水産研究本部

試験研究は今 No.215「スケソ博士 のタラでダラダラ言わせて(パート1)」(1995年2月24日)

スケソ博士のタラでダラダラ言わせて(パート1) -大水深を利用したマダラ人工魚礁による資源保護・増大への取り組み-

はじめに

  マダラといえば鱈ちりなど冬の鍋料理として、また粕漬けなどの惣菜や開きタラなど、酒の肴としても身近な魚です。
  北海道では沖合底引き網や沿岸の刺し網、定置網などで全国の約7割に当たる3~5万トンを水揚げしています。
  マダラの近年の漁獲は減少傾向にあり、特に冬場のマダラに依存する割合の高い漁業者から、資源増大に対する強い要望があります。
  ここでは、マダラの資源と生態の概略や資源増大の試みを中心に、特に「大水深における人工構造物(魚礁)を利用した水産資源の保護と増大手法」に関する最近の取り組みについてお話しします。

マダラの生態

  マダラは、北緯34度以北の北太平洋の水深550メートル以浅の大陸棚および陸棚斜面に広く分布します。生息水温は摂氏2~4度が適水温とされていますが、発育段階や場所により氷点下から10度以上の所にもいます。比較的底生性で産卵場への回帰が強いため、各海域に多くの集団(系群)が考えられていますが、まだ良くわかっていません。

  北の魚の中では成長が速いことで知られ、全長1メートルにも達し、その貧食ぶりは「たらふく」の語源になるほどです。体長50~60センチメートルで成熟し、冬に深層から浅海に移動し、底質が砂泥の海底で、直径1ミリメートル程の卵(沈性物)を大量(200~500万粒)にしかも1回で生んでしまいます。

マダラの赤ちゃん(人工種苗)について

  マダラは1尾の雌魚から大量に卵を得ることが出来るため、陸上施設における集約的な種苗生産に適した魚種です。本州においては、餌量培養技術の改善によりふ化仔魚の大量減耗をある程度克服し、10万尾規模の生産が可能となってきています。
 
  北海道でも道南の鹿部町にある道立栽培漁業総合センターで、今年からマダラの人工種苗生産技術の開発に着手しました。

人工魚礁による資源保護・増大手法

  北海道南部や青森県陸奥湾などでは、冬場の産卵期に沿岸の定置網や底建網で親魚の入手が容易なため、人工種苗生産技術に主眼をおいた資源増大手法が有効と考えられますが、北部海域では生息水深も深く、漁業種類も異なり、産卵親魚の入手は容易でありません。ここでは人工的な構造物を使った、自然の再生産力を有効に利用した資源増大手法も考慮に入れられなければなりません。

  北海道では、(社)全国沿岸漁業振興開発協会から委託を受け、3カ年計画(平成4~6年)で、北海道西岸日本海のマダラ資源を対象に、マダラの生物学的特性を生かした大水深域(水深200メートル)を舞台に人工構造物を用いた、合理的・効果的な資源の保護増大手法の開発事業を行いました。

*この結果については、「パート2」に続編を連載します。乞うご期待!(中央水試資源管理部 吉田英雄)

トピックス

最新設備の完成で、新たな研究飛躍!-中央水試新庁舎落成式挙行される-

  昨年の暮れに全ての建物が完成した中央水試では2月10日(金曜日)、落成式を挙行しました。

  当日は、新庁舎公開、テープカットに続き、式典が行われ、管内の水産関係者や市町村、道、水産庁関係など、約180人が出席しました。

  はじめに真田水産部長が「水産業は海洋法条約批准、環境保全の意識高揚など、情勢が変化しており、水試も研究ニーズの変化を把握しながら体制を整えていかねばならない。新しい設備が有効に活用され、浜ニーズに十分応えられると確信している。」という知事の式辞を代読し、次に、斉藤場長が建築経過の報告及び概要説明をしました。

  また、サハリン漁業海洋学研究所からルフロフ所長にご出席いただき、日ロ研究交流の親善も深められました。
 
  午後からは、余市郡漁協漁民研修会館で地元協賛会の主催により祝賀会が開催され、横路知事が出席し、完成を祝いました。(中央水試 企画情報室情報課)
    • 中央水試新庁舎落成式挙行