水産研究本部

試験研究は今 No.685「北海道気候変動観測ネットワークが発足します」(2011年03月24日)

北海道気候変動観測ネットワーク

  2011年2月23日午前、札幌国際ビル8階国際ホールにおいて「北海道気候変動観測ネットワーク設立総会」が開催され、本ネットワークが2011年4月から発足することになりました。北海道立総合研究機構(道総研)水産研究本部も本ネットワークに参加します。また、総会では、(財)北海道環境財団理事長の辻井達一氏を会長に選出しました。

  総会後の午後から、「北海道気候変動観測ネットワーク設立記念フォーラム」が同会場で開催され、報道もあったことから、本ネットワーク設立のことを、すでにご存じの方もおられると思います。

設立の目的

  北海道洞爺湖サミットが開催されたことを契機として、本道における温暖化対策をさらに進めるため、北限のブナ林や流氷など気候変動観測に有効な指標が多い本道の特性を活かし、道内の大学・研究機関等の連携強化を図ることにより、
  • 効果的なモニタリングの実施や情報の共有、観測結果等利用に関する利便性の向上等による温暖化影響の早期把握に貢献すること
  • 道民や農林水産事業者等への包括的な情報提供を行うこと
を目的に、北海道気候変動観測ネットワーク[Hokkaido Survey network for Climate Change(以下、HSCCといいます。)]を設立し、道民の皆さんなどへの情報提供や研究者間の気候変動に関する情報の共有化を図る第一歩を踏み出したいと考えております。
(「HSCC設立趣意書」から) 
    • 図1

HSCCの運営等

HSCC設立後、事務局は、財団法人北海道環境財団に置きます。
また、設立後の運営体制について、
  1.  財団法人北海道環境財団
    • HSCC事務局としての諸調整
    • 研究成果の発表や交流を図るためのフォーラムなどの開催に係る諸調整
    • 民間企業等への支援等の要請
  2.  地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部
    • 情報提供ホームページ(HSCCのホームページ)の運営主体(システム管理)
    • 参加機関の提供情報内容の確認
    • 北海道における気候変動の影響への適応策等の共同研究に係る諸調整
  3.  北海道
    • 事務局のバックアップ
    • HSCC参加機関の拡大や調査研究の収集に係る諸調整
などとなっています。 

設立に至る経緯

  2008年7月7~9日にかけて洞爺湖町で「北海道環境サミット」が開催されるという、そのための準備を進めている中で、2008年の年初に北海道環境財団・辻井理事長から北海道に次のような構想の提言がありました。それは、北海道というのは流氷の南限でもあり、ブナ林の北限であるという特性から、「センサーアイランド北海道」という地理的特性を有し、それをふまえて環境モニタリングのネットワークを構築するという構想でした。この提言に知事が大きな関心を寄せたことがHSCC設立の発端となりました。

  2008年2月に副知事からネットワーク構築の指示が出され、環境生活部環境政策課が事務局となって、3月に開催された第1回目の環境モニタリングネットワーク構築のための打合せ会合に、北海道環境財団、北海道立オホーツク流氷科学センター、北海道大学大学院地球環境科学研究院、北海道開発局、北海道立環境科学研究センター、北海道立中央水産試験場、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター苫小牧研究林、独立行政法人森林総合研究所北海道支所の8機関から8名の研究者が、個人の資格で参加し、ネットワーク構築に向けた議論を開始しました。4月に開催された「環境行動シンポジウム2008」で、知事は「北海道環境宣言」を行い、環境政策を加速する道の先導的施策の一番目に「地球温暖化対策の推進」を挙げ、その中の第一番目の施策として「地球温暖化モニタリングネットワークの構築」を発表しました。5月には、北海道立中央農業試験場、北海道経済産業局、札幌管区気象台、北海道地方環境事務所、北海道(環境生活部環境局環境生活課)が加わって、13機関の機関参加による設立準備会が発足し、その後検討が重ねられていきました。

  2010年7月、「北海道気候変動観測ネットワーク」設立呼びかけ団体(北海道環境財団、道総研環境研究本部環境科学研究センター、北海道環境生活部)から「設立趣意書」が関係機関に送付され、正式な機関参加要請がありました。道総研水産研究本部は、2011年1月に参加を決定しました。また、道総研では研究本部単位で参加する方針のため、ほかに環境研究本部、農業研究本部が参加しました。

  なお、設立時点での参加機関数は、道総研の1研究本部を1機関として数えると全部で10機関です。  

今後の活動について

 総会で承認された平成23年度事業計画から一部を抜粋すると、

1.当面の事業方針

   様々な機関が保有する道内における気候変動に関する情報を会員間で共有するとともに、道民等に提供するため、次のような事業を行う。
  • 集約した情報のウェブ公開を進める。
  • 会員等による発表等の機会を設ける。
これらの事業を通じ、参加機関を増やすとともに、HSCCに蓄積する情報の充実を図る。
また、今後の事業展開について、協議・検討を行う。

2.事業計画

(1)道内における気候変動に関する観測データ等の収集・発信
会員をはじめ様々な機関が保有する情報を集め、適宜ウェブ上に反映する。(ウェブ間のリンクを含む)
会員は、会員以外の機関が保有するデータ等で重要と思われるものについて、事務局に情報提供するなど、データ等の収集に協力する。
(2)会員の研究成果の発表や交流を図るためのフォーラム等の開催
研究者や一般を対象にしたフォーラム等を年に1~2回開催する。
会員は、積極的に参加すると共に、広報等に協力する。なお、講演内容は、ウェブで公開する。
(3)協議・検討事項
道民等の参加による身近な観測データとの連携の検討
事務局が中心となり、各会員に呼びかけて連携の方法を検討する。
(4)その他
関係機関に参加を呼びかけ、会員の増加を図っていく。
会員は、関係機関の情報があれば、事務局に情報提供するなど、会員の増加に協力する。
などとなっています。

おわりに

  2008年当時、環境モニタリングネットワーク構想の中に、「国際的」なネットワークを構築するという考えがありました。しかし、設立されたばかりのHSCCには「国際的」という言葉はどこにも明記されていません。今後活動が進展していく中で、北海道という地域や、日本という国の枠を超えて、ネットワークが繋がっていくことになるのかもしれません。

(中央水産試験場 田中伊織)

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