水産研究本部

試験研究は今 No.201「[浜ウオッチング]ヒラメ栽培漁業に取り組む~後志南部地区ヒラメ中間育成センター~」(1994年9月9日)

浜の声 -浜ウオッチング ヒラメ栽培漁業に取り組む~ 後志南部地区ヒラメ中間育成センター-

  北海道の日本海沿岸では、ヒラメ栽培漁業に力を入れています。暑かった夏を無事に過ごし、放流時期を迎えたヒラメたち。高水温に恵まれて、こんなに立派に育ちました。

【お話し下さった方】松澤昭二さん(寿都町漁協主任技術員)
    • 松澤昭二さん
はじめに
ここは後志管内の寿都町です。今回は、昨年度、六条地区に建設された『後志南部地区ヒラメ中間育成センター』におじゃましました。まずは放流間近の稚魚たちをご覧ください。みんな元気に大きくなっています。

ヒラメの世話は重労働
「現在、平均体長約9センチメートルに成長しました。」と松澤さんは水槽の流水量をみながらお話しして下さいました。黒っぽい体色模様がとてもきれいなヒラメです。
でも実際の飼育作業はかなりの重労働です。ここでは3センチメートルほどのヒラメの赤ちゃん(種苗)を施設に搬入するところから中間育成作業が始まります。
1日3回の給餌をはじめ、食べ残した餌を取り除く底掃除、成長にあわせて目合いの違うふるいを使っての選別などを行います。なぜ選別を行うかというと、実はヒラメには共食いの習性があり、大きなヒラメが小さなヒラメを食べてしまうのです。そのため、大きさをそろえておく必要があります。この期間は休む暇もないほど作業が続く毎日です。
「でも職員は3人いますから、土、日は交代で当番を決め、世話に当たっています。」

今年の稚魚たち
今年は、鹿部町の道立栽培漁業総合センターから7月18日に35ミリメートルサイズのヒラメ種苗を5万尾、岩手県の日本栽培漁業協会宮古事業場からは7月21日に30ミリメートルサイズを18万尾受け入れたということです。
「搬入の時期は昨年よりも遅かったのですが、その後は昨年の冷夏とうって変わって猛暑となりました。前浜の海水をポンプで汲み上げ、流水で飼育しているため、水温が上がり、一時は最高26度にも達しました。天然の海では、こんな密度で生息していませんから病気が心配されましたが、魚病の発生もなく、無事に育ってくれました。むしろ高水温が幸いして、昨年より成長は良かったです。」

施設は6町村で
この施設は、平成4年度の日本海特定海域栽培漁業定着強化事業の採択を受け、約4億5,000万円の事業費をかけて建設されました。島牧村、寿都町、蘭越町、岩内町、泊村、神事内村が共同で設置し、受益対象範囲もこの6町村にわたります。管理主体は後志南部地区ヒラメ中間育成センター運営委員会で、実際の管理は寿都町漁業協同組合が担当しています。施設は平成5年7月に完成し、今年度が2年目の運用になります。

規模は管内でも有数
施設は、鉄筋コンクリート平屋建て、延べ床面積は1,227平方メートルあります。
飼育棟には、10トン円形水槽12基と、5トン角型水槽が12基あります。取水ポンプは4台で、200トン/hの能力があります。
種苗の収容能力は3センチメートルサイズで約20万尾です。

大きくなって帰ってこいよ
放流用種苗については、9月に入ると順次、放流が始まります。
「初年度は寿都沖に集中放流しましたので、今年は岩内沖を中心に放流する計画です。」
放流海域の設定にあたっては、水産試験場も関与した調査を行い、海底が砂地でヒラメの餌となるアミ類が多い適地を選定しているということです。

ヒラメの宝庫めざして
寿都地区では、これまでもウニやクロソイなどを対象とした栽培漁業が展開されていますが、ヒラメを扱うのは、この施設が初めてということです。でも、とても立派な施設で管理も行き届き、稚魚たちもすばらしい成長ぶりを見せています。今年、2年目にしてすでにヒラメ中間育成事業は軌道に乗った感じを受けました。でも、「慣れたころが、実は一番注意する必要があるのです。いまのところ順調に来ていますが、まだ2年目ということで、実際の成果が問われるのはこれから。」ということでした。放流ヒラメが大きくなり、この浜で水揚げされるようになる日が待ち望まれるところです。
*この取材は8月下旬に行いました。(中央水試企画情報室)
    • 後志南部地区ヒラメ中間育成センター