水産研究本部

試験研究は今 No.216「南方系バフンウニは高級品!~」(1995年3月3日)

試験研究は今 No.216「南方系バフンウニは高級品!?」(1995年3月3日)

南方系バフンウニは高級品!?

試作品
  本誌No.184「道南日本海で南方系バフンウニが増えている!?」でバフンウニの資源量や餌料の競合についてお話ししましたが、今回は、全く利用されず邪魔者扱いされている、このバフンウニの利用について、当函館水試の中尾主任専技と加工研究室が関係機関の協力を得ながら取り組んでいますので、紹介します。

  バフンウニは、山口県や福井県などでは、粒ウニ、練りウニなどの加工原料として、むき身キログラム当り1万円程度で取引されていますし、漁家の自家加工によるビン詰めの販売が盛んに行われています。

  このことから、北海道産のバフンウニもなんとか利用できないかということで、原料を産地に販売するための輸送活力試験や粒ウニ加工製品の試作に取り組んできました。

  北海道では「イヌガゼ」とか「ニガガゼ」と呼ばれて苦味があり、まずいウニとされていますが、これは山口県など主要な産地でも時期により苦味がでるとのことであり、実際当水試で調査した時期には、苦味のあるものはありませんでしたので、北海道でも地域によっては分かりませんが、時期的に苦味が出るのではないかと思われます。

  また、エゾバフンウニとの成分的な比較をしてみましたが、成分的には大きな差はなく、逆に旨味成分であるグリコーゲンがエゾバフンウニに比べ多いことが分かり、北海道ブランドの製品化に大きな期待が持たれました。(表1)
    • 図1 粒ウニ試作品の加工工程
  試作品は、山口県の製法を基本に、粒ウニを食塩の量やアルコール量を変える等様々な条件で試作を繰り返し行った結果、アルコール粒ウニに関しては、味の面ではある程度良い製品が試作できる段階までになりましたが、問題点もはっきりとした形で出てきました。
というのは…

  平成6年9月2日に山口県の雲丹製造工業協同組合や関係者の方がウニ先進地視察で渡島管内を訪れた際、福島町の宮歌地区で同年8月23日に採取し2日間畜養した後、図1の加工工程で製造したアルコール粒ウニの試作品(ビン詰)を試食していただき、評価助言を得ることができました。その結果、全体の評価としてはまあまあとのことでしたが、次の事項について指摘がありました。
  1. 色が良くない⇒黄より赤が良い。
  2. 粒が壊れている。
  3. なかなか固まらないには水切りを十分したか。
などでしたが、これらの原因として考えられるのが、(1)に関しては、餌料となる海藻が違うことが主な原因と考えられます。(2)は身を後で混ぜたため粒が壊れたと思われます。また、アルコールを2回(4パーセント+4パーセント)に別けて添加したため、なかなか固まらなかったと想像されました。(3)については十分に行ったつもりであり、よく言われる「苦み」についての指摘はありませんでした。

  もう一つの問題点としてビン詰めしたときに、ドリップ状(液状)のものが浮き出ることがあります。これらの問題点は原料特性の違いに由来すると考えられます。

  今後、調査検討を進め、製法の改良など行っていく必要がありますが、漁業生産の低い道南日本海に、小さいけど一つの明るい話題にしたいものだと、中尾主任専技・加工室を中心とするスタッフは日夜努力しています。(函館水試企画総務部)

ウニ加工品の種類と規格

 昭和37年ころからウニ加工食品の生産量が増加したため、農林水産省は昭和45年に「粒うに・練りうに」の「日本農林規格」を制定し、適正な表示を義務づけました。
  • 粒うに・・・ウニ生殖巣に食塩を加えたもの(以下「塩うに」)およびこれにエチルアルコール、砂糖、澱粉、酒粕、科学調味料(以下「エチルアル」コール等」)を加えたものであって、塩うに含有率が65パーセント以上のものをいう。
  • 練りうに・・・塩うにまたはこれにエチルアルコール等を加えたものを練りつぶしたものであって、塩うに含有率が65パーセント以上のものをいう。
  • 混合うに・・・塩うににエチルアルコール等を加えたもの、またこれを練りつぶしたものをいう。
  • うにあえもの…塩うに含有率15パーセント以上のものをいう。