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道南農業試験場

作物病虫グループ(管理)


ほ場管理部門で考案した、施設園芸研究支援に向けた
野菜類新育苗システムを紹介します。


①システムの構造
システム化の全段として、まず鉄製アングル(40mm)と鉄網を切断、溶接加工した穴あきベンチ(長さ:360cm、高さ:70cm、奥行き:90cm)を20台制作し、全て防錆処理した。このうち半分のベンチは、上部に灌水パイプが固定できるよう鉄製のアームを取り付けた(このベンチをアーム付きベンチと呼び、その他を普通ベンチと呼ぶ)。
その他、システム化に際して準備した器材は、被覆用のビニールを固定する塩ビ整のポール、ビニール製の穴あきダクト、暖房機、温度センサー、エバーフローチューブ(潅水チューブ)及び電磁弁タイマーなどであり、いずれも市販のものを利用した(図1、2)。

図1 育苗用ベンチの設計図

②システムの組み立て
製作したベンチは育苗の大型ハウスに運搬し、アーム付きベンチと普通ベンチを1組にして縦列に並べた。なお縦列のベンチとベンチの間は、運搬車が進入できるよう十分な間隔をとった。低温時の育苗に対処するため、ベンチ下部両側面はビニールで覆い、上部はポールを半円形に固定することにより適宜トンネル掛けができるようにした。また、下部には穴あきダクトを通し、温度センサーの作用で暖房機から温風が自在に送られるよう工夫した。さらにベンチ上部のアングルにはエバーフローチューブを固定し、電磁弁タイマーを接続することによって給水作業を自動化した。

図2 新育苗システムの概念図

③従来方法との比較
温度
トンネル内温度は、1日を通して新育苗区が慣行区よりやや低く経過(表1)。この格差の原因は慣行区に比べて新育苗区の空間面積が、ベンチ下部を含めると2倍以上になったためである。しかし新育苗区でも14℃以上の温度が常に確保されており、その変動係数も慣行区とほぼ同一であるため、低温時期の加温効果ほぼ満足のできるものであった。むしろ問題は低温期と言えども、晴天時の日中におけるハウス内気温が25℃以上に上昇することである。

表1 慣行区と新育苗区のトンネル内における温度変化比較


苗素質
ハクサイ苗の生育(葉数、葉長、葉幅)な新育苗区では慣行区よりやや劣っていたが根部生育は勝っていた。地上部生育量の変動係数は、新育苗区が小さい値になり、苗揃いは慣行区よりも優るものと考える。(表4。図3)従って、新育苗区における給水の不均一性は、間断給水によって解消したと言える。また、地上部乾物率は、新育苗区で高くT/R比も低く健苗となった。(図3)。

図3 はくさい苗の乾物重及び根部乾物重に対する地上部乾物重の比率(T/R)

一方、根部の生育量は圧倒的に新育苗区が優っており、乾物率も慣行区よりも高いことから、新育苗区では地上部に比べて両区の生育環境には多くの点で相違があるが、中でも注目すべきは、慣行区が地床(接地育苗するのに対して、新育苗区では 穴あきベンチ上〈空中育苗〉)する点である。今後は空中育苗の生育解説、とくに、根部の生育解説を詳細に行い、その利点を明らかにする必要がある。
ポット内の良好な根張りは、根と土が密着、固定化していることを示しており、慣行区に比べ新育苗区で育った苗の本圃への定植作業は極めて容易で、定植後の活着も良好であった。従って、新育苗区のハクサイ苗素質は、慣行区に優るとも劣らず、健苗化整一がともに向上したと言える。

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