水産研究本部

試験研究は今 No.340「平成10年度新規研究事業の紹介」(1998年4月10日)

平成10年度新規研究事業の紹介

  早いもので「試験研究は今」の発行を開始して10年目を迎えました。これからも身近な試験研究機関として、ホットな話題を沢山提供していきます。

  さて、今回は10年度の第1回号なので、10年度に水産試験場と水産孵化場が新たに取り組む研究事業とマリンネット北海道の紹介をします。

水産試験場

1.ハタハタ産卵回帰群生態調査
  ハタハタは現在高級魚となっており、えりも以西・噴火湾海域では、10年ほど前から各地の漁協で浜に打ち上げられたブリコ〈ハタハタ卵)を回収し、漁港内で自然孵化を行ったり、人工授精及び放流等が行われています。しかし、この海域のハタハタについては産卵期以外の生態の知見が乏しく、適正な漁獲時期の設定や資源管理を実施できないことからハタハタの資源管理に向けて、操業実態や産卵藻場の状況、回遊経路解明に向けた標識放流などの調査を行います。なお、この課題は9年度の試験研究プラザの調査研究に引き続き、新たな研究事業として取り組むことになりました。

(函館水試及び室蘭支場)

2.カラフトマスの付加価値向上試験
  カラフトマスは主にオホーツク沿岸で漁獲され、「安くて小さいサケのイメージが強く、その多くは缶詰や筋子に加工されていますが、これ以外の加工製品はあまり開発されていません。
  カラフトマスはサケに比べて、脂の乗りが良く、色も良い特徴があることから、これを生かして付加価値向上を図るため、加工原料の特性や加工適正の試験を行い、カラフトマスの特徴を生かした加工技術や製品開発に取り組みます。
  網走管内ではカラフトマスを「オホーツクサーモン」と命名し、イメージアップを図り、消費拡大PRを図っているので、水試としても技術開発の面でバックアップしていきたいと考えています。

(網走水試紋別支場)

水産孵化場

1.急病ウイルス対策事業
  内水面養殖業者が魚の飼育で最も気を使うのは病気、特にウイルスの問題です。

  急病ウイルスは変異しながら強毒化し宿主を変えていきます。IHNウイルスではベニザケからニジマスヘ、さらにサクラマスヘと感染する魚種を変え、また、稚魚から成魚へとサイズを変えながら強毒化し、被害も甚大かつ多様化するなど、ウイルスは非常にやっかいな相手です。

  艀化場では9年度までは「サクラマスのIHNウイルス水平伝染制御試験」と「ニジマスのヘルペスウイルス解明試験」を行ってきており、これらの試験結果を踏まえて、10年度から新たに急病ウイルス対策事業として取り組みます。

  この内容はかなり専門的になりますが、IHNウイルス遺伝子の構造や、ウイルスが宿主を変えていく際の強毒化の機構解明、水平伝染を制御する物質の飼育規模での有効性確認などを行います。

マリンネット北海道整備事業

  今年からいよいよマリンネット北海道の整備が開始されますので、その概要をQ&Aで紹介します。

Q:マリンネりト北海道って何なの?
A:マリンネット北海道とは水試や艀化場を中心として、普及指導所や支庁、道、全道の各漁協をコンピュータで結ぶ試験研究情報システムのことで、名前は知事公約の事業名を使っています。
Q:なんのために整備するの?
A:ひとつは、水試や艀化場が急速に進んでいる高度情報化社会に対応するとともに、ますます多様化する研究二ーズに応えていくために、マリンネットを整備し、各種の情報収集やデータ処理、解析などの研究業務効率化などを目的としています。もうひとつは、水試等が持っている多くの情報のうち、漁業者や加工業者の皆さんが必要とする研究情報等を提供することと、各漁協が支庁や水試に報告している水揚げ報告やTACの報告業務をこのシステムの活用により自動化し、漁獲報告業務を省力化することにより、漁協や水産関係者に役立つことを目的としています。
Q:マリンネットはどこをネットワークするの?スケジュールは?
A:マリンネットは全道の各水試と支場、艀化場と支場、全28普及指導所と各支庁、道、道内の全漁協123箇所をコンピュータのネットワークで結ぶ計画です。10年度は水試・艀化場・指導所の全部と道にパソコンを整備し、漁協には道単の補助事業で10年度から3年計画そ全漁協に整備してもらいたいと考えています。10年度は石狩、檜山、十勝、網走管内の全漁協に整備する予定です。
Q:どんな情報が提供されるの?
A:人工衛星からの毎日の海の大気図や波浪図、水温分布などの海況情報やホタテガイのラーバの分布情報や採苗状況などの養殖技術情報、貝毒プランクトン情報、栽培漁業の各種情報、内水面情報、加工技術の情報検索、水試の各種研究報告、水産統計情報などを漁協に提供し、また、インターネットでも見られます。
Q:もっと詳しい説明はあるの?
A:5月以降に全道の各地区ごとに漁協への説明会を開催したいと考えていますので、よろしくお願いします。

(栽培振興課 研究企画係)