農業研究本部へ

道南農業試験場

Q&A「お米」について



*更新2012/08/13*

お米の品種と名前のつけ方

No. 質問内容 回答要旨
1.  日本で作付けられているイネの品種を教えてください。  正確な品種の数は分かりませんが、約300品種のイネが作付けられています。
お米の種類はうるち米(ふつうのごはん)200種、酒米(お酒の原料となるお米)26種、もち米(おもちなどに使うお米)88種です。
平成15年のうるち米の作付面積1位はコシヒカリ、2位ヒノヒカリ、3位ひとめぼれ、4位あきたこまち、5位がきらら397です。
2.  北海道で作付けられているイネの品種を教えてください。  うるち米では平成11年ではきらら397が58.0%、ほしのゆめが31.8%、あきほ6.4%、ゆきまる2.4%です。
3.  「きらら397」の名前の意味をおしえてください。  「きらら」というのは、古い日本の言葉で雲母(うんも)のことですが、「きらめくようす」という意味もあります。きらきらとかがやく雪をイメージさせるとともに、白いごはんを連想させることから、「きらら」という名前がつけられました。
「397」というのは、品種になる前の「上育(じょういく)397号」番号から、とったものです。
約2万通の応募(おうぼ)の中から選ばれました。
4.  「ほしのゆめ」の名前の意味をおしえてください。  きらきらとかがやく星のイメージが、つやのあるおいしいごはんと、米作りにかける夢がかなうようにという願いをこめてつけられたものです。
この名前は、函館に住む、あるお姉さんが考えましたが、4万通以上の応募のなかから選ばれました。
5.  ゆきひかり」の名前の意味をおしえてください。  この品種を育成した人たちがつけました。
「ゆき」は耐冷性の強さ、「ひかり」は良質(品質のよいこと)をあらわしています。
6.  「ゆきまる」の名前の意味をおしえてください。  雪のように白い良質な米をイメージさせることから、つけられました。この名前は募集して決めました。
7.  「ほのか224」の名前の意味をおしえてください。  7千通あまりの応募から選ばれました。
「ほのか」は「穂の香り」の意味で、おいしく良質でほのかな香りがただよう、たきたてのごはんをあらわしています。
「224」は品種になる前の「渡育(といく)224号」からとったものです。
8.  お米の名前の由来を、知っている限り教えてください。 品種の名前は「○○ニシキ」「○○ヒカリ」「○○ミノリ」が多く、次いで「○○ワセ(早生)」「○○マサリ」「○○ホナミ(穂波)」「○○コガネ(黄金)」があります。また、地名から付けたものも数多くあります。私の知っている品種の名前の意味は次のとおりです。
「コシヒカリ」:
「熟色鮮美な北陸の品種」からきています。北陸地方は、旧名では越前(福井)、越中(富山)、越後(新潟)といわれ、この『越(こし)』に、きらきら光輝く米粒を表す『光(ひかり)』をかけたものです。コシヒカリ→こし(越)+ひかり(光)
「あきたこまち」:
昔、絶世の美人「おののこまち」がこの秋田県雄勝町小野の里に生まれたとの言い伝えがあることから「あきた(秋田)」に「小町(こまち)」をかけたものです。あきたこまち→あきた(秋田)+こまち(小町)
「ゴロピカリ」:
群馬県は雷が多く、“いなずま”は稲と妻で表記され、米の豊作を占う夏の風物であることから、平成7年に群馬県の小学生によりこの名前が付けられました。
「こがねばれ」:
“三晴”(日本晴、秋晴、晴々)級の時期で黄金色に呈してごく鮮麗であることにちなんで、この名前が付けられました。
「ヒノヒカリ」:
「ヒ」は「陽」をいい、西日本や九州を指します。「ヒカリ」は待望の良食味品種でその飯米は光輝くとのことでその名前が付けられました。
「ユーカラ」:
アイヌに残された口伝の叙事詩から付けられました。北海道の最高傑作のひとつです。
「レイメイ」:
放射線をかけた突然変異育種による日本初の品種で、育種の夜明けを象徴しました。
「ササシグレ」:
東北の代表的民謡であり祝歌である「さんさしぐれ」から発想されました。
「きらら397」:
「きらら」というのは、古い日本の言葉で雲母(うんも)のことですが、「きらめくようす」という意味もあります。きらきらとかがやく雪をイメージさせるとともに、白いごはんを連想させることから、「きらら」という名前がつけられました。「397」というのは、品種になる前の「上育(じょういく)397号」番号から、とったものです。約2万通の応募(おうぼ)の中から選ばれました。
「ほしのゆめ」:
きらきらとかがやく星のイメージが、つやのあるおいしいごはんと、米作りにかける夢がかなうようにという願いをこめてつけられたものです。この名前は、函館に住む、あるお姉さんが考えましたが、4万通以上の応募のなかから選ばれました。
「ゆきひかり」:
育成した人たちがつけました。「ゆき」は耐冷性の強さと「ひかり」は良質(品質のよいこと)をあらわしています。
「ゆきまる」:
雪のように白い良質な米をイメージさせることから、つけられました。この名前は募集して決めました。
「ほのか224」:
7千通あまりの応募から選ばれました。 「ほのか」は「穂の香り」の意味で、おいしく、良質で、ほのかな香りがただよう、たきたてのごはんをあらわしています。「224」は品種になる前の「渡育(といく)224号」からとったものです。
9.  北海道ではどんなお米を作っていますか?  質問が色々な意味にとれますが、多分品種のことと思います。
平成11年の北海道のお米は137,422ヘクタール作られ、うるち種(みんなが普通に食べているごはん)が125,737ヘクタール、もち種(もちや赤飯用でねばりがある)が11,685ヘクタールです。
うるち種の品種では「きらら397」が58%、「ほしのゆめ」が32%、「あきほ」が6%、「ゆきまる」が2%で、残りは他の品種でお酒の原料になる「酒米」もつくられています。
もち種では「はくちょうもち」が87%、「風の子もち」が13%です。聞いたことのない品種もありますね。

