水産研究本部

試験研究は今 No.243「スケソ博士のタラでダラダラ言わせて(パート3)」(1995年10月27日)

 -新造の試験調査船北洋丸装備の深海用ROV(自航式水中テレビ)で大水深域における人工魚礁へのマダラの蝟(い)集状況の経年変化を追跡調査-

スケソ博士のタラでダラダラ言わせて(パート3)

はじめに

写真1
  前回、前々回(試験研究は今、No.221、215)は、マダラの資源と生態の概略と、平成4~6年度に行われた、マダラ資源増大の一つの試みとしての試験構造物(人工魚礁)を使った「大水深域におけるマダラ保護・増殖場造成技術開発調査」の結果についてご紹介しました。

  今回は、後志支庁管内の島牧沖水深200メートル前後の海域に設置されている試験構造物へのマダラの蝟集状況の経年変化を調べるため、新造の稚内水試所属試験調査船北洋丸(試験研究は今、No.218参照、写真1)に装備された深海用水中テレビを使用して平成7年8月に行った、追跡調査結果についてお話しします。

深海用ROVについて

写真2
  北洋丸の自航式水中テレビは携帯用の機器で、船の前部甲板上に操縦装置、映像記録装置や母船(北洋丸)と水中テレビ本体との位置を確認する装置などを設置します(写真2)。本体は左舷(げん)から海面まで降ろされた後(写真3)、本体と操縦装置をつなぐケーブルを、重りをつけたロープに登山用金具でつなぎながら船から海底までまっすぐ降ろして使用します。

  通常は、船をアンカーで固定してから行いますが、今回は水深が深く、急斜面の海域だったため、船を微速で動かしながら目標物上を何回も往復して実施しました。


写真3

多数のマダラの蝟集を確認

写真4
  調査海域の海底には約200メートル四方の範囲に高さ10メートル規模の大型魚礁と3メートル規模の小型魚礁が2年前(平成5年8月)に設置されており、昨年の調査では1カ所当り1~3尾のマダラしか観察されませんでしたが、本年の調査では、1カ所の小型魚礁の内部や回りで8尾(写真4)、昨年ほとんど観察されなかった大型魚礁周辺でも多数のマダラが見られました(写真5)。

  2カ年という短期の追跡結果ですが、魚礁の設置年数の経過とともにマダラの蝟集量が増えていることが確認されました。
写真5

おわりに

  今回の調査は、北洋丸でのROVの習熟訓練を兼ねて実施し、実際の操縦は「プロ」の手ほどきを受けながら何とか映像をとることができました。まだまだ訓練期間が必要な段階ですが、今後もこうした調査に挑戦して、技術向上に努め、試験研究に役立てていきたいと思います。
(中央水試資源管理部 吉田英雄・稚内水試資源管理部 金田友紀)