水産研究本部

試験研究は今 No.691「道南太平洋海域におけるスケトウダラ刺し網漁業操業日誌の収集について」(2011年7月6日)

はじめに

  スケトウダラは、道南太平洋海域(渡島総合振興局~日高振興局管内)においては、栽培漁業対象種であるホタテ、海藻類を除く漁業資源の中では最も生産額が高い重要な魚種となっています。そのため、この海域では以前から調査船(函館水試金星丸)を運航してスケトウダラ産卵群についての調査を行っており、調査内容や結果については、この「試験研究は今 No.489(スケトウダラニュース発行中)」で紹介しています。また、当水試ホームページでもこの「スケトウダラニュース」は、平成13年度に発行してから最新号まですべてがご覧いただけます。しかし、この内容は調査期間内の限られた分布状況や分布量に関する情報ですので、実際にどのあたりに漁場が形成されてどれだけ漁獲されているのかといった漁業情報までは分かりませんでした。そこで、平成22年度から、渡島、胆振地区の各刺し網船団の代表船に協力を得て、操業日ごとに操業位置、使用した網数、漁獲量を記入した操業日誌を提出してもらい、漁場形成や漁場規模に関する知見を収集し始めたので、その結果を紹介します。

日誌データの集計結果(漁場の移動について)

  操業日誌は、渡島海域から11隻、胆振海域から7隻の計18隻から提供を受けました。しかし、渡島と胆振では刺し網の仕立てが異なっていたため、1反の長さが同じになるように網長を調整した後、刺し網1反あたりの漁獲量(CPUE)を集計し、位置情報と合わせて、月ごとの操業状況をまとめました(図1)。

  これによると、平成22年度は、漁期始めの10月では噴火湾口域の水深200メートル以深で操業が行われていましたが、11月になると漁場は渡島側と胆振側の水深100~200メートル付近に分かれました。これは魚群が沿岸域へ移動したためと考えられます。12月にはさらに漁場は沿岸域に移動し、渡島側では鹿部沖に、胆振側では白老沖に主な漁場がみられました。1月では渡島側での操業はほとんどなくなり、地球岬沖の水深100メートル付近に主漁場は移動していました。

  なお、11月下旬に実施した金星丸による魚探調査の結果(図2)と比べると、12月の漁場は11月下旬の魚群反応とおおむね一致しており、魚群の多い場所に漁場が形成されることが見てとれました。

今後の予定

  操業日誌データの収集は、平成22年度より開始されたため、刺し網漁場の形成機構についての研究は緒に就いたばかりです。今後、この操業日誌データが蓄積されていくことにより、スケトウダラ産卵群の産卵場への移動経路が解明されていくものと期待されます。また、調査船で実施している魚探調査との結果や漁獲物の測定結果と合わせることにより、年齢別の来遊状況や来遊量に関する知見も得られると考えられます。

(栽培水産試験場  調査研究部  武藤 卓志)
    • 図1 刺し網漁業における操業位置とCPUE
    • 図2 金星丸で調査した11月下旬の魚群分布

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