このページの上へ

北海道でのお米づくり

1.  北海道はお米が一番穫れると聞きましたが、栽培面積はどのくらいあるのですか。  平成10年産では、北海道の稲の作付面積は14万2千haで、全国面積180万1千haに占める割合は8%程になっています。
2.  北海道ではどのようにしてイネが作られ始めたのですか?  北海道は日本の北に位置するため亜寒帯に属しています。夏は涼しく、関東以南のように湿度もそれほど高くないため、とてもすごしやすいところです。しかし、冬は厳しく積雪量が多く、亜熱帯の植物である「イネ」の栽培にはとても向かない土地でした。
北海道の開拓は、明治2年(1869)北海道開拓使が設置されてからでした。当初明治政府は北海道の地勢、亜寒帯と言う気候から、西洋式畑作の大規模農業を目指しました。
また、北方の防備と開拓のため「屯田兵」(とんでんへい)を植民させましたが、明治24年(1891年)からは一般平民の入植も盛んになりました。
西洋式の大規模農業はうまくいきませんでした。そこで農民たちはかつて故郷で作っていたイネ作りを目指したのです。また、明治25年(1892)に北海道庁は、米作奨励に転じ、亀田など3カ所に稲作試験場を作り、明治35年(1902)には北海道土功(どこう)組合法を制定し本格的な水田開発に乗り出しました。
しかし、北海道、特に石狩川流域には泥炭層(でいたんそう)が堆積し、これらの事業のみではとても水田を作ることは困難でした。
※泥炭:寒地のため植物の分解・腐食が進まず、土が炭化植物の状態のもの。戦前の農民は燃料に使っていた。したがって農耕には適さない。
そこで、農民は遠くはなれた山間地域から良い土を運んで客土(きゃくど)しました。また、当時は4年半に1回の割合で冷害があり泥炭地の改良と同時に、イネの品種改良も行われていました。江戸時代にも函館の近くの大野町(現北斗市)で細々とイネ作は行われていましたが、明治6年(1873)札幌の農民である中山久蔵が、夜も寝ずに水田にお湯を注ぐなどの努力の末についに耐寒品種、「赤毛」の栽培に成功しました。これがきっかけとなりやがて優れた耐寒品種を生みだされました。
春が遅く夏の短い北海道ではイネの生育にとって大事な花粉のできる時期や開花の時期、実が生長する時期に冷たい気温にさらされると、もみはできてもお米が入っていない状態になってしまいます。これが冷害です。いくら寒さに強い品種を作っても限界があります。開花や結実の時期を暖かい気候のときに合うに早く田植えをしました。
また、当時は「苗代(なわしろ)」を作る時間を省いた直播(じかまき)が行われました。一度に多くのもみまきができる「たこ足」というもみの直播機を開発しました。昭和10年(1935年)ころには水稲栽培面積の8割が直播でした。しかし、直播は発芽しないもみがでるために、たくさんとれません。そこで、農家の人たちは確実に早く、そして全てのもみが発芽し株が育つようにと「温床苗代(おんしょうなわしろ)」を取り入れました。これは苗代を油紙で覆い、冷たい外気にあてないようにしたものです。当時はビニールなどなかったからです。こうして河川の改修や泥炭地への客土、あるいは品種の改良や温床苗代など、多くの工夫と努力の末に広大な湿地帯や原野が豊かな水田へと変わっていったのです。
こうして今日、北海道は全国一の米の収穫量を誇る地域となったのです。
3.  北海道の直播(じかまき)栽培の歴史を教えて下さい。  北海道の水稲直播(じかまき)栽培の歴史は古く、すでに明治中期にはじまっており、大正初期から昭和20年ころにかけての長い間、それまでの水苗代移植栽培に替わって稲作の主流となりました。特に、タコ足式直播機と無芒(むぼう:もみの先に出るトゲがない)品種「坊主(ぼうず)」の普及により昭和7年には水田面積の8割、約16万ヘクタールに達しました。
この背景には、労働事情のほかに5月中旬播種(はしゅ)の直播は当時の慣行であった6月移植のイネに比べ、苗立ちが十分に確保できない、雑草が多く発生し、倒伏(とうふく)しやすいことなど欠点がありましたが、生育、収量がまさり、冷害に対しても安定していたことが基本的な要因でした。
その後、直播が減少したのは、昭和10年前後の度重なる冷害を契機に、直播より冷害に強い畑苗の5月下旬移植栽培が開発され、収量が向上し安定化したためです。さらに昭和35年ころから畑苗代手植えの省力化(しょうりょくか)が重視されるようになり、当時水田面積の4%しかなかった直播栽培研究はヘリコプタまきを中心に再び開始されましたが、不安定要因が大きく、イネ作の省力化は機械移植に重点が置かれ、現在に至っています。
4.  なぜ直播(じかまき)栽培が必要なのですか。  (1)生産コストを下げて安いお米を作るためです。今後輸入が増える安い外国産米との競争に負けないために苗作りと田植えをしなければ、苗作りと田植えにかかる費用と労力が省けるのでその分、生産コストが下がります。
(2)農業にたずさわる方々の高齢化です。農業者の高齢化により、労力のより少ない栽培法が求められています。
5.  水田の面積が減っている理由を教えてください。  水田をつぶし、工業用地や住宅用地などの農業以外の用途に使うようになったり、農業者が農業を止めることにより、水田が荒れて稲を育てることができなくなってしまった土地が増えたためです。
6.  農業をする人が減っている理由を教えてください。  1960年代、日本は工業製品の生産を中心に経済的に発展しました。この時期、農家の人達も、若い人を中心に多くの人が工場で働くようになるなど、農業以外の仕事をするようになったため、農業をする人の数が減りました。これは、機械化等によって農作業(特に稲作)にかかる時間が減り、小さな農家では人手を多く必要としなくなったためです。
また、その後、農業を続けていた人が歳を取ったために農業を続けられなくなり、農業を止めてしまう人が増えてきたことも、農業をする人が減っている理由です。
