小果樹
第5話 夏の宝石 ~北海道の小果樹たち~
道総研 中央農業試験場 内田 哲嗣
北海道における果樹の栽培面積は約3,000ha(2008(平成20)年)で、このうちぶどう、りんご、おうとう(さくらんぼ)が8割以上を占め、このほかにプルーンやなし、ハスカップ等の小果樹類などが栽培されています。近年、ポリフェノールなどの機能性成分が注目され、小果樹類の栽培が伸びています。
小果樹であるハスカップやキイチゴなどは、北海道で自生していたものもありますが、現在栽培されているものの多くは海外から導入されたものです。
北海道における小果樹栽培については、明治期のはじめ、北海道開拓使がグースベリーやカーランツ、ラズベリーの苗を導入しましたが、産業としては定着せず、家庭果樹としての栽培にとどまりました。戦後に入り、ブルーベリーをはじめ、アロニア、シーベリーなどが導入されました。
現在、ハスカップは美唄市峰延、厚真町、千歳市、アロニアは伊達市大滝、シーベリーは士幌町などで栽培が盛んです。生果での利用以外にも、ジュース、ジャムや洋菓子など各種スイーツのほか、ヨーグルト、ビネガー、果実酒など地域の特産品・食材として利用されています。
また、イチゴ狩り、サクランボ狩りと並び、ハスカップ狩りやブルーベリー狩りは、北海道の夏の風物詩として定着し、体験観光としても高い人気を誇っています。

また、ハスカップでは利用法、繁殖法のほか、組織培養、挿し木法による育苗方法を確立するとともに、道内各地から収集した系統から、1990(平成2)年に、良食味で、果実が大きく、収量性が高い品種「ゆうふつ」を選抜しました。
この名は、国内を代表するハスカップの群生地である勇払原野に由来しています。
小果樹は、目の疲労回復に効果があるとされるアントシアニンなどの機能性成分のほか、ビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含んでいます。健康増進のためにも、毎日の食生活に上手に利用していきたいものです。
北海道の短い夏を彩る、甘酸っぱいハスカップやブルーベリー、色鮮やかなカーランツ、ラズベリー、たわわに実るアロニア、シーベリーなどの小果樹たち。果実のひとつひとつは小さいですが、食味・栄養をあわせて、まるで宝石のような輝きをはなっています。
ぜひ、ご賞味ください。
<参考資料>
次回は9月の予定です。