道総研をフカボリ!森林研究本部

掲載データは令和3年4月1日時点のデータでの所属・研究内容であり、
現時点では変更となっている場合があります。

こんなシゴト、こんな研究。

北海道のきのこ生産者に貢献しながら、
おいしくて高品質な品種を
道民の皆さんに届ける仕事です。

林産試験場の主な仕事は、北海道の木材産業の技術開発や改良、森林資源の利用技術の開発。私が籍を置く微生物グループ(通称きのこチーム)は、林産物であるきのこの利用拡大を目標として研究を行っています。

私が取り組んでいるのは、エゾユキノシタ(野生型エノキタケ)の新品種開発。すでに店頭でも販売され、シャキシャキ食感と濃い味わいが人気ですが、認知度はまだまだ。もっとおいしく、栽培しやすくすることで、生産者の利益を増やしながら消費拡大も目指せると考えています。きのこは同じ種類同士でしか交配ができないため、エゾユキノシタ同士のかけ合わせを繰り返し、培地の配合を変えながら、味・量・形状・成分・育てやすさなどさまざまな基準から優れた品種を育成します。しかし、実際に店頭に並ぶまでには、何千、何万回という天文学的な数字の交配が必要。長い道のりですが、もし成功すれば多くの生産者に喜ばれ、道民の皆さんの食卓に並ぶ機会もグッと増えるはずです。

  • 齋藤さんこんなシゴトこんな研究1
  • 齋藤さんこんなシゴトこんな研究2
  • 齋藤さんこんなシゴトこんな研究3

ココでフカボリ!おいしさの他に大切なことって?

交配した品種の食味が良くても、生育が悪い、管理が難しい、保存が利かないなどといったデメリットがあると、生産意欲の低下を招くばかりか、価格が高くなり、結果的に消費者のもとに届けられなくなります。また、あまり知られていませんが、きのこは生育の過程で大量の胞子を放出するので、生産現場での機械トラブルや健康被害の原因にもなり得るんです。そうした悪影響から生産者を守る安全な品種を開発することも私たちの使命だと思っています。

私の「例えばの」一日

味見も、大事な仕事なんです。

  • 齋藤さん例えばの一日1
  • 齋藤さん例えばの一日2
  • 齋藤さん例えばの一日3

来る日も来る日も交配を繰り返し、
成長したきのこを、食味試験。
おいしい品種が、次の実験材料です。

8:00
出勤
8:20
始業
8:45
ミーティング
9:00
培地づくり・ボトル詰め
10:30
実験データの入力など、デスクワーク
12:00
昼食
13:00
交配実験
15:00
食味試験
16:30
実験データの解析
17:30
退勤

ココでフカボリ!外に出ることはあるの?

本来は生産者から栽培方法や課題を直接聞き、ニーズを探ることも重要な仕事です。ただ、私は運転免許を取得したばかりで、まだまだ練習中(笑)。北海道は「きのこの町」愛別町や、ここ旭川市だけでなく、帯広市や釧路市、「王様しいたけ」で知られる七飯町など、優れたきのこの名産地がたくさんあるんです。今後運転技術が向上したら、多くの生産者と交流を重ねていきたいと思っています。

上司からエール!

優秀で一生懸命なきのこチームのホープ。
今後は生産者や海外との交流にも期待です。

齋藤さんは一言で言うと、とても優秀です。指示せずとも自分で考えて行動でき、課題を積極的に見つけ出しては、一生懸命に研究しています。採用前も、私たちのイベント会場に訪れて研究員たちにきのこについて熱心に質問をしている姿が印象的でした。
私たちきのこチームは、独自の栽培技術を持つ農家やメーカーとの交流も盛ん。現場で誇りを持って働く方々の意見を尊重しながらも、科学的な見地から研究成果を活用していただくことも重要です。今はまだ経験が少ないですが、彼女はコミュニケーション能力も高いので、その素養は十分にあると見込んでいます。また齋藤さんは海外への留学経験もあり英語も堪能。ヨーロッパをはじめとするきのこ先進国との共同研究や学会にもどんどん参加し、イノベーションを起こして欲しいですね。

なんでもQ&A

その質問、センパイが教えます。

大学時代に
取り組んでいた研究は?
元々実験が大好きな高校生だったので、北海道大学理学部へと進学。大学院では初期のがん細胞と周囲の正常細胞の振る舞いについて、培養細胞を使った基礎研究で博士課程を修了しました。がん細胞ときのこは、増殖の仕組みや、栄養の使い方といった共通点も少なくありません。また細胞の培養技術や分析方法、観察方法にも通じ合う部分がありますので、大学で学んだ知識や技術が生かせていると感じています。
どうして
道総研を選んだの?
北海道で生まれ育ち、道民の方々の温かさが大好きなんです。最初はがん細胞の研究経験を生かして、民間の製薬会社や研究所でのシゴトを探しましたが、所在地の多くは本州、大都市圏の郊外。全国各地に面接に行くたびに「やっぱり北海道がいいなあ」と思っていました。そんな時に見つけたのが、道総研のきのこチームの募集。自分で調べてみたり、研究員に話を聞いたりしているうちに、がん細胞との共通項を見出すことができ、きのこの世界にチャレンジしようと採用試験に踏み出したんです。
道総研での
働き方はどう?
元々、寝食を忘れて研究に打ち込むタイプのため、学生時代には気づけば夜中なんてことも(笑)。道総研では、出退勤は定時通り、休日の管理もキチッとしているので、つい研究に没頭してしまう私にとって安心できる職場です。また、フレックスタイム制を導入しているのもいいところですね。私はJRで通勤しているので、運行ダイヤに合わせて出退勤の時間を調整しています。週に1度はいつも1時間早めに退勤し、空いている時間帯のスーパーに行ってゆっくり買い物を楽しんでいます。
道総研に
向いている人って?
きのこチームは毎日、研究支援職員とともに働き、生産者や他の研究所とのコミュニケーションも必要不可欠。例えば、人が「おいしい」と感じる食感のデータを知りたい時は、食品加工研究センターに依頼しますし、優れた培地の原料となる木材のデータ提供は林業試験場にお願いしています。研究が好きなことはもちろん、人と話すのが好きな人が向いているのではないでしょうか。また、北海道の人々や食が好きということも、働く上で必ず原動力につながります。

道総研のココがいい!

「研究奨励制度」のおかげで、
企業のような研究と、
大学のような研究、イイトコ取りで
励むことができます。

道総研での研究の多くは、行政や大学、企業や団体からの依頼で行う業務。言うなれば民間と同様にお客様のいる仕事ですので、ニーズに合わせた実用的な研究が一番のミッションです。
一方、審査を通過することで大学の研究室のように自ら挑戦したいテーマに向き合えるのが研究奨励制度です。私が今取り組んでいるのは種菌の長期保存。きのこの種菌は安定保存が難しいため、もしもこの技術を確立させることができれば、色や形、味わいに優れたブランド品種を長く、安定して売り続けることが可能となります。こうした民間企業のような実用的な研究と、大学のようなアイデア片手に新領域を開拓する研究の両方をイイトコ取りして行えるのが道総研の魅力だと思います。

森林研究本部 齋藤沙弥佳の画像