7.  品種改良の方法を教えてください。  品種改良とは、いろいろな性質のものの中から目的に合ったものを選び出し新しい品種を作ることです。なぜ、新しい品種を作るのでしょうか。それは、いままでの品種よりもおいしくて、寒さや病気に強く、栽培しやすい品種が多くの方々から求められているためです。
北海道のイネの品種改良にとって大事なことは、北海道でもちゃんと稔るような、早生(わせ)で、冷害に強く、おいしい品種を作ることです。
とくに、北海道のお米は本州のお米にくらべておいしくないといわれてきましたので、食味の改良がとても大事です。また、安いお米を作るために、もみを直接水田にまく直播(じかまき)用の品種改良も大事な目標です。
品種改良の第1歩は、まず、いろいろな性質のものを創り出すことです。お米の品種改良のやり方は、次のように、いくつかの方法があります。
1.分離育種法(ぶんりいくしゅほう)
 自然にできた「変わりダネ」から良いものを選んで新しい品種にする方法です。明治時代までは熱心な農家が、自分の田んぼで見つけた変わったイネを増やして植えていました。このようにして少しずつ改良されたイネが生まれていきました。
今日の優良銘柄米の「ササニシキ」「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「あきたこまち」等の先祖になっている「亀の尾」は「変わりダネ」からえらばれた品種で、自然突然変異の中から良いものが選ばれたのではないかと思われます。
2.交雑育種法(こうざついくしゅほう)
 「亀の尾」のような自然にできる「変わりダネ」はそんなに多くないし、目的に合ったものばかりではありません。選びたい性質をもっとたくさん、人の手で作り出すことができれば、良い品種がたくさん早く生まれる可能性が高くなります。
人の手で変異を作り出す方法のうち一番使われている方法が「かけあわせ」であり、つまり交雑(こうざつ)、あるいは交配(こうはい)ともいいます。
たとえば、寒さに弱いけれどもおいしい品種と、寒さには強いけれどもおいしくない品種があるとします。どちらの品種も実際に作るには、よくありません。おいしくて寒さに強い品種があればいいわけですが、それには、この2つの品種をかけあわせて、その子どもたちの中から、おいしくて寒さにも強い、良いものを選んでいきます。何回も確かめながら選び出します。
北海道の「きらら397」はその代表です。「きらら397」は、「しまひかり」と「キタアケ」という、ふたつの品種をかけあわせ、その子どもたちの中から生まれました。
「しまひかり」は、おいしいが寒さに弱いという特徴がありました。この品種はせっかく、おいしいのに寒さに弱いために、北海道の南でしか作れませんでした。
それに対して、「キタアケ」は、あまりおいしくありませんが、寒さには強い品種でした。そこで、ふたつの品種の良いところをくみあわせて、作り出したのが、寒さに強く、おいしい「きらら397」というわけです。
「きらら397」の場合は、かけあわせてから、品種ができるまで8年かかりました。8年というと、ずいぶん長いと思うでしょうが、10年以上かかっていた昔にくらべると3~4年も短くなりました。
このように品種ができるまでの時間を短くするために、以前は鹿児島県や沖縄県にお願いしてイネを育ててもらい1年間に3回もイネを作っていましたが、今では北海道の道南農業試験場に平成12年に建てられた「大型水田温室」で1年間に3回、イネを作り世代を進めています。  (水田温室のことはこちらへ)
実際に品種を作るには、まず、性質が違う品種同士をかけあわせ、その子ども、孫、ひ孫たちを作り出して、その中から、性質のすぐれたものを選び出します。これを選抜(せんばつ)といいます。
そして、選抜されたものを、さらにいろんなテストにかけます。このテストには、寒さに強いか弱いかを調べる「耐冷性(たいれいせい)検定試験」、いもち病という病気に対する抵抗性を調べる「いもち病抵抗性(ていこうせい)検定試験」、お米がどれぐらいとれるかを調べる「生産力(せいさんりょく)検定試験」、おいしいかどうかを調べる「食味(しょくみ)テスト」、そして、北海道の品種として、ふさわしいかどうかを決定する「奨励品種(しょうれいひんしゅ)決定試験」など、さまざまなテストに合格して、はじめて品種になるのです。
3.放射線育種法(ほうしゃせんいくしゅほう)
イネに放射線をあてて「変わりダネ」を出す方法です。
4.葯培養(やくばいよう)
 まだ「いなほ」が出る前のイネの葯(=やく:おしべの花粉の入った袋のこと)を、試験管の中の栄養分の入った寒天で育てるバイオテクノロジーという技術の1つです。
この方法は簡単にいうと、植物では、どんな細胞からでも、またもとの植物が再生するというふしぎな性質があるのですが、花粉も細胞の一種なので、うまく試験管の中で育てると、なんとイネの苗ができるのです。出てきた性質が安定しているので、交雑育種の中で固定するまでの期間を短くできます。交雑育種のものより2年ぐらい早く品種ができます。
北海道では日本初の葯培養品種として「上育394号」を昭和63年(1987年)に作り、さらに「彩(あや)」を平成3年(1991年)、「空育163号」を平成13年(2001年)に作りました。
5.プロトプラスト培養
 細胞の一番外側の細胞壁(さいぼうへき)をとって、はだかにした細胞を「プロトプラスト」といいます。この、はだかにした細胞を育てて「変わりダネ」を創り出す方法です。
8.  おいしいお米ってどんな米なの?  お米の味を決める性質については粘り気、弾力性、熱を加えた際に水を吸う量 、膨らみ方、糊になる温度などの性質によって違いますが、とくにタンパク質(窒素)を多く含んでいないお米がよいとされています。
今までの研究結果 からみると、たい肥で十分な土づくりをした上で、元肥の窒素をやや少なめにしてリン酸とカリは基準量を確保、穂が出る時期のいわゆる"実肥"は一般に避けることが大切になります。
