水産研究本部

試験研究は今 No.223「 道東太平洋海域のカレイについて」(1995年5月12日)

道東太平洋海域のカレイについて

  ここ数年、道東太平洋海域ではイワシの姿も消え、活気に満ちていた浜も心なしか寂しくみえますが、決して暗い話題ばかりではありません。ケガニ、シシャモ、カレイ等の沿岸資源の水揚げは増加傾向にあります。このうちケガニ、シシャモはこの紙面でも何度か登場していますが、当海域のカレイ類に関しては、比較的知見が少ないこともあって、これまでそれほど話題になっていませんでした。そのため、今回はこのカレイに関して話をしたいと思います。

  北海道水産部が発行している北海道水産現勢によると、当海域のカレイは1985年までは年間1万7,000トン以上の漁獲量がありましたが、1986年から急激に減少し、1988年には約4,000トンまでに減少しました。しかし、その後徐々に回復し、1993年の漁獲量は約1万5,000トンとなっています(図1)。1994年の漁獲量は現在集計中ですが、既に報告が得られた十勝支庁管内の合計では1993年のほぼ2倍、釧路市漁協のエビ桁網漁業では約4倍の漁獲量となっており、道東太平洋海域全体でも1993年を上回る漁獲量が見込まれます。なお、この海域でのカレイ漁獲量は北海道全体で漁獲されるカレイ漁獲量の約3割を占めており(1980~1993年の平均)、特に1992、93年では4割を超えています。

  それでは、道東太平洋海域で主に漁獲されるカレイの種類とその漁獲量はどうなっているのでしょうか。北海道水産現勢では、漁獲量の大部分が「その他のカレイ類」に分類されているため、漁獲量の多いカレイの種類及びその漁獲量は分かりませんでしたが、北海道沖合底曳網漁業漁場別漁獲統計年報では、道東太平洋海域で漁獲量の多い種はソウハチとヒレグロとなっていました(図2)。特にこの2種は、1991年から大幅に漁獲量を増やしており、1993年の漁獲量はそれぞれ248トン、140トンで、沖合底曳網漁船で漁獲されたカレイ類全体の46パーセント、26パーセントを占めていました。

  ところで、釧路水産試験場でも、9月から10月にかけて、シシャモの漁期前調査として桁網を用いた漁獲調査を行っていますが、この時にシシャモと共に入網したカレイの種類、体長組成等を調べているので報告します。1994年の漁獲調査(釧路海域)は、9月27日~10月8日に、音別沖、庶路沖、大楽毛沖、跡永賀沖の水深6~60メートルに設けた定点で、計18回行いました(図3)。この結果、合計9種のカレイが採集されましたが、(図3)、その中でもソウハチの入網数が最も多く、この調査で採集されたカレイ類の過半数を占めており、また、その次に多かったヒレグロと合わせると実に9割以上を占めていました。

  次に、入網数の多かったこの2種の分布状況をみると、ソウハチは水深10メール以浅の2点(庶路沖の31と大楽毛沖のK4)を除く全調査点で採集されましたが、特に水深30メートル以深では一綱当たり100尾以上の高密度域がみられました。また、水深30メートル以浅では体長10センチメートル以下の小型個体の占める割合が高くなっていました。ヒレグロは水深40メートル以浅の調査点では全く採集されず、水深50メートル以深で高密度域がみられました。その他の種ではスナガレイが6~55メートルの水深帯で幅広く分布していましたが、一網当たり100個体を超える様な高密度域は存在しませんでした。なお、このシシャモ漁期前調査時に混獲されるソウハチとヒレグロは、近年増加傾向にあたるため、今後もこの動向に注目していきたいと思います。(釧路水試資源管理部 武藤卓志)
    • 図1
    • 図2
    • 図3