水産研究本部

試験研究は今 No.220「おもしろ水試」(1995年4月14日)

おもしろ水試

  前回は、「水産試験場施設事業あれこれ」と題して、他の都府県で最近完成した水産試験場の概要についてご紹介させていただきました。

  さて、今回はこれからの水産試験場から特に『開かれた水試』として一般県民に親しまれている熊本県と石川県の2県をご紹介させていただきます。

熊本県水産研究センター

  熊本県の水産試験研究機関として、以前県内4カ所に分散していた支場や分場を平成元年度に統合改築、熊本市から車で1時間半の、有明海に望む天草という風光明媚な場所に大きな施設を作りました。

  天草は観光地として知られていますが、観光客が素通りするところで、何か目を引く施設をつくらなければならないと、観光と水産の相乗効果を考えて作られたのがこの施設です。

  大型バスの駐車場まであり、公園の中にあるような水産研究センターは、外壁が傾いており、全景が船の形をモチーフにしたデザインとなっており、誰がいったい考えたのかという、目立つ水試となっています。

  このセンターの特徴は、展望広場のあるウォーターフロント公園や、ミニ水族館的な円形回遊水槽、ギャラリーなどの県民に開かれた水試としての機能を持ちかつ、新しい研究設備を積極的に導入したものとなっています。

  有明海は、零細な養殖を主体にした沿岸漁業者が多く、閉鎖性の海域であることから、種苗放流などの効果の把握や管理が他の県からみると容易であることがメリットとの職員の話であります。

石川県水産総合センター(うみとさかなの科学館)

  金沢市から能登半島へ直線距離で約90キロメートル、JRと"のと鉄道"を乗り継ぎ約4時間かかる港町の鳳至郡能都町字宇出津にこの水産総合センターはあります。

  このセンターの外観は未来的であり、上空から見ると、ゆったりと湾曲した屋根が銀色に光り、日本海の荒波と宇宙ステーションが合体したかのイメージを受ける建物です。

  このセンターは、県内の水産・増殖・内水面の各試験場と水産業改良指導所を平成6年4月に統合新設したものであり、建物の内部は、廊下沿いに実験室が並び、県民が自由に出入りして、ガラス越しに実験を見れるほか、別棟に「うみとさかなの科学館」があります。

  これは、海洋と水産業の自然科学知識の普及のため、水産総合センターと一緒に県が建設したもので、昨年度は1万人の入場者で賑わい遠足の新名所となりつつあるとか。

  科学館の前庭には池があり、そこには以前実際に海で活躍し、定年を迎えた県の試験調査船(約50トン)がドンと構え、自由に甲板に上がれ、そこで子供でも遊んでいれば、まるで孫と戯れるおじいちゃんのようでもあります。

  館内に入ると、すぐに体長10メートルはある骨と内臓だけの巨大なブリがお出迎え、切り身しか見たことのない現代っ子に魚の心臓がどこにあるかを判りやすく教えてくれます。

  続いては、魚とかけっこ。人間は、自転車に乗り、スタートボタンを押すと、マグロやブリがテレビの画面上で一斉に走り出し、自転車と競争して、ゴールを目指します。

  そのほか、コンピューターゲームを始め、自由に顕微鏡を使い魚の鱗などが観察できるなど趣向を凝らした展示物がありますが、ここの最大の売り物はオーシャンシアター。

  海賊ノット船長と助手の機関士スコンパーが23世紀からタイムマシンに乗って能登の海の宝物を探して皆さんと一緒に23分間の旅をするものです。

  大人でも楽しめますので、宝物が何かをぜひ能登半島にお出かけの節は立ち寄ってはいかがでしょう。

  今回は、2県の水試の普及広報的部分を特筆させていただきましたが、広報的な施設以外についても、研究への思い入れと、それと対する十分なこだわりが、感じられるとともに、それだけ水試に要求されている研究課題が大きいことが、よくわかる施設でした。

  北海道の水産試験場は、本年度完成する中央水産試験場を除き、昭和40年代前半に建設され、今後老朽化に伴い順次改築が必要となってきます。

  中央水試には、一般来庁者向けのギャラリーを設けておりますが、今後改築を必要とする水試についても、施設などハードのみならず、研究体制などソフト面についても『開かれた水試』を目指して検討中ですので、ご期待下さい。(水産部漁政課研究企画係)
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