水産研究本部

試験研究は今 No.541「ウニ加工の衛生上の留意点について」(2005年2月18日)

ウニ加工の衛生上の留意点について

  今、消費者は安全だと認識し、安心して購入できる食品に対して、安全の根拠や信頼の証を求める機運か高まってきています。平成17年1月4日、高橋知事の年頭挨拶においても、食の北海道ブランド推進の大きな柱として食の安全・安心条例の提案と組織体制強化についての考え方が示され、全庁的に推進することが述べられています。生食用水産加工品である生ウニの衛生管理状態は、近年大きく改善されてきていますが、加工実態は漁家および個人経営の零細企業が大部分を占め、まだ、充分とは言えない状況にあります。このことから、ウニを加工する際の衛生上の留意点を要約的に取りまとめましたのでご紹介します。

1.施設・設備について

1) 作業場は、物置や倉庫の併用ではなく、専用の施設として整備します。  
2) 作業場の整備にあたっては、ハエやほこりなど、外部からの侵入を防止できる方策を講じる必要があり
  ます。  
3) 床はコンクリ-トを原則とし、床上1メートルは不浸透性材料による腰張りをします。  
4) 作業場には専用手洗い施設を設け、トイレの手洗い施設と共用してはいけません。

2.原料について

1) 漁獲したウニは、放置しておくと鮮度が低下しますので、覆いをし出来るだけ低温(5度以下)に保ち、
  すみやかに処理をします。  
2) 特に、夏場の海水温が15度以上になると、腸炎ビブリオ菌による食中毒が起こる危険性が高くなります
  ので注意が必要です。

腸炎ビブリオ菌: 水温の高い夏場の海水中に存在し、漁獲物に付着し水揚げされ、製品で増殖したたもの
 を摂取すると発症(1グラム中に1億個以上のレベル)します。症状は下痢や発熱があり、年寄り・子供など
 体力の弱い人が感染すると最悪の場合死に至ります。

3.作業器具について

1) 作業台は木製よりステンレス製の方が、洗浄しやすく衛生的です。  
2) ザル、スプ-ン、ピンセットなどの器具は、きれいに洗浄.殺菌後、乾燥して使用します。  
3) 洗い桶、水切りザルなどの容器類はプラスチックやステンレス製が望ましく、交差汚染をさけるため、
  それぞれの作業専用とし、ほかの作業では使わないようにします。

4.使用用水および殺菌用水について

1) 作業用洗浄水は、海水ではなく4度の人工海水(食塩水)を使用します。4度の低温水使用は、鮮度保持
  と腸炎ビブリオ菌の増殖抑制から重要な留意点となります。
2) 器具等の殺菌に用いるアルコ-ルは、市販70パーセントアルコ-ル溶液、また、次亜塩素酸ソ-ダ-
  は、市販10パーセント次亜塩素酸ソ-ダ-液50~100グラムを水道水100キログラムに溶かして使用しま
  す。

5.作業時の心得について

1) 健康管理に留意し、下痢や風邪などの症状がある場合(大腸菌、ノロウイルス等の汚染)は作業に従事
  してはいけません。また、手指に傷がある場合(ブドウ状球菌等の汚染)などは直接食品に触れてはいけ
  ません。   

大腸菌 : 人など動物の腸内に生息し、この菌数が多い食品は不衛生であるため食中毒を起こす危険
 性が高くなります。  
ノロウイルス: 主に河川水が流入する海域に存在し、貝類などがこれを蓄積し人が摂取すると体内で増殖し
 下痢や嘔吐などの食中毒症状を起こします。また、この排泄物中には大量のウイルスが存在し、二次的な
 食中毒の原因ともなります。  
ブドウ状球菌: 傷などの化膿した部分に存在し、この細菌が産生した毒素で汚染された食品を摂取すると
 食中毒を起こします。  

2) 作業の前後には、必ず薬用石けん等で手洗いを行います。  
3) 作業をするときは頭髪などが落ちないよう作業用帽子をかぶり、ゴム手袋を着用します。  
4) 作業時は清潔な衣服を着用し、作業用靴は外で使用するものと区別します。  
5) 作業終了時は、殻や内蔵物は適正に処理し、製品に汚液等の細菌汚染がないように注意しましょう。  

以上、大まかなポイントについて記述しましたが、安全・安心の観点から、もう一度ご確認いただき、優れた製品作りをしてほしいと思います。(釧路水産試験場 加工部 金子博実)

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