指数(沖合側2地点を除く3地点の一曳網当たり平均漁獲量:キログラム)を計算に用いています。 2003年の厚内沖~釧路沖の分布密度指数は5.61であり、平均値(1979~2002年:8.13)よりも低い値でした。また、跡永賀沖の分布密度指数も0.68と、平均値(1979~2002年:2.54)よりも低い値でした。その結果、予測漁獲量(白糠・釧路市・釧路市東部・昆布森漁協の合計漁獲量)は 371トンと計算されました。

  2003年の十勝・釧路海域におけるシシャモ桁網漁業は11月24日までに終漁となりました。漁獲量は1,065トン(十勝587トン、釧路 398トン)と、ほぼ予測どおりで、豊漁年にもかかわらず前年並みの漁獲量に終わりました。昨年春には、主要遡上河川の新釧路川において、過去にないほど大量の仔魚が海に下るのが確認されていることから、降海後の沿岸域における何らかの環境条件が生残に悪い影響を及ぼしたものと考えられます。
(釧路水産試験場 資源管理部 平野 和夫)
    • 図2
      図2 十勝海域におけるシシャモの漁獲量と漁期前密度指数の推移

      ( 2003年漁獲量は密度指数から推定した予測漁獲量)

    • 図3
      図3 釧路海域におけるシシャモの漁獲量と漁期前密度指数の推移

      ( 2003年漁獲量は密度指数から推定した予測漁獲量)