水産研究本部

試験研究は今 No.625「FMTネットによるスケトウダラ仔稚魚採集」(2008年9月19日)

はじめに

  北海道日本海に分布するスケトウダラ資源は,近年では大きく減少しています。これは,漁業活動だけではなく,自然環境の変化も大きな要因として考えられます。一般に魚類では生活史のうち,卵から稚魚の期間の減耗が非常に大きいことが知られ,この時期の量的な変化と水温環境などの減耗の要因を調べることが,このスケトウダラ資源においても注目されるようになってきました。そこで,水産試験場では試験調査船による仔稚魚採集調査を毎年4月に実施することにしました。ここでは,その調査の概要をお知らせします。

仔稚魚採集具FMT

  仔稚魚は遊泳能力があるので,口径の小さいプランクトンネットや丸稚ネットでは仔稚魚を確実に採集することが困難です。そこで,新たに採集具FMTを使用することにしました(写真1)。FMTは2×2メートルの正方形フレームに網目幅1.5ミリメートルと細かい網目の網地を用いて,コッドエンドは仔稚魚を保護するためにバケット式としました。日本海のスケトウダラの仔稚魚は南部に位置する産卵場の桧山海域や岩内湾から,未成魚の成育場である宗谷海域,さらにはオホーツク海まで広域に分布することが予想され,これらの海域を網羅するために,二隻の試験調査船(おやしお丸,北洋丸)で共同調査を実施しました。これらの二隻は船尾の漁労設備が大きく異なりますが,おやしお丸ではAフレームを用いて網を吊り下げて投網・揚網作業を行い,北洋丸ではFMTのフレームにゴムのローラーを細工して取り付け,スリップウェイを使って投網・揚網作業を行えるようにしました(写真2)。
    • 写真1 新たに導入したFMTネット(おやしお丸仕様)
    • 写真1 コンドエンド
    • 写真2 おやしお丸での調査風景
    • 写真2 北洋丸での調査風景

採集結果

 2005年4月には日本海からオホーツク海で調査を実施し(図1),尾叉長2~3センチメートルのスケトウダラ仔稚魚(写真3)を計176個体採集することができました。仔稚魚はこの時期にはすでに鰾を持っていることがわかり,計量魚群探知機での量的な調査が期待できます。
    • 図1、写真3
   調査では,スケトウダラの他に,多くの仔稚魚や,プランクトンも同時に採集されました(写真4)。仔稚魚は石狩湾から宗谷海域で採集され,留萌海域で採集量が多くなりました。2005年から毎年4月におやしお丸,北洋丸を用いてこのような調査を実施ており,近いうちには,スケトウダラ資源変動の海洋環境との関係がわかってくることと考えています。また,仔稚魚期の量的な情報を知ることで,漁業への加入量の予測にも役立てたいと考えています。(中央水産試験場 資源管理部 板谷和彦)
    • 写真4

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