水産研究本部

試験研究は今 No.651「チヂミコンブの生態調査について」(2009年10月16日)

はじめに

  チヂミコンブは北海道日本海沿岸の石狩から宗谷、オホーツク海沿岸の網走にかけて分布しており、「チヂミコンブ」という名前のとおり葉状部の両側が細かく縮れているのが形態的な特徴です(写真1)。健康食品などに用いられているフコイダンが多く含まれていると言われており、高値で取引きされたこともありました。ところが、チヂミコンブの生育場所や生態についてはあまり分かっていません。今後、増養殖の可能性を検討する上で、成長や成熟などの生態学的な特性を把握しておく必要があります。現在、稚内水産試験場では「チヂミコンブの養殖技術開発試験」を進めており、その中でチヂミコンブの生長時期や生息場所の条件などを調べています。
    • 写真1

チヂミコンブの生長と成熟

  チヂミコンブがいつ生長し、成熟するかを明らかにするために、2008年4月からほぼ毎月、稚内市宗谷地区のチヂミコンブを採集しました。採集したチヂミコンブは葉長などを測定し、子嚢斑の有無を観察しました。

  チヂミコンブは12月から5月の間に生長し、5月に葉長が最大となりましたが、6月以降はほとんど生長せず、枯れて短くなっていきました(図1左)。一方、乾燥歩留まり(=乾燥重量/湿重量×100(パーセント))は、4月以降上昇し、藻体が枯れて短くなった秋季(9~11月)には30パーセント近くまで上昇しました(図1右)。
    • 図1
 チヂミコンブは、9月から成熟し子嚢斑(写真1右)を形成しましたが、9月は少数の藻体にしか見られず、大多数は10月以降に見られました。同じ地域に生育しているリシリコンブは8月から子嚢斑を形成し、9月にはほぼ全ての藻体に形成していることから、チヂミコンブの成熟期はリシリコンブより1ヶ月近く遅いことが分かりました(図2)。
    • 図2

チヂミコンブの生育場所

  2008年以降にチヂミコンブの調査やその他の調査の時にチヂミコンブの生育が確認された場所を表1に示しました。チヂミコンブは漁港内や離岸堤の内側または水深が深い場所に生育している傾向がありました。チヂミコンブの生育場所は、海水の流れが比較的緩やかな場所が適しているのかもしれません。今後、チヂミコンブの生育場所の流速環境なども調査して、生育に適した場所の条件を明らかにしたいと考えています。
    • 表1

最後に

 チヂミコンブの生産は天然資源に頼っていることもあり、安定しているとは言えません。近年では安定した生産のために、チヂミコンブの増養殖の技術開発が望まれています。その技術開発のためにも、チヂミコンブの生態調査を継続して、基礎的な知見を蓄積していく必要があると考えています。

(稚内水産試験場 合田浩朗)


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