H23-25 重点研究 報告書「北海道内における自然由来有害物質の分布状況」
GRIPの考え方
基本理念:システムが支援する領域
自然由来有害物質に関する情報の提供には,試験値の蓄積(Accumulation),解析によるリスク情報の構築(Analysis),そして公開(Public)の作業が必要である.加えて今後もリスク情報を更新していくためには,上記の作業工程に加えて,各工事現場等から得られた溶出量/含有量試験値をフィードバックする仕組みも必要である.すなわち,蓄積(Accumulation)・解析(Analysis)・公開(Public)・利用(Use)・フィードバック(Feedback)の5工程からなる「AAPUF」サイクルを効率的に運用していく仕組みが必要である(図14).
もし,上記システムへの試験値データの追加が確度の高いリスク情報への更新・公開につながることが認知されれば,工事現場も「現場で実施した試験値を提供する方が有益」と判断される可能性が高い.このような考え方が浸透すれば,各現場の報告書に掲載された分析値の収集も一層進むことになる.以上のことから,構築されるべき情報システムの条件は,利用者の多様なニーズに対応できるように広範囲の地質体を網羅し,リスク情報の更新と提供が継続され,なおかつ,システムの管理・運営が容易であることと考える.
GRIPシステム概要
本研究で構築した北海道自然由来有害物質に関する地質情報システム「GRIP」は,上述した5つの作業工程からなるサイクル「AAPUF」のうち「AAP」の作業行程を半自動化・効率化したものである.
「GRIP」公開用サーバー機は地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 環境・地質研究本部 地質研究所に設定したDMZ(Demilitarized zone)に設置した.
「GRIP」は,大きく「データ蓄積・解析」と「リスク情報提供」の2つの機能から構成される.「データ蓄積・解析」は,リレーショナルデータベースソフト FileMaker Pro 12・FileMaker Server Advanced 12(FileMaker, Inc.)を用いて構築した(図15).これは,リスクパターン情報[Risk],露頭情報[Locality],試料情報[Sample],溶出量/含有量試験値[Analysis],地質体情報[Bed],産出化石情報[Fossil],鉱床情報[Shironagasu],鉱物情報[PeaksXRD],地形情報[Morph],地質体の位置情報[Maps],そして文献情報「Pagero」などの複数のデータベース群から構成される.
「リスク情報提供」は[HTML5+jQuery+XML]で構成されている.情報を表示する入れ物(ひな形)であるHTML5に,「データ蓄積・解析」担当からエクスポートした「リスク情報データ(XML)」を,「jQuery」を用いてパースしたものを公開情報とする.これにより,試験値の追加やリスク情報の更新が実施された場合にもXMLファイルを更新するだけで,HTMLとjQueryに変更を加えることなく,速やかに公開情報も更新される.