9.  北海道のお米の味はどうだったのですか。  昭和50年までは、北海道の米は、残念ながら、「ねこまたぎ米(ネコに削り鰹節(かつおぶし)をかけて与えても、匂いをかいただけで、食べずにまたいて言ってしまう米)」とか「鳥またぎ米(鳥も食べずにまたいて行ってしまう米)」とか言われ、まずいい米の代名詞となっていました。北海道米はまさに「ヤッカイドウ米」とまで言われていたのです。この汚名を返上するため、農業試験場は良食味米育種グループ を結成し、「優良米の早期開発」の課題に取り組んだのです。
育種目標を良食味に絞り、不眠不休の努力をしました。まず、道南農試で「コシヒカリ」の血を受け継いだ良食味米「しまひかり」を昭和56年に世に出しました。この品種は耐冷性がやや弱く、折悪く続いた低温年のため、被害を受け、残念ながら広く栽培されるまでには至りませんでした。しかし、味の良さは誰もが認めました。
「しまひかり」以降、「しまひかり」を親として食味を第1目標にした「きらら397」が育成され、さらに「ほしのゆめ」も誕生しました。今もその方向は変わらず、「ササニシキ」「コシヒカリ」に匹敵する食味をもった品種を育成しています。
10.  どうして北海道のお米の味がおいしくなったのですか。  良食味米品種開発の秘密兵器は、食味検定機器の導入と食味評価基準の設定です。まず、お米の美味しさの秘密を探りました。
お米は、アミロース(ブドウ糖がネックレスのように長く鎖状に連なったデンプンの1種)とタンパク質を多く含むものほどまずく、米を粉にし、糊にした時の粘りが強いものほど美味しい、ことを突き止めたのです。この3要因でほぼ美味しさの7割が決められるのです。
そして、これらの要因を機械的に測定する方法を確立しました。農業試験場では、良食味米育成のため、1年間に約2万点の交配種(F1品種)を作ります。この全てを化学分析に掛けるのです。今、日本で一番美味しいお米は新潟県の南魚沼郡のコシヒカリだとされています。このコシヒカリのアミロース含量は16.7%です。そこでアミロース含量の目標値を20.0%とし、この飛び越すべきハードルを飛び越せない物は捨てたのです。2万点の品種の半数が捨てられました。残った1万点の品種のタンパク質を測り、ハードルを飛び越せない物を捨てました。残ったのは500点足らずでした。これを粉にし、糊にして粘りを測ったのです。
1番粘りが強かったのが「きらら397」でした。こうして「きらら」が誕生し、「きらら」から「ほしのゆめ」ができたのです。
11.  北海道の食味向上の取り組みを教えて下さい。  品種の改良とともに土壌改良、栽培改善も北海道の稲作を支えました。泥炭地(でいたんち)への客土(きゃくど)事業、水田の大型化に伴う用排水の整備などは、現在も土地改良事業として続いています。このような基盤整備が果たした役割も無視できません。また、泥炭地(でいたんち)のお米はタンパク質含量が高く、まずい米になりがちですが、客土をすることによって食味改善にも役立ちました。
最近では、土壌診断によって、あとどれぐらい山土を再客土すれば、食味を1ランク上げ得るかを明らかにし、補正客土として、事業化を図ろうとしています。かつての「ねこまたぎ米」も今では驚くほど美味しくなりました。
栽培技術も本州の水苗代から、折衷畑苗代(せっちゅうはたなわしろ)、畑苗代、更に機械化対応のマット苗、ポット苗へと進歩してきました。寒い4月、5月はビニールハウスで育苗し、田植機で移植する技術が確立しています。また、密植(みっしょく)栽培は低タンパク米生産技術も注目を集めています。
施肥(せひ)技術も土壌診断技術を応用し、味を落とさず、安定的に収量を確保する施肥量を水田1枚毎に判定できるようになりつつあります。特に、最近の良食味品種は多肥にしても収量は上がらず、食味が落ちるので注意しています。
12.  寒い北海道だと、冷害や病気の心配はありませんか?  イネは寒さに弱い作物です。寒い北海道の稲作では、夏季の低温による冷害が問題となります。一般的には、花の咲く約2週間前の茎の中に穂がある時期に低温にあうと不稔(ふねん)が多くなります。
低温にもっとも弱い時期の低温による冷害でイネが全滅するのをふせぐために生育のちがう2種類以上の品種を作っています。また、「穂ばらみ期」では田の水を深くしてイネの体を寒さから守るために「深水かんがい」をおこないます。
イネの一番恐い病気は「いもち病」です。夏の暑いときに雨の日が続くと、出やすい病気で、あっという間に広がってイネを枯らします。 夏の暑いときに雨の日が続くと出ますので、北海道では寒い夏はあまりでないのです。
北海道の寒い夏に出る病気は「葉鞘褐変病:ようしょうかっぺんびょう」です。この病気はいねの茎が茶色になり、穂が出なかったり、実のならない不稔(ふねん)が多くなり、お米がとれなくなったりきれいでなくなったりします。これらの病気には品種改良で強い品種を作り出すこともしていますし、農薬でふせぐこともできます。
13.  暑い地方で生まれたお米なのに、なぜ日本の寒い地方で盛んなのですか?  確かに北海道や東北地方などの日本の北でお米がたくさん作られていますね。生産量のトップは北海道です。実はこの背景には水田の面積が北海道、東北地方が圧倒的に多いためです。これらの地域では、寒さに耐える品種改良の他に水田の区画を整理し、大型機械が入りやすく効率よく作業ができるからです。
14.  北海道で米を作るときに気候の事でこまることは、なんですか?  イネは寒さに弱い作物ですから、北海道の場合は穂ができる穂ばらみ期から開花期の低温が問題となります。
一般的には、開花前の約2週間の穂ができる穂ばらみ期では最低気温が17℃以下になると花粉が奇形となりお米が実らなくなります。開花期の最高気温が23℃以下になるようですと、栽培は困難になります。
このため、北海道では2品種以上のイネを育てて冷害でイネが全滅するのをふせぐようにしています。
また、1日のうちで最高気温と最低気温の差が大きい方がおいしいお米が取れることが知られています。

