水産研究本部

試験研究は今 No.226 「水産試験研究で広がる国際交流」(1995年6月2日)

水産試験研究で広がる国際交流

第10回 日ロ研究交流の開催

日ロ研究交流
  中央水産試験場で、5月10日から3日間の日程で日ロ研究交流が行われました。

  ロシアからは、サフニロ(サハリン漁業海洋学研究所)のズヴェリコワ副所長、カンタコフ海洋室長、サマトフ研究員の3名が来道しました。

  日本側は中央水試の関係者と稚内水試資源管理部の研究者が出席しました。

  この交流は、平成2年の11月から始まったもので、北海道(水産部)の水産技術国際交流事業として展開されています。

  北海道周辺の漁業資源を的確に把握し、管理していく上で、隣接するロシア海域の海洋や漁業資源データは、重要な情報です。このため、ロシア側でこれらの研究を行っている同研究所との交流が始まりました。交流は、相互招待方式により、毎年3名の研究者が1回ずつお互いに訪問し合い、それぞれの組織・機構や研究課題などについて相互理解を図るところから始まりました。そして、スケトウダラシンポジウムの開催や、共同調査に向けた協議などを進めて来ました。

  交流の初日は歓迎挨拶などに続き、昨年完成した飼育・実験棟を中心に庁舎の見学が行われ、スケトウダラ共同調査に関する打ち合わせから協議に入りました。

  2日目以降は、海洋の共同調査に関する打合わせをはじめ、スケトウダラ、ニシン、海洋に関する資料交換、栽培漁業関係の懇談等を行い、研修の打合わせや、次回の研究交流に向けた整理等も行われました。

  研究交流当初からの希望であったスケトウダラの共同調査については、昨年度からスタートし、今年は2年目の調査になります。これは、スケトウダラ系統群(産卵場、索餌、回遊など生活を共にする一つの群れ)構造の解明を大きな目標とした事業です。従来の脊椎骨数のような形態的特徴を調べる方法とは別に、新たに遺伝子のDNAを分析する手法が導入され、より詳細な系統群解析が期待されています。(5月24日からサハリンの研究者が稚内水試の研究員と一緒に新造の試験調査船北洋丸(237トン)で標本採集などを行っています。)

マサチューセッツ州訪問団の来場

  5月22日、北海道と姉妹州の米国マサチューセッツ州訪問団が中央水試を訪問しました。

  一行は北方圏センターが進めているハイテク等の科学技術研究交流の相手方で、北海道とマ州との交流を深め、その成果をチリ支援に活かそうというMIF(多国間投資基金)の共同プロジェクトにかかる協議を主な目的として北海道を訪問されました。メンバーはケイリー・グレン氏(共同研究のマサチューセッツ州側の契約締結相手先団体の会長)、フェルナンド・ケサダ氏、テリー・ベヴェルズ氏です。また、道庁知事室、北方圏センターの職員の方などを合わせて、7名が余市を訪れました。

  場長の歓迎挨拶の後、水試の概要と試験研究の重点課題などについて、説明を行いながら質問を受ける形で懇談が行われました。同州でもタラやカレイ類など、資源の減少が心配されているということで、北海道のヒラメ放流事業の効果に関する質問や、海洋に関する意見交換などが行われました。この後、新庁舎の主な実験設備などを見学して回られました。

トピックス

シラウオ生態調査始まる。

  中央水試の飼育棟(養殖技術開発室)では、現在シラウオが飼育されています。

  シラウオはシシャモやワカサギ等と同じサケ目(もく)に属し、高級魚として知られています。しかし、生態的にはナゾも多いため、将来の管理型漁業の確立をめざして、各種調査が行われています。

  今年は新たに完成した飼育棟の設備を活用し、観察用ビデオカメラを配置して、水槽内の行動が長時間撮影されました。その結果、産卵行動と思われるシーンも収録されました。また、調査の一環で、人工ふ化の予備実験(道立水産孵化場)も計画されているところです。(中央水試 企画情報室)