水産研究本部

試験研究は今 No.222「北海道近海のクロマグロについて」(1995年4月28日)

海道近海のクロマグロについて

  夏季になるとクロマグロ(俗称、ホンマグロ)は対馬暖流の北上に伴い、道西日本海~オホーツク海と噴火湾の沿岸各地に来遊します。これらの地域では、定置網、一本釣りなどで漁獲されており、暖流性回遊漁の中で重要な資源として漁業者の関心も高まっています。

  ここでは、クロマグロの生態と近年の漁況を整理したので紹介します。

  マグロ類は1属7種に分かれていますが、その中でもクロマグロは低温に耐え、高緯度(北緯46度)まで広範囲に回遊することが知られています。クロマグロの外部形態の特徴は、紡錘形で太いこと、目は体に比べると小さいこと、第2背鰭と胸鰭が短いことなどですが、背の黒みが強いことが名前の由来となっています。

  クロマグロの生活史は4~6月に台湾東方海域で産卵し、ふ化した稚魚は黒潮に乗って九州南岸から日本海と太平洋に分かれて北上します。その後、一部は東北の金華山沖から東方の太平洋を横断して遠くカルフォニア沿岸まで回遊しますが、2~3年後に再び三陸沖に戻って、日本近海で成長したものと合流し産卵場に回帰します。

  クロマグロは年により発生量が変動し、5年周期で大発生の傾向が見られます。この大発生の年のものを卓越年級群と呼んでおります。近年、北海道近海のクロマグロ資源を支えたのは1967・68年、1973年、1978年、1983・84年発生の卓越年級群です。その顕著な事例としては、道西日本海では1967・68年発生の卓越年級群が持続して出現しており、後志海域で4~5年間、利礼~武蔵推海域では実にこの卓越年級群が12~13年間も漁獲され続けました。また、クロマグロ漁獲量の経年変化は5~6年ぐらいの周期で増減しており、クロマグロ特有の卓越年級群の出現と密接に関係しています。その年級変動の推移が北海道近海のクロマグロ漁獲動向を大きく左右しているものと思われます。

  近年のクロマグロ漁況の特徴を整理すると、日本周辺海域のクロマグロ漁獲量は各種統計の暫定値で1993年が5~6,000トン、1994年は9,000トン前後と推定されています。昨年の日本周辺海域におけるクロマグロ漁況は豊漁で推移しました。漁業別では金華山沖の旋網で100キログラム前後、定置網・釣りでは40キログラム台(1990年発生)が漁獲対象の主群となっていました。

  近年、北海道近海に来遊するクロマグロの漁獲量は150トン前後の低水準で推移していますが、1992年年以降、松前~福島海域では一本釣りで約100トンの好漁が続いています。これらの年別、体重組成(図参照)をみると、1992年は15キログラム前後、1993年が30キログラム、1994年は40キログラム台に漁獲の主群(1990年発生)が見られます。今漁期にはこの魚群が60キログラム台となって来遊するものと予測されます。また、明るい情報として1994年に発生した若齢魚(1キログラム未満)は北海道の日本海側~九州西岸及び太平洋沿岸域で多量に定置網で漁獲され、加入量は多いことが推測されます。この魚群は卓越発生年級群の可能性と思われ、今漁期には北上期に5キログラム前後(1994年発生)となって北海道近海に来遊することが大いに期待されます。(函館水試資源管理部)
    • 松前から福島海域のクロマグロ体重組成