水産研究本部

試験研究は今 No.237「南方系バフンウニをお金に換えよう!」(1995年9月1日)

南方系バフンウニをお金に換えよう!

図1
  南方系バフンウニが「試験研究は今」に登場するのは、これが3度目です。No.184では“繁殖している”こと、No.216では“試作加工品の問題点”をそれぞれ取り上げました。そして、今回は、問題点を解決して「お金に換えよう!」とする取り組みについてお知らせします。

  このウニが何度か登場する理由は、減少する天然資源が多い中、道南海域を中心に繁殖し、加工品ができると新しい水産資源(お金に換わる水産物)となるからです。

  これまでの経過を振りると、平成3年頃からバフンウニが浜の問題になり、利用価値のない厄介者として「イヌガゼ」、「ニガ(苦い)ガゼ」と呼ばれるようになりました。平成5年には福島町のミニプラザで、本州では高級ウニ製品に加工されていることを紹介し、早速、粒ウニの試作を始めました。平成6年には本場山口県の加工技術を取り入れたが、苦味、身崩れ防止など多くの課題が残されました。その中で想定された粒うに(アルコールうに)加工上の問題点と要因を図1に示しました。たとえばアルコール量によっても身の固まり具合や色調が変化するなど、粒うにの加工技術にはいろいろな要因が複雑に交錯していることが分かります。

  今年度のバフンウニ加工試験は、加工品の問題点を一つひとつ解決しながら北海道独自の加工技術を確立するため「平成7年度 技術改良試験」として行っています。この試験の内容は、

1:原料及び製品比較分析

  本場とされる山口県産の原料や加工製品と道内産バフンウニの成分的な比較を行い、特に、“苦味の原因”について追及する。また、生殖巣指数(歩留まり)や苦味の継続的な調査を実施し、採取適期を把握する。

2:製造法別加工試作

  これまでの問題点を解決できる加工法を確立することからなり、漁業者に普及できる加工技術の確立のための検討資料の収集を行っています。

  それでは、本年度の途中経過を報告します。福島町浦和で採取したバフンウニの性状と一般成分を表1に示しました。6月調査のサンプルは昨年10月から当水試水槽で8ヵ月間飼育し、苦味が強く感じられた試料です。

  これら試料の成分を比較すると、環境あるいは時期により生殖巣成分の割合が大きく変化することが推測されます。そして、この割合の変動が粒ウニの味や色に影響すると思われ、採取に適当な時期を把握することが重要だと考えられます。

  また、今回は図2の加工法で試作を行い、剥き身を塩水へ長く晒(さら)したことで、身崩れとドリップの問題点は解決できたのではないか?と考えています。苦味や色調を含めた総合的な評価については成熟終了後に行う必要があります。そして、その経過を見ながら加工法に改良を加えていく予定です。

  最後に、この技術改良試験により、粒ウニ加工技術を確立することを最も望んでいるのは、私たち自身がも知れません。「バフンウニをお金に換えよう!?」は自らの尻を叩くためにつけた題名です。水産技術普及指導所と十分連携をとり、漁業者のみなさんの疑問に答え、浜に普及できる技術を開発する意気込みでやってます。どうぞご期待ください。(函館水試加工研究室 信太茂春)(函館水試専門技術員 伊藤雅一)
表1 バフンウニの性状と一般成分
採取月 6月*2 8月
殻径 41.8mm 44.2mm
全重量 29.6g 38.4g
水分 77.3% 63.1%
タンパク質 14.3% 21.5%
全脂質 5.9% 8.8%
灰分 2.3% 2.6%
グリコーゲン 0.2% 4.1%
    • 図2