水産研究本部

試験研究は今 No.248「磯焼け対応システム開発事業について」(1995年12月15日)

磯焼け対応システム開発事業について

  近年、全国的規模で磯焼けによる漁業被害(アワビ等)が生じていますが、特に本道日本海海域の沿岸岩礁地帯では、コンブ等の有用海藻が消滅し石灰藻で覆われる磯焼け現象が顕著で、栽培漁業の推進や漁業生産などに深刻な影響を与えています。また、宗谷管内の利尻・礼文両島でも、磯焼け現象が進行し、コンブやウニ漁業にとって深刻な問題となっており、地元から実効ある磯焼け対策が要望されています。

  このため、これまで国、道の試験研究機関で行った事業成果を踏まえ、本道日本海海域に適した、有用海藻を回復させるための効率的なシステムの開発を行う、「磯焼け対応システム開発事業」が進められる事になりました。

  本事業は磯焼け地帯に広がる無節石灰藻を低コストで、かつ効率的に剥離(はくり)する手法を開発すること(海藻の着生基質造成)、さらに磯焼け地帯で海藻の発生、成長を阻害しているウニ類を効率的に取り除く手法(ウニの除去)などを開発して、海藻の繁茂を助長することによって、対象海域における漁業生産の回復に寄与することを目的に、(社)マリノフォーラム21と水産庁が企画したもので、道はこの事業に参画することによって本道海域に適した、技術開発を早期に実現し、漁場回復を図ることを狙いとしています。

  本事業の実施対象海域は、宗谷支庁管内の利尻島周辺海域で、平成7年度から8ヶ年計画でスタートしました。

  既存の石灰藻剥離手法(雑海藻駆除や磯掃除を含む)には、水中ブルドーザー方式・スパット船方式(バックホー)・ボトムスクレーパー方式・ウォータージェット方式・チェーン回転方式・重錘落下衝撃方式・ブラシ方式・フォークスキ取り方式・重量物摩擦方式などがありますが、いずれの手法も一長一短があり、これらに変わる手法開発を目指しております。また、既存ウニ回収手法としては、船上作業のタモどり・ダイバーによる潜水作業・ウニ篭による捕獲、回収があります。これらもまた効率性・経済性に問題があります。

  石灰藻剥離(海藻の着生基質造成)やウニ除去に係わる新機種の開発にはマリノフォーラム21の民間会員である(株)楢崎製作所、(株)エコニクス及び小松建設工業(株)が携わっております。

  稚内水産試験場は、これら課題に関連して行われる試験の事情調査と新機種の効果の確認調査を行います。

  初年度である平成7年度に稚内水産試験場が行った調査は、事前調査として、実験海域のウニ類の生息密度や海藻の繁茂状態などの現状把握調査とウニの捕獲道具の種類と餌の組み合わせによるウニの捕獲効率と蝟集効果を調査しました。

  実験海域として、磯焼けによって海藻類の生育がみられない、利尻町の沓形種富地区・仙法志神磯地区・利尻富士町の鴛泊港内地区、そして鬼脇石崎地区の4地区と対照区として海藻類の生育のみられる、仙法志神磯地区(上記とは別範囲)を設定しました。

  調査は、10月に、篭を入れる前のウニ類の密度や、海藻の現存量を調べました。

  ウニ捕獲調査は、3種類の漁具(既存の篭 写真1)を用いて、3種類の餌(コンブ、フシスジモク、サケ)について、それぞれ3篭づつの計27篭で調査を行いました(表1)。篭の海底設置時間は原則として24時間とし、引き上げた篭に入ったウニ類の個体数、重量、大きさなどを計数しました(写真2)。現在、、篭のタイプ別、餌の種類別による漁獲効率、蝟集効果について解析中です。
来年度からは、ウニ除去と石灰藻剥離に用いる新機種による性能実証試験が着手されることになります。(稚内水試資源増殖部 菊地和夫)

    • 写真1
    • 写真2
表1:ウニ捕獲試験の条件 数字は篭の数

篭の種類/餌の種類 コンブ フシスジモク 魚肉
Aタイプ 3 3 3 9
Bタイプ 3 3 3 9
Cタイプ 3 3 3 9
9 9 9 27