このページの上へ

世界と日本のお米

1.  世界にはどのようなイネがあるのですか?  世界中には何万種類のイネの品種がありますが、これらのほとんどはオリザ・サチバというひとつの「種」に属します。これらの品種を似たものどうしで分類すると、日本型、インド型、ジャワ型などのグループにわかれます。
日本型は日本、中国、韓国、アメリカ、オーストラリアで作られているイネのことです。この日本型は、寒さに強く、お米の粒が小さくて、ごはんのねばりが強く、おいしいことです。
インド型は、インドやタイ、中国の南のほうでつくられているイネで世界中の9割のお米はインド型で、寒さには弱いのですが、暑さに強く、お米は細長くて、ごはんはパサパサしてねばりが少ないものです。日本にはおいしくないという人が多いようですが、タイやインドなどでは料理の仕方でおいしく食べています。
ジャワ型というのは、ちょうどインド型と日本型の中間のようなイネで、主にインドネシアなどで栽培されています。
オリザ・サチバのほか、アフリカで作られているオリザ・グラベリマという別の「種」にぞくする栽培イネもありますが、オリザ・サチバの親戚(しんせき)と考えてよいでしょう。
2.  お米の原産地はどこですか。<  イネの栽培発祥地はインド東部・中国の雲南(うんなん)・ビルマ・タイの北部地域です。タイのコラト遺跡、ノンナクタ遺跡から紀元前4000年の栽培が知られ、最近ではビルマ国境の紀元前1万年の古墳からも栽培された証拠が見つかっています。
3.  お米が日本に入ってきたルートを教えてください。  お米(稲)の伝来ルートは、原産地から中国大陸を通って(1)朝鮮半島経由、(2)台湾・沖縄経由、(3)中国大陸から直接日本へ、という3つの学説があります。このうち、中国大陸から海を渡り直接日本へ伝来したという学説が一番有力です。中国の江南地方から紀元前1世紀の弥生時代に北九州に伝えられました。最近は縄文後期に伝来したとの説もあります。
1世紀には近畿へ、3世紀に関東、12世紀には本州北端に及び、北海道に本格的に入ったのは明治になってからです。
4.  インドの稲作、作り方の順序を教えてください。  (稲作大百科Ⅱ:農山漁村文化協会:より)
インドの緯度は北緯8~37度におよび、カシミール高原などの高地にもイネがつくられている。また、インドでは雨期の早晩、雨量の多少、洪水などの気象条件にも大きな幅があって、イネの栽培方法や栽培時期も多様のようです。そのため品種の数もきわめて多く、生育期間も最短80日のものから最長8か月のものまであります。
インドのイネの栽培は、インド全域にわたっており、とくに東部のベンガル、マドラス、ビハール、アッサム、オリッサなどの地方で盛んです。これらの地方では年中イネがつくられ、栽培時期によってアウス(aus;秋イネ)、アマン(aman;冬イネ)、ボロー(boro;春イネ)の3つのグループに分けられます。
このうちアマンは最も重要で,6~7月に水田に散播(じかまき)あるいは移植され、11~12月に収穫されます。アウスは5~6月に畑地に散播され、8~10月に収穫される。ボローは最も重要性が少なく、12~1月に洪水あとの沼地などに散播され3~4月に収穫されます。
5.  昔の人は、ご飯をどのようにして食べていたのですか。  弥生時代には、うるち米を煮て食べていたといわれています。奈良時代の初めには、土鍋で煮た水分の少ない固めのおかゆ(粥)「固粥(かたかゆ)」が食べられるようになりました。これが、今、私達が食べているごはんのルーツです。
この「固粥」は、奈良時代の終わりにはさらに水分が少なくなり「姫飯(ひめめし)」と呼ばれるようになりました。さらに釜に鍔(つば)を巻いた今も広く使われている羽釜(はがま)を考案し、調理方法が「煮る」から「炊く」へと発展し、しだいに私達が今食べている白いご飯に近づいてきました。
6.  どこの国の人がお米を多く食べているのですか。  年間1人当たりの供給量は、タイ(209kg)、インドネシア(198kg)、韓国(188kg)、中国(148kg)、フィリピン(143kg)、マレーシア(141kg)の国で多く食べられています。ちなみに、日本は67kgです。
※数値は1984~1986年の平均(日本は1996年度)で、もみ重(日本は精米重)です。(「国際農林水産統計1998」より)
7.  なぜお米が日本人の主食になったのですか?  日本の気候にはイネが良く育つ条件がそろっていたことです。イネはもともと気温が高くて雨の多い気候、これをモンスーン気候といいますが、この土地が大好きです。日本はモンスーン気候で初夏には梅雨があって雨が多く、夏には気温が熱帯と変わらないくらいに高くなります。こんな日本の気候や風土がイネの栽培にはとても合っているのです。北海道の西側半分は梅雨はありませんが、モンスーン気候です。
また、お米は毎年安定した収穫が得られ、長い間保存する事が出来るので、収穫が少ない時も保存したものを食べられます。そしてお米は日本人の好みに良く合った食べ物であることも大きな理由のひとつにあげられるでしょう。
8.  お米は国内でどのくらい作られ、貿易ではどのくらい入ったり、出たりしていますか。  お米の消費量は約1千万トンで、それに同じくらいの数量が国内で生産されています。米の貿易は、平成10年度で74万9千トンが輸入され、87万6千トンが輸出されています。
9.  お米は世界各国でどのようにして食べているのですか。  お米の食べ方は、各国でそれぞれ違います。
日本や韓国では主食として炊いたご飯で食べています。欧米では、炊いたご飯を肉や野菜のわきに野菜と一緒に皿に盛って野菜類の一種として食べています。中国では、炊いたご飯を他のものを混ぜて炒めて食べています。インドや中近東では、カレーのようにスパイスを入れた肉、魚、野菜の汁を炊いたご飯にかけて食べています。
10.  お米にはどんな種類があるのですか。  お米は粒や大きさによって3つに分けられます。
ジャポニカ(日本型イネ)
粒が短く円形で、炊くと粘りがあります。日本で作られているのは、このお米です。
インディカ(インド型イネ)
粒が細長く、炊くと粘りがなくパサパサしています。
ジャバニカ(ジャワ型イネ)
幅が広く、大形なのが特徴です。
また、お米の粒の性質の違いからは2つに分けられます。
ウルチ米
私たちが普段食べているごはんはこれです。炊く前は半透明の白色です。
モチ米
炊くと強い粘りがあり、おもちや赤飯に使われます。炊く前は白色です。
このほか変わったお米としては、酒米(お酒をつくるお米)、赤米(色が赤い)、香米(炊くと香りが出る)などがあります。
11.  お米を使った加工品には何がありますか。  お米はビーフン、玄米パン、玄米茶、味噌、酢、みりん、米粉(白玉粉)、せんべいなどに変身します。
代表的なものとしては
  • お米の形のまま
    • ごはんをそのままパックしたレトルト米飯
    • カップライス、アルファ化米といわれるお湯をかけるとごはんになるもの
  • 冷凍したもの
    • 冷凍米飯
  • かゆ状のもの
    • 即席のかゆ
    • 雑炊や赤ちゃん用の離乳食
  • 粉にしたもの
    • 白玉粉
    • 道明寺粉・上新粉(もち米から)
    • 玄米粉(玄米から)
  • めんにしたもの
    • 米粉めん
    • ビーフン
  • 醸造したもの
    • 清酒・ライスワイン
    • 米酢
    • 米みそ
  • 菓子にしたもの
    • 団子
    • せんべい・あられ
    • 玄米パン
    • ライスアイスクリーム
12.  お米が一番とれる国はどこですか。  1997年の世界のお米の収穫量は5億7千3百万トンで、うち収穫量が一番多い国は中国です。その数量は1億9千8百万トンで、世界の1/3を占めています。
13.  お米を作っている農家はどのくらいあるのですか。  平成9年の全国の水稲作付農家は218万3千戸で、北海道では3万1千戸です。
また、農家1戸の水稲作付面積は全国で0.8ヘクタールですが、北海道では4.9ヘクタールです。
14.  お米はどこの県で多く穫れるのですか。 平成10年のお米の全生産量は893万9千トンで、一番多く穫れるのは北海道(76万トン)、次は新潟県(61万1千トン)、秋田県(54万0千トン)の順になっています。

