水産研究本部

試験研究は今 No.679「平成22年度水産試験研究プラザ(地域説明会)の概要について」(2010年12月9日 )

平成22年度水産試験研究プラザ(地域説明会)の概要について

 平成22年9月10日、当稚内水産試験場会議室において、水産試験研究プラザ(地域説明会)を開催しました。この地域説明会(通称、沖底プラザ)は、沖合底曳き網漁業関係者を対象として毎年開催されているもので、沖合底曳き網漁業の対象魚種の資源動向や試験調査船の調査結果などを報告しています。

 今年度は、事前アンケート調査における要望に基づき、主要対象魚種であるスケトウダラ、イカナゴ、ホッケの資源動向や調査結果について、それぞれ担当者から説明を行いました。説明会には沖合底曳き網漁業者のほか、稚内機船漁業協同組合、稚内市、宗谷振興局からも参加があり、当場職員も含めると参加者は計55名となりました。

説明会での発表内容について、その概略をご紹介します。
    • 地域説明会の様子

【スケトウダラ】(発表者:板谷和彦主査)

(1)調査船北洋丸で4月に行った仔稚魚の分布調査から、2010年級群の分布量は2005年以降では2番目に高い豊度で、現存量は2006年級群の約4割と推定された(図1)。

(2)4月の道北日本海の水温環境は2006年のように低めで、春先の水温が低いほど生き残りが良くなる傾向があらためて示された(図2)。

(3)スケトウダラ北部日本海系群の漁獲量は1993年度以降漸減傾向にあり、2009年度は1万4千トンと過去最低であった。(図3)

(4)資源量は1990年代後半から減少傾向にあったが、ここ数年は2006年級群の加入より減少傾向に歯止めが掛かり、横ばいで推移している。しかし、2009年度に新規加入した2007年級群は、過去最低の資源尾数と推定された。(図4)
    • 図1、図2
    • 図3,図4

【イカナゴ類】(発表者:板谷和彦主査)

(1)2010年8月31日までの稚内機船漁協の漁獲量は、15.5千トンと昨年の同時期より7.2千トン多く、豊漁だった2006年並で推移している。(図5)

(2)7月上旬までの漁期前半は、3歳以上の大型魚に加え2歳魚が比較的多く漁獲され、漁獲量も昨年を上回った。漁期後半は、漁獲主体の2歳魚(2008年生まれ)に加えて1歳魚(2009年生まれ)も加入し、かけまわしではまとまった漁獲が継続して昨年を大きく上回った。

(3)2009年度のCPUEは10.9トン/網で、2001年と並んで過去最低の値で、資源水準は低水準と判断された。(図6)

(4)2010年に稚内港に水揚げされた漁獲物は、2歳魚が全体の53パーセントを占め、次いで1歳魚が29パーセントで、3歳魚が9パーセントであった(図7)。漁獲尾数の主体となった2008年級群(■)は、2004年級群(■)ほど豊度は高くはなく、現在まで漁獲が継続しているのは、2009年級群(■)の加入が理由と考えられます。

(5)来年度は、2008年級群(■)が3歳として漁期前半を支え、漁獲の主体となる2009年級群(■)も、今漁期の1歳での漁獲尾数が平均値以上なので、悪くはないものと予想される。
    • 図5、図6、図7

【ホッケ】(発表者:前田圭司研究参事)

(1)2009年の道北系ホッケの漁獲量は2008年より約5万トン減少して,9万6千トンでした。このうち沖底漁業が7万6千トン,沿岸漁業が2万6千トンで,それぞれ前年よりも沖底漁業が約4万2千トン,沿岸漁業が約6千トン減少した(図8)。

(2)2009年の道北系ホッケの資源尾数は11億7千万尾と前年から大きく減少し,資源重量も24万トンと前年を大きく下まわった(図9)。資源重量から推定された2009年の資源水準指数は71.6で,中水準と判断された(図10)。

(3)資源量結果および2010年度の1歳魚の漁獲状況から,2009年級の年級群の資源豊度が低い可能性が高く,今後,漁獲量の減少や産卵親魚量の減少が懸念される。

(4)2010年9月6~7日に稚内ノース場において「北洋丸」で実施したトロール網による分布量調査では,曳網1海里あたりのローソクボッケ(0歳魚)の分布量は5.1キログラム/N.M. (0~19.3キログラム/N.M.)と,過去2番目に低い値であった(図10)。しかし,来遊が遅れている可能性もあることから,今後の動向に注視したい。

(稚内水産試験場 研究参事 前田圭司)
    • 図8、図9
    • 図10、図11

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