水産研究本部

試験研究は今 No.522「コンブ養殖施設から海中に供給された餌料海藻量の見積もり」(2004年4月22日)

コンブ養殖施設から海中に供給された餌料海藻量の見積もり

はじめに

  渡島管内ではコンブの養殖が盛んに行われており、平成14年には約5千トン、約46億円の水揚げがあり、重要な産業となっています。コンブ養殖施設から「間引き」作業などによって、不要となったコンブは、海中に供給され、ウニなどの餌として利用されていると思われますが、その供給量はわかっていません。そこで、平成14~15年度に渡島管内のある養殖施設でのマコンブの成長と海中に供給されたマコンブ量について、渡島南部地区水産技術普及指導所と共同で調べましたので、ご紹介します。
   
「間引き」とは、成長を良くさせるために、たくさん付着しているマコンブの数を減らすことです。

養殖マコンブの成長

  養殖施設の一角に調査区を設けて、12月から翌年7月まで、毎月1回、マコンブの長さ、幅、重量を調べた結果、長さは12月には30センチメートルぐらいでしたが、その後どんどん大きくなり、5月には10メートルになっていました(図1)。6~7月に短くなっているのは、先の方が枯れたためです。幅は12月には3センチメートルぐらいでしたが、6月には30センチメートルほどになっていました。また、1本の重量は12月の4グラム程度から5月には2キログラム以上になっていました。
    • 図1
      図1 養殖マコンブの長さの推移
    • 図2
      図2 養殖マコンブの本数の推移

養殖施設から海中に供給されたマコンブ量

  毎月1回、調査区で1株当りに付いているマコンブ本数(写真1参照)を調べた結果、1株当りのマコンブ本数は、1月には約30本でしたが、その後2回の間引き作業が行われ、2月には3~4本まで減少していました(図2)。1回目の間引き作業で調査区から回収したマコンブ量をこの養殖施設全体に引き延ばしたところ、約44トンと推定され、これだけの量が海中に供給されたと思われました。また、2回目の間引き作業では、長さが1.5メートルを超えるマコンブは「早出しコンブ」として出荷されるため、それより短いマコンブについて、先ほどと同じ方法で求めたところ、約7トンが海中に供給されたと推定されました。これら2回の間引き作業により海中に供給されたマコンブ51トンは、ウニ約90万個体の1ヵ月間の餌料量に相当します。

  2月から7月にかけては、1株当りのマコンブ本数は、ほとんど減少していませんので(図2)、この間に養殖施設から脱落して、海中へ供給されたマコンブは、少ないと考えられました。ただし、6~7月には製品として出荷される際、先の方が枯れるなどして商品として価値の無い部分は、洋上で切断されて、海中に供給されています。漁業者の方にどれくらいのところで切断するかを聞いて、その量を求めたところ、約155トンと推定されました。この量は、ウニ約120万個体の1ヵ月間の餌料量に相当します。
これらのマコンブは、流れ藻として海底を漂ったり、海底に設置してあるブロックの間にたまったり、また、このような餌料海藻類を捕捉する機能を備えたブロックも考案されており(写真2)、そこに生息しているウニの餌として一部が利用されています(図3)。
(函館水産試験場 資源増殖部 吉田秀嗣)
    • 写真1
      写真1 コンブ養殖の様子
    • 写真2
      写真2 海藻を捕捉するためのブロックの   鉄枠に引っかかったコンブ類
    • 図3
      図3 養殖施設から海中に供給されたマコンブとその利用状況の模式図