このページの上へ

お米のつくりかたと稲の病気・害虫

1.  お米を作るのにどれくらい費用がかかるのか教えてください。  平成10年産米の生産費調査による10a当たり費用合計は、全国で138,050円で、北海道では103,574円となっています。
全国の主な内訳は種苗費3,570円、肥料費8,297円、薬剤費7,680円、農機具費28,754円、労働費56,986円となっています。
2.  機械化で、お米作りの作業時間はどのくらい減ってきたのですか。  田を耕したりする耕運機やトラクター、田植機、航空防除、収穫機(バインダー、脱穀までするコンバイン)などの普及に伴い、作業時間が少なくなってきました。
北海道の10アール当たり稲作労働時間は田植えや稲刈りを人手で行っていた昭和40年は118時間でしたが、ほとんどが機械化された平成10年は22.3時間と1/5程度になりました。
3.  イネの栽培に適した気候条件を教えてください。  イネは寒さに弱い作物ですから、北海道の場合は穂ができる穂ばらみ期から開花期の低温が問題となります。
一般的には、開花前の約2週間の穂ができる穂ばらみ期では最低気温が17℃以下になると花粉が奇形となりお米が実らなくなります。開花期の最高気温が23℃以下になるようですと、栽培は困難になります。
このため、北海道では2品種以上のイネを育てて冷害でイネが全滅するのをふせぐようにしています。
また、1日のうちで最高気温と最低気温の差が大きい方がおいしいお米が取れることが知られています。
4.  イネは、1日にどれくらいの量の水を吸うのか教えてください。  夏の暑い日、10アールの田んぼの稲は約6.5トンの水を吸います。これを1株の稲に直して計算すると約300gになります。
一生の間には10アール当たり400トン、1株当たり約20kgの水を吸うことになります。お茶わん1杯のご飯をつくるのに3千倍の水が必要になります。
5.  「いもち病」ってどんな病気ですか。  イネの一番恐い病気です。
「カビ」が原因で起こります。このカビの胞子(ほうし=タンポポのワタ毛のようなもので、たくさん飛んでいき、自分の子どもを増やします)が、イネの葉につくと、葉に黄色や茶色の「点々」ができてきます。この「点々」がたくさんできてくると、葉が枯れてきます。これが「葉いもち」という病気です。ひどいときには、ほとんどの葉が枯れてしまい、イネが死んでしまいます。
「葉いもち」にかかってしまうと、「いなほ」が「くき」から顔を出す時に、葉にいる病気を起こす「カビ」が「いなほ」のほうに移っていき、「いなほ」や「もみ」が病気になって枯れてしまい、お米が実りません。これを「穂(ほ)いもち」といい、これでは、収穫量が減ったり、お米がきれいでなくなったりします。
夏に雨の日が続くと、出やすい病気で、あっという間に広がってイネを枯らします。
品種改良で、「いもち病」に強い品種を創り出すこともしています。「いもち病」に強ければ、農薬をふる量や回数を減らすことができます。
6.  イネの病気で「いもち病」以外にどのような病気がありますか。  ごま葉枯れ病(肥料の枯れた田に発生しやすく、葉にゴマ粒のような病斑(びょうはん)がでて枯れていく)、紋枯れ(もんがれ)病(葉の基部が雲形の紋状に腐り、実りの前に株が枯れる)、萎縮(いしゅく)病(ウィルスによる病気でウンカ類が媒介し、穂が出なくなってしまう)があります。
7.  イネにつく害虫にはどのようなものがありますか。  ウンカ(葉や穂の汁を吸う)、ニカメイチュウ(葉や茎を食べて、イネを黄色くさせる)、イネアオムシ(葉を食べる)、イナゴ(葉を食べる)、カメムシ(葉や茎の汁を吸う)などがあります。
8.  「アイガモ農法」によるお米作りには、どんないいことがあるのですか。  アイガモ農法とは水田にアイガモを放し、雑草や害虫を食べてもらい、無農薬で安全な米を作る技術で主に次のようなことが注目されています。
田んぼにあひるを入れる農法は、約1000年前に中国でおこなわれていました。日本では、戦国時代、夜の襲撃に注意するためにおこなわれていました。
それから、前は、アイガモを朝、田んぼに連れて行き、夕方連れて帰っていましたが、1991年九州で、電気の「さく」を使い、ヒナの時から田んぼに24時間入れっぱなしにする方法が考案され、全国に広まりました。
アイガモというのは、野生のカモとアヒルをかけあわせたものです。
アイガモは、もともとイネのような、スジばった長くてかたい葉っぱは食べないで、田んぼにはえる柔らかくてスジのない草を喜んで食べる習性があります。
