水産研究本部

試験研究は今 No.326「道南太平洋のスケトウダラの漁況予測」(1997年11月28日)

道南太平洋のスケトウダラの漁況予測

  噴火湾及び噴火湾湾口部は、太平洋側に分布するスケトウダラのもっとも重要な産卵場となっています。当海域では、産卵にやって来るスケトウダラを刺網を主体に、沖合底曳網および定置網によって漁獲しています。道南太平洋海域のすけとうだら刺網漁業の漁期は10~3月で、盛漁期は例年12~1月にみられており、漁獲物の組成は年齢5歳魚を中心とした4~6歳魚です。

  本種は胆振~渡島海域で重要な位置を占めている魚種の一つであり、室蘭支場では本種の漁況予測を30数年にわたって続けています。この漁況予測の内容は毎年10月に、普及資料「道南太平洋海域のスケトウダラ漁況について」として公表されています。現在用いている漁況予測の手法と手順について、平成9年度漁期の来遊資源量予測を例にとって説明します(図1)。
    • 図1
  まず最初のステップとして、平成8年度漁期の結果に基づいて、平成8年度の漁期はじめに存在したであろう資源量を推定します。これにはコホート解析という手法を用います。この手法は年齢別漁獲尾数の推移から、年級群ごとの漁獲率(資源に対して漁獲される割合)を解析し、これに基づいて漁期はじめの資源量を算出、する方法です。

  次のステッブとして、今年度の平成9年度の漁期はじめに存在する資源量を推定します。平成8年度の漁期はじめの資源尾数から、平成8年度の漁期中(10~3月)に漁獲された尾数と自然に死んでしまう尾数を差し引いたものが、漁期終了時における獲り残しの分となり、平成8年度の残存資源尾数です。平成9年度の予想来遊資源尾数は、平成8年度の残存資源尾数から平成9年度漁期が始まるまでに自然に死んでしまう尾数を差し引いて、新たに加入する4歳魚(平成5年級群)の尾数を加えたものとなります。最後のステッブとして、得られた来遊資源量に、過去の平均的な漁獲率をかけて、予測漁獲量を算定します。

  室蘭支場では平成6年度から4年間、上記の手法による漁況予測を行っています。その予想の精度に、いくつかの問題点が.あることが明らかになっています。この問題点とは、推定された資源尾数は最近年で年齢が若くなるほど、推定の精度が悪くなることです。ここでは平成9年度の4歳魚や5歳魚の資源尾数がもっとも精度が悪くなっています。またTAC制の導入によって、新たな問題点が生じる可能性があります。それは漁獲量の上限が設定されることによって、漁獲のされ方が従来とは異なってしまう可能性があり、漁業情報だけに頼ったこの手法では、推定が偏たってしまう恐れがあることです。

  では今後のスケトウダラの漁況予測は精度が悪くなる一方なのでしょうか。でもご心配なく、もう手は打ってあります。当支場では北辰丸やおやしお丸に搭載している計量魚探を利用して、平成6年度からスケトウダラの魚群量を把握する調査を実施しています。この調査の利点は、なんといっても調査海域に分布する魚群量が漁業を介しないで、直接的に把握できることです(図2)。この調査によって得られた分布量を経年的に比較することによって、相対的な資源量動向が把握できます。さらに計量魚探調査の結果と従来の手法を組み合わせて補正しあうことによって、相互の推定精度を高めることも可能であると考えます。ただし新しい手法の導入については、あと1~2年のデータの蓄積が必要と考えていますので、もう少々お待ち願います。
    • 図2

(函館水産試験場室蘭支場 三原 行雄)