水産研究本部

試験研究は今 No.211「道東の沿岸漁業を考える-水産試験研究プラザが釧路で開催される-」(1995年1月27日)

道東の沿岸漁業を考える -水産試験研究プラザが釧路で開催される-

水産試験研究プラザ状況写真
  平成6年12月8日釧路市浜町の「くしろ水産センター」において、『水産試験研究地域プラザ』が開催されました。

  例年、この「試験研究地域プラザ」では単一魚種をテーマとして開催されており、本年も当地区での開催に先立ち11月15日に稚内市において「ナマコ」をテーマとして開催されているところですが、当管内、すなわち道東管内の水産業の置かれている現状を顧みると、年々国際漁業規制の強化等によって北洋漁業が衰退する一方、近年におけるイワシの大不漁や近海スケトウダラ資源の低迷、更には秋サケに代表されるような魚価安が毎年続き、漁業関係者には大きな打撃を与えております。

  このような状況の中で、21世紀に向けて道東水産業を今後いかに展開し、そして発展させていくかといった、その近未来像を現在まだ浜が余力あるうちに、関係者が一同に集まって、語り合える場が必要ではないかという事で、今回は「道東の沿岸漁業を考える」というテーマを設定しました。

  当日は、釧路、根室、十勝支庁管内の漁業関係者とともに、遠くは日高管内からの参加者もあって、総勢約130名が参加しました。

  冒頭、主催者を代表して釧路水試村上場長の挨拶、次いで北海道区水産研究所新宮所長からの挨拶の後、釧路水試浅野企画総務部長からプラザ開催に当たっての主旨説明を行い、参加者の共通認識の統一を図った後、(当水試の)橋本加工部長が座長となって釧路水試及び北水研研究者による話題提供を次のとおり行いました。
  • シシャモの資源管理について 釧路水試資源管理部 森 科長
  • 海藻類の増殖とその利用について
    • -釧路水試管内のコンブとその増殖について- 釧路水試資源増殖部 阿部科長
    • -未・低利用海藻からのアルギン酸オリゴ糖の生産- 釧路水試加工部 大堀科長
  • カレイ類の資源増殖の展望 北水研資源増殖部 南 室長
水産試験研究プラザ状況写真
  この話題提供の中では、森科長から当水試が長年取り組んできたシシャモ資源調査の研究成果から、地道な資源管理努力が資源の回復には重要であるとの報告を受け、次いで阿部科長からはコンブの増殖を行う上での雑海藻の生態と効果的な駆除を行うためのポイントが説明され、大堀科長からはその雑海藻の有効利用を図るという観点から、一例としてアルギン酸オリゴ糖の抽出、生産の可能性についての報告がそれぞれなされました。

  また、北水研の南室長からは、道東太平洋海域でのカレイ類増殖の可能性を検討した結果、マツカワがその最適種であるとの報告がなされました。

  次に、当水試の小笠原資源管理部長及び丸資源増殖部長の両部長を座長として質疑、意見交換の時間に入り、この時間では今回初の試みとして、参加者が話題提供の内容を良く理解し、そして一体となった議論をしやすい雰囲気を作るという事で、漁業関係者から話題提供の内容に関連した現地での取組みや実践活動の内容を現地情報の提供という形で、次のとおり紹介してもらいました。
  • 十勝管内におけるししゃもの資源管理について 大樹漁協 伊藤部長
  • 海底洗耕機による漁場回復の取り組みについて 厚岸漁協 根上漁業者
  • 昆布漁場における雑海藻駆除への取り組みについて 歯舞漁協 長山部長
  • 海藻類を利用した水産食品の開発について 根室市水産加工振興センター 鈴木次長
水産試験研究プラザ状況写真
  この情報提供の中では、報告のあった地域において、現在抱えている問題点がキチンと把握され、また、その解決に向けて努力してきた様子が良く分かり、それとともに今後に向けた新たな課題、問題点を認識し、より一層努力していこうとする姿勢が伺えました。

  特に、厚岸漁協からの報告については、直接駆除作業に従事している漁業者からの報告ということで説得力もあり、他の漁業関係者にとっては大いに参考となったことと思います。

  この後、総合討論を道東地域での今後における「資源管理型漁業の進め方」、「栽培漁業の進め方」、「水産物の付加価値向上」といった三つの観点に分けて行ったところ、閉会時間を大幅に超える程、参加者からの活発な質疑、意見交換が行われました。そして最後に村上場長から本日のプラザに対する総括としての感想が述べられた後、地元釧路支庁北口水産課長の閉会挨拶をもって、盛会のうちプラザを終了しました。(釧路水試企画総務部)