アイガモ農法は(1)除草、害虫防除効果。(2)糞尿(ふんにょう)が肥料になる。カモがイネをつつきその刺激により株が強くなる。(4)カモが動き回ることで根深くまで酸素が送り込まれる。(5)水が濁り水草の光合成がおさえられ、雑草が生えにくくなる。(6)水田が人が楽しむ憩いの場となる。などのメリットがあります。
メリットばかりに見える方法ですが、当然何十羽ものアイガモを飼育するわけですから管理や手間は簡単ではありません。北海道ではヒナが暖かい本州から輸送される頃はまだ寒く、コタツや床暖(ゆかだん)を設置したビニールハウスで育てます。水田に放す前には笛を吹くとカモが集まるようにする訓練?等もします。外敵も多いですから電気柵(さく)の設置も欠かせません。
でも、田んぼに食べる草がない、田んぼに入れるアイガモの数が多すぎる(10アールあたり15~20羽くらいが適当)、アイガモが大きくなりすぎ食欲がおうせい、などの場合はイネを食べることがあるようです。イネの生長とアイガモの成長と、うまくタイミングをとる必要があります。アイガモを田んぼから引き上げる時期はイネの「いなほ」が出て花がさくころには引き上げるのがふつうです。アイガモは生まれて60日以上たつと、親と同じくらいに成長するので、イネの「いなほ」を食べてしまうからです。
9.  米を作るときの工夫はどんなことですか?  おいしいお米がいっぱいとれるようにするために、次のような工夫をしています。
  1. 前の年によく実った「もみ」を用意してタネまきをします。やせているものは、じょうぶに育たないからです。そして、きれいな空気と水と太陽の光で、すくすくと「なえ」を育てます。
  2. 「なえ」が大きくなり、気候も暖かくなってきたら、晴れていて、風のないおだやかな日を選んで、イネの「なえ」を田んぼで植えます。
  3. 田んぼは、イネの生長が良くなるように、土を改良する特別な肥料などをまいて、栄養たっぷりにしておきます。もともと田んぼに入っている栄養が少ないと収穫量が減るばかりでなく、おいしいお米ができません。たとえば、みんなが毎朝、牛乳を飲むようなものです。カルシウムをとらないと、歯や骨がちゃんとできないので、ご飯やお肉をいっぱい食べても、ダメですよね?
  4. イネが田んぼで生長している間は、こまめにイネの身体検査をして、健康に育っている かどうか確かめます。栄養がたりないかな、と思われる時は、肥料を少しあげます。やりすぎると、たくさん吸収されて、お米の中に栄養分がたまりすぎ、逆に味を悪くしますから、農家の人は真剣です。
  5. なんとなく息が苦しそうだな、と思ったら、田んぼの水をぬいてやって、根っこに空気を送ってやります。病気にかかっていないか、害虫に食べられてはいないかも、よ~く見回ります。病気も害虫もいないのにクスリをまいたりしません。クスリ代がかかりますし、まく手間もかかります。ここ!というタイミングを見はからって、必要な量だけのクスリをまいて、病気が悪くなるのを防ぎます。
  6. イネをかり取るときも、「いなほ」の「もみ」がじゅくしているかよく確かめて、早すぎないよう、遅すぎないよう気をつけて始めます。おいしいお米をかり取るには、ちょうどよい時期があります。
  7. かり取ったら、「もみ」をかわかします。昔は田んぼに干して、太陽の光でかわかしましたが、今は機械でかわかします。あまり高い温度で急にかわかすと、お米が割れたりして、ごはんをたいた時に、べちゃっとしますから、注意してかわかします。こうして、おいしいお米ができて、農家から消費者へお米がとどけられるのです。
10.  すずめの追い払い方法を教えて下さい。  私たちも、すずめには困っています。
試験場では、10アールくらいの水田にすずめよけの網(防雀網・ぼうじゃくもう)を天井を含めて周囲を囲います。
でもみなさんはできませんので、バケツ稲を囲む、稲より高い木枠を作ります。この木枠に、光が透る暗くならない、すずめの入らない大きさの編み目の網のようなものをかぶせる、または細めのひもやビニールテープを5cmの幅で貼るなどはどうでしょうか。これなら大丈夫でしょう。
かかしや鳩用の目玉のではすぐに、なれて効果がありません。とにかくすずめがいやがるようにしてください。なお、台風の時は壊れますので、注意しましょう。
11.  梅雨時期では、ばけついねの水が多すぎていねが病気になってしまったりしませんか?また、夏に枯れてしまわないといいのですが。  いねがだんだん大きくなり、心配なことが多くなりますね。水の深さですが、水が多すぎると、茎(ぶんげつといいます)の数が減ってしまいたんさんのお米がとれません。また、長くのびすぎて弱くなり倒れたりします。
いねが水に埋まってしまうくらいの水の深さでも1~2日くらいは大丈夫と思います。でもできるだけ土の表面から3~5cmくらいになるように減らしてください。

