水産研究本部

試験研究は今 No.246「地域のウニ資源の増大をめざして(Part2)」(1995年12月1日)

地域のウニ資源の増大をめざして(Part2)-羅臼町ウニ種苗生産センター-

  今回の浜ウオッチングは、根室北部地域のウニ資源増大を図るため本年3月羅臼町岬町に完成した「羅臼町ウニ種苗生産センター」を訪問し、管理責任者である羅臼漁協漁業振興部の石亀課長にいろいろとお話を伺いました。
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 まず、この施設を整備するに至った経過について教えてください。
 羅臼のウニ漁業は昭和33年に始まり、47年には殻付きで240トンを水揚げするなど安定した時期もありましたが、昭和60年代以降は水揚げが減少し、63年には低気圧災害によるウニ資源への被害もあって、近年は100トンを下回る水揚げ状況にあります。一方、当漁協ではウニ資源の増大対策として、深浅移殖事業や61年からは人工種苗生産にも着手し、小規模ながら種苗の放流を行ってきました。また、ウニ漁業者には操業日誌の記載を義務付けて、このデータによって各種資源管理対策を立てるなど、漁業者自らも資源管理に取り組んでいます。
今回の施設整備については、現在まで取り組んできた種苗生産技術を活かし、減少したウニ資源を一定程度まで回復させるため人工種苗を生産、放流し、併せて漁業者自らの資源管理体制の下で永続的に資源を利用しながら関係漁業者の経営安定に寄与するために、羅臼町が事業主体となり国の沿岸漁業活性化構造改善事業の補助を受け、総事業費約6億円をかけて平成7年3月にセンターが完成しました。

このセンターの概要を教えてください。また、他の施設にない特徴的なことがあれば教えてください。
このセンターは、鉄骨平屋建てで総面積2,591.5平方メートルあって、このうち7.5トン型水槽44基を収容する育成室、幼生飼育室及び餌料培養室を各2室、準備室、検鏡室、植継室、機械室、管理室で構成され、取水は知円別漁港外側の水深15メートル地点から揚水し、揚水した海水は各飼育水槽で使用する分を1次ろ過し、採卵・幼生飼育作業には2次ろ過を施して使用しています。また、屋外には出荷作業等に使用する2.5トン水槽14基を持ち、これらの施設で5ミリメートルサイズの種苗300万粒を生産します。このうち30万粒は標津町へ供給しますが残りは地元の天然漁場に放流し、最終的には殻付きで60トン、金額で1億6,000万円程の生産を見込んでいます。
  次に、特徴的なこととしては稚ウニの餌となるキートセラスを培養する際、他のところでは危険分散等のため5リットル容器で少しずつ培養作業を行うのに対し、ここでは作業効率面から3リットル容器での培養後、一気に30リットル容器での培養作業を行っていることと、道東では例のない越冬飼育を行うことが特徴的だと思います。

このセンターは何人で運営しているのですか?
この施設は羅臼町の施設ですが、漁協が町から管理を委託されており、現在漁協職員3名と若干の臨時職員で各種作業を行っています。また、種苗出荷時にはさらに2?3名の臨時職員を雇い入れて対応することにしています。

現在の作業状況を教えてください。

現在は9月に採苗した稚ウニを沈着幼生で約500万粒育成しており、順調にいくと来年4月ごろには計画どおりの5ミリメートル種苗300万粒が出来上がる予定です。

現在までの作業でご苦労されている点は何ですか?
なにぶんにもこのような大規模な施設で種苗生産を行うことが初めてのなで、稼動してからの作業全てが苦労の連続です。特に施設内で異常があった時は施設各所に設けてあるセンサーが感知後、自動的に自宅へ連絡が入るシステムとなっているため、最初のころはオチオチ寝ていられない状態が続き、慢性的な睡眠不足となっていました。また、先ほど話をしましたキートセラスの培養では、3リットル容器から一気に30リットル容器での培養作業を行ったため、その間日常の細かなチェックとともに技術的なテクニックを駆使しながらの作業の連続で、神経の休まる日が無く大変苦労しました。

最後に将来に対する抱負や希望がありましたらお聞かせください。
まず、来春の出荷時に向けて今飼育中の稚ウニを順調に育てて、当初計画どおり5ミリメートル種苗300万粒の目標を達成したいです。そして今後作るウニ種苗は1ミリメートルでも大きくし、活力のある種苗を効率的に作っていきたいと思います。そしてその結果が放流後の生残率向上につながり、やがては漁業者の生産向上と漁家所得の安定に結びつくことを期待します。

本日はどうもありがとうございました。(釧路水試企画総務部主査)