水産研究本部

試験研究は今 No.210「マツカワ人工種苗放流について」(1995年1月13日)

マツカワ人工種苗放流について

  マツカワは冷水性のカレイ類で、成長力が比較的速く、高級魚であるため、北海道の栽培漁業対象種として期待され、種苗の量産化と放流技術開発が進められています。

  平成6年10月、函館市において「マツカワ放流技術開発に関する打合せ会議」が開催され、種苗生産と放流・再捕の現状および今後の放流と再捕についての連絡体制などについて話し合われました。

種苗生産の現状と展望
  マツカワの人工種苗生産は日本栽培漁業協会厚岸事業場と北海道立栽培漁業総合センターで行われてきましたが、今年度は残念ながらVNNウイルスの感染により、種苗が配付されませんでした。日裁協、栽培センターとも天然の親魚を確保しており、防疫に最善を尽くせば来年度は配付が可能であるという報告が行われました。

放流と再捕の現状
  マツカワ人工種苗の放流は昭和62年から日裁協厚岸事業場が主として厚岸湾で行ってきましたが、平成3年からは他の地域(図1)でも放流が行われるようになりました。
    • 図1
  各地における放流マツカワの再捕状況について日裁協の事業報告や各地の再捕報告をもとに紹介します。

  日裁協が厚岸湾や厚岸湖で放流したものは湾・湖内での再捕が8割を占めていました。遠隔水域への移動例としては東は根室湾、西は苫小牧沖での再捕が報告されています。また。放流方法としては飼い付け型の方が再捕率が高いようです。
 
  福島町と吉岡漁協では平成4年から吉岡と浦和の地先で放流しています。
  平成4年放流群の再捕は現在のところ放流数の1パーセント程度ですが、再捕場所の内訳は72パーセントが福島町内、25パーセントが隣の知内町で、津軽海峡を超えて青森まで移動したのは2例しか報告されていません。
 
  噴火湾胆振海区漁業振興推進協議会では、平成3年から4年にかけては伊達、平成5年には豊浦で放流を行っており、現在までにそれぞれ放流数の2.9パーセント、3.5パーセントが再捕されています。再捕は両者とも近隣(豊浦~室蘭)でのものが約8割を占めていますが、渡島側では南茅部、太平洋側では浦河まで再捕の報告があり、どちらかといえば太平洋側に移動している例が多いようです。また、道外では福島県で2尾の再捕が報告されています。

マツカワ再捕時の連絡体制
  マツカワは、そもそも天然魚の生態的知見が乏しく、人工種苗放流の歴史も浅いため、放流数や再補数もヒラメに比べてまだまだ少ないのが現状です。
 
  マツカワの放流技術開発として、放流サイズ、放流時期、放流適地を検討するためには、再捕魚のデータは欠かせません。そこで、今回の会議で漁協、協議会、水産技術普及指導所などの協力のもとに水試の資源増殖部が中心となって、再捕報告のとりまとめと解析を行うことが協議され、図2の連絡体制で進められることになりました。

皆様のご支援、ご協力をお願いします。(函館水試資源増殖部 松田泰平)

    • 図2