このページの上へ

お米を食べる

1.  なぜごはんを主食にすると健康にいいのですか。  私たち日本人の食生活はお米を中心に、魚、肉、野菜などバラエティ豊かな組み合わせからなっており栄養のバランスも理想的といわれています。これは「日本型食生活」と呼ばれ、アメリカやヨーロッパの肉中心の食事とは違う独自のパターンを作っています。
人が健康に生きていくためには、色々な栄養素が必要です。この中でエネルギーバランスの基本になっているのが、たんぱく質、 脂肪、 炭水化物の3つの成分のエネルギー比です。今の日本の食生活は、全体で見るとこの理想的な比率と一致しています。
2.  お米にはどんな栄養があるのですか。  お米の中には、炭水化物(約76%)とたんぱく質(約7%)をはじめわずかですが脂肪、ビタミン、ミネラルなども含まれています。炭水化物(大部分がでんぷん)は私たちのエネルギーのもとになるもので、自動車でいえばガソリンにあたります。
私たちが生きていくには、1日2,250~2,550キロカロリー(20代男子)程のエネルギーが必要です。お米を主食にして1日300グラム(ごはんの茶わんで6杯くらい)食べると、お米だけで約1,070キロカロリーが取れるのです。つまり、1日に必要なエネルギーの約45%を主食から取ることができます。
そして私たちの血や肉になるたんぱく質は、お米を主食にした場合、その約30%をお米から取ることができます。
3.  お米は太りにくいってホントですか。  最近では、若い人たちの中にも太っている人が増えてきました。太り過ぎると糖尿病や心臓病などの病気にかかりやすくなります。
太る原因は食べ物にもあります。余ったエネルギーは脂肪になって体にたまり、その結果太ってしまうというわけです。
ごはんなどに含まれる炭水化物は、肉やバターに含まれる脂肪よりも消化・吸収のスピードが速くてエネルギーとして消費されやすく、体にたまりにくいのです。また、炭水化物を含む食品の中でも、ごはんは粒で食べる(粒食)ので、パンやジャガイモなど粉食にくらべて、体に脂肪をためるホルモンの分泌が少ないのです。つまり、ごはんはそれ自体脂肪になりにくく脂肪をためることの少ない食品といえます。
4.  ごはんのおいしい炊き方を教えて下さい。  自動炊飯器でごはんをおいしく炊くコツは、
ポイント1
  • お米をキチンと計る
  • お米は、炊飯器に付属のカップ(180ml)ですり切りで計ります。
  • この同じカップで水加減もします。(ポイント3 で説明します)
ポイント2
  • 手早くリズミカルにお米を洗う
  • 1回目はたっぷりの水で数回軽く混ぜるようにして手早く洗いすぐに水を捨てます。後は2~3回水を替えて洗います。
  • 最後はキチンと水気をきりましょう。
ポイント3
  • 大切な水加減をキッチリと
  • ごはんのおいしさを左右する水加減。
  • お米を計った同じカップでキッチリ水加減をしましょう。
  • 普通の白米の場合、洗う前のお米の容量の20%増し、新米は10%増しを標準とします。そして好みによって多少の調整をします。
ポイント4
  • ふっくらゴハンのために、お米に水を吸わせる
  • 水温によって多少異なりますが、夏は30分位、冬は1~2時間位水に浸してお米の中まで充分に水分を浸透させてからスイッチオン!!
  • 後は炊きあがるのを待つばかり。
  • 急ぐときは、40~50度のぬるま湯に15~20分位浸してから炊くのがよいでしょう。
ポイント5
  • しゃもじでほぐして最後の仕上げ
  • ごはんが炊き上がって蒸らしが終わったら、できるだけ早くごはんをほぐします。
  • 釜の底の方からごはん粒をつぶさないように、大きく掘り起こすようにふんわり混ぜると、余分な水分が逃げてふっくらおいしいごはんになります。
5.  お米を貯蔵するカントリーエレベーターとはどのようなものですか。  お米作り農家が共同で乾燥(かんそう)や籾摺調製(もみすりちょうせい)などの作業を行えるように、農協がつくった施設のうち、とり入れたお米をもみのまま保存しておける大型の施設です。
少し前まで、秋にとり入れたお米は、それぞれの農家で乾燥や籾摺調製を自分のところの機械で行って農協へ出荷するのがふつうでしたが,農業機械を共同で使うことで農家の費用が軽くなることから、カントリーエレベーターなどの施設に作業をまかせる農家がふえてきています。
6.  お米はどれだけ保存できるか教えてください。  お米が日本人の主食になった理由のひとつは長く保存できることです。お米をもみのまま2℃の低温できちんと保管すれば10年間は食料ととして保存できると言われています。
精米した白米の保存期間の目安としては、精米後室内の涼しいところに保存していると1ヶ月間くらいはおいしく食べられます。
7.  なぜ、お米の備蓄(びちく)が必要なのでしょう。  お米の生産量は気象条件などにより、年毎に大きく変化します。平成5年の大凶作を背景とした緊急輸入の下で消費者からは国産米を中心としたお米の安定供給が求められていました。このため、不作の時でも安定的にお米の供給ができるように備蓄が制度化されました。
備蓄されるお米の量は過去の不作の状況等を踏まえて、不作が2年連続したとしても安定的に供給できるように150万トンを基本としています。
8.  平成5~6年にお米が無くて困っていたと聞きました。それについて詳しく教えて下さい。  平成5年産のお米の作柄は、記録的な低温や寡照により、作況指数が全国平均74の「著しい不良」で、全国の収穫量は平成4年を274万トン下回る781万トンでした。
一方、お米の在庫については、平成5年10月末で23万トンしかありませんでした。このため、政府は、お米の安定供給の確保という観点から、各国から約259万トンのお米を緊急に輸入したのです。
しかしながら、消費者の国産米志向は非常に強く、輸入米は売れ残り、国産米を求めて消費者の長蛇の列ができる等のコメパニックが発生しました。これを「平成の米騒動 」といいます。
このように、平成5年産米の不作を背景とした緊急輸入の下で、国内産米に対する根強い需要が示されたように、消費者からは国産米を中心としたお米の安定供給が求められていました。
このため、平成7年から施行された食糧法においては、国内生産が不作となるなどの不測の事態においても、消費者に安定的に国産米を供給できるようにお米の備蓄が制度化されています。
9.  さまざまな種類のお米が出ていますが、もち米とミックスさせたような品種はありますか?  もち米とミックスさせたような品種」が今ひとつわかりませんが、品種特性として考えると半糯(低アミロース)品種のことかと思います。
胚乳が一般粳に比べ濁る(ダル)ことが多いのでダル品種と言ったりしています。一般粳のアミロース含量は大雑把に言って18~20%であるのに対し低アミロース品種は8~12%くらい、ちなみに糯のアミロース0%です。
ダル品種として府県品種では「ミルキークイーン」、「スノーパール」など胚乳の濁りにちなんだ命名の品種があります。北海道では「彩」や「はなぶさ」があります。
炊飯特性は冷めてもつやがあり、粘りが強いため、一般粳米とブレンドして食味が良くなるとされています。特に弁当業界、外食産業などで注目されている品種です。
コメの流通量に占めるこれら低アミロース品種の比率は、まだまだごくわずかですが、今後一般消費者にも認知されれば需要が拡大し、広く作付けされるものと考えています。

Q&Aのトップへ