水産研究本部

試験研究は今 No.214「エゾバフンウニの人工種苗生産と漁場放流状況について」(1995年2月17日)

エゾバフンウニの人工種苗生産と漁場放流状況について

  各地区水産指導所では毎年ウニ種苗の生産・中間育成・放流状況について調査しており、その各地の情報を専門技術員が取りまとめたので結果を紹介致します。

1.種苗生産施設

図1
  北海道におけるエゾバフンウニの人工種苗生産は、現在[図-1]に示すように全道22ヶ所の種苗生産施設(沈着期幼生からの飼育施設2ヵ所を含む)が稼働し、人工種苗の生産を行っています。

2.種苗生産数

図2
  平成元年からの種苗生産数の推移を[図-2]に示しましたが、平成5年における種苗生産数は、殻径がほぼ5ミリメートル以上のもので、約4,710万粒であり、更に5ミリメートル以下の生産数も加えると、6,020万粒にのぼり、生産数は年々増加しています。(この他に、沈着期幼生での供給は3,030万粒あります。)

3.中間育成数、方法、生残・成長

  沈着期幼生の継続飼育を除いて中間育成を行ったのは53漁協で総育成数量は、2,100万粒でした。
  • 中間育成の方法は、(1)海中の垂下籠育成:37漁協、(2)陸上水槽:9漁協、(3)海中溝やプール等:7漁協、(4)海中生け簀方式:4漁協でした。(複数の方法の漁協あり)
  • 中間育成の生残率は、不明や南西沖地震で全滅のものを除いた47例の平均は79パーセントでした。育成方法別では、(1)海中籠:81パーセント、(2)陸上育成:87パーセント、(3)海中溝・プール:10パーセント,(4)海中生け簀:76パーセントとなっており、海中溝・プールでの中間育成は極端に生残率が低くなっています。
  • 成長については、ほとんどの漁協は5ミリメートル以上の種苗で開始していますが、育成終了時に15ミリメートル以上に育成した漁協は44漁協(全体の77パーセント)に及んでいます。

4.種苗放流

図3
  種苗生産数の増加に伴い放流数も年々増加しており、平成5年は84漁協で実施し、総計で5,190万粒が放流されました。[図-3]に種苗のサイズ別放流数の内訳を示しましたが、15ミリメートル以上で放流された大型種苗の総数は1,540万粒で、放流総数の30パーセントにとどまっており、小型種苗で直接放流されている数が圧倒的に多い現状です。

  放流時の大きさ(殻径)、数量については各地区の条件で、どの程度が最も効率的かまだ明確ではありませんが、早急に明らかにする必要があると思われます。

5.生産量の推移

図4
  [図-4]に平成元年からの全道のエゾバフンウニの生産量の推移を示しましたが、平成4年までは減少傾向でしたが平成5年には平成3年度程度まで回復しています。支庁別には、根室、網走は依然減少傾向ですが、渡島、宗谷は激しかった減少傾向から増加に転じています。これが種苗放流効果がどうかは、今後の調査が必要ですが、これだけで単純に放流効果が上がってきているとは断定できません。平成7年は反対に昨年の夏場の高水温による繁死で道南、日本海では生産量が減少することが予想されています。

6.ウニ栽培漁業協議会について

  さて、放流事業の効果的定着を図るため「北海道ウニ栽培漁業協議会」が平成6年度に設置されましたが、各水試の専技が中心となり、ブロックごとの協議会が平成7年度より活動を開始します。各地域での放流効果の把握、「種苗放流マニュアル」に基づく技術の普及などに取り組み効率的なウニ栽培漁業の定着を図っていく予定です。(水産部漁放課水産業専門技術員)