水産研究本部

試験研究は今 No.218「北洋丸竣工する」(1995年3月17日)

北洋丸竣工する

  3月17日、稚内水産試験場で新しい北洋丸の竣工式が稚内サンホテルで挙行されます。
 
  現在の北洋丸は昭和49年に建造された275トン型のトロール船で、天皇海山漁場の開発や底魚資源調査、海洋観測などに活躍してきましたが、老朽化と最近の研究ニーズへの対応が不充分となってきたことから、今回更新され、新造船の運びとなりました。

  新しい船の船名を決めるにあたっては、場内及び各場から公募し検討しました結果、長年呼び親しまれたということで「北洋丸」に決定し、12月16日に命名しました。

  造船工事は室蘭市の楢崎造船所で平成6年10月26日から起工し、平成6年12月16日には進水式が行われました。

  その後、航海計器、漁携設備などの設置、艤装を行い、試験航海や漁携設備の調整、引渡し後3月10日稚内港に回航し、竣工の運びとなりました。

  ここで新北洋丸の概要を紹介しますがまず、本船の特徴としましては、1千メートルまでの着底トロールなどや科学計量魚探など最新鋭機器による漁業資源、海洋環境調査の拡充、海上における遭難及び安全の世界的な制度(GMDSS)に合致した国際航行可能な漁船、女性研究者や外国研究者が乗船可能な施設の装備であります。

本船の主要な特徴

全長:42.01メートル
登録長:35.70メートル
幅: 8.00メートル
深さ: 3.40メートル
船型 :船首楼長船尾楼付一層甲板船
総トン数:237トン
(国際):372トン
船舶番号:132878
船籍港:北海道稚内市
定員:26名
速力(最高):13.9ノット
速力(航海):11.0ノット
最大航海日数:20日間

主要設備

1:航海計器
磁気コンパス
ジャイロコンパス
オートパイロット
 レーダー
衝突予防支援装置
無線方位測定機
ハイブリッド航法装置
(構成:GPS、デッカ、ロランC)
気象衛星受画装置
音響装置
・浅海用計量魚探
・深海用計量魚探
・ドップラーソナー
・多層音波流速計
・潮流観測装置
2:漁労・甲板機械
油圧ポンプ
ウインドラス
トロールウインチ
ソリネットウインチ
袖巻ウインチ
捲揚機
測定ダビット
3:調査観測機器
CTD測定装置
測深儀
メモリーSTD
バイオテレメトリーシステム
高精度サリノメーター
水中テレビ
定置式潮流計
溶存酸素計
4:機関
主機関:1,600馬力
発電機関:270馬力
推進器:4翼可変ピッチプロペラバウスラスター
5:通信装置
GMDSS設備一式
(構成:MF・HF送受信機、ナフテックス受信機、レーダートランスポンダ、衛星系EPIRB、双方向VHF)
SSB送受信機・DSB送受信機
国際VHF送受信機
インマルサットM
インマルサットC

などが搭載されています。

  船内設備は、長期航海に対応した快適かつ衛生的で特にIMO船内騒音規制に適応した居住施設を有した明るい船内となっており、本船の特徴の一つである女性研究者や外国研究者の乗船に配慮した調査員室やシャワー室兼トイレなどの施設も備えております。(太平洋漁業海洋研究所「サフニー口」には、ズヴェリコワ副所長をはじめ女性の研究者がたくさんいます。)

  竣工式のあと、平成7年度からオホーツク海の海洋観測を処女航海として北部日本海、オホーツク海底魚資源調査などに従事する予定です。

  また、5月下旬から約2週間、サハリン東方海域においてロシアとのスケトウダラ系統群の共同調査を予定しており、早々女性研究者の乗船が見込まれています。

  竣工式の後、調査日程と調整を図りながら、宗谷及び、留萌支庁管内をはじめ網走支庁管内の港に入港し、漁業関係者や一般住民等に公開する考えでおりますので、ぜひお立寄りいただき、最新の設備を備えた北洋丸をご覧ください。

  最後に北洋丸の建造に参画された各メーカー各位のうち阪神大震災で被害をうけられた皆さんに心よりお見舞い申し上げますとともに甚大な被害の中、予定期日までに竣工いただきましたことに対して深く感謝申し上げ、一日も早く復興されますことを念じております。(稚内水産試験場 木村 環)