水産研究本部

試験研究は今 No.345「シシャモふ出仔魚降海調査について」(1998年5月29日)

シシャモふ出仔魚降海調査について

  シシャモは、道東沿岸の漁業者にとって貴重な収入源(平成9年釧路海域:水揚げ金額9億5千万円/90隻)になっております。漁獲量は昭和63年に過去最低を記録しましたが、平成元年以降は1,000~2,200トンの間で推移し、平成9年には28年ぶりに2,000トンを越えました。

  釧路水試では、漁業生産の計画性を高めるための漁況予測(漁期前調査)と産卵親魚確保のための遡上期予測(漁期中調査)を実施しています。さらに、最近は遡上河川内での産卵親魚量の推定や資源変動の予測のために、釧路川でシシャモふ出仔魚降海調査を行っています。今回は、調査の真最中であるふ出仔魚の降海調査について紹介します。

  調査は毎年4月上旬から約5日間隔で、釧路川河口の橋の中央部で午前2時・4時・6時の3回、北太平洋標準プランクトンネットを用いて、川の表層を一定時間曳網してシシャモのふ出仔魚を採取するものです。

  図1に、平成6年から10年(調査継続中)までのふ出仔魚の降海量を示しましたが、仔魚が海へ降海する時期や量は年によって異なっています。平成9年までの結果では、降海量が最も多かったのは平成8年で、逆に降海量が少なかったのは9年でした。従来から、春の仔魚の降海量と前年秋の川底の産着卵数には相関があるといわれています。産着卵数が多ければ、仔魚の降海量も多くなるということです。従って、仔魚を多くするためには川底の産着卵数を多くすることが必要であり、資源の取り残しである産卵親魚の確保が最も重要なことになってきます。
    • 図1
  しかし、平成9年仔魚の降海量が過去最も少なかったのですが、前年秋の「人工ふ化用親魚捕獲事業」などから判断すると産卵親魚の遡上量は決して少なかったわけではありません。なぜ、降海量が少なかったのか、今のところその原因は解っていません。

  ところで、仔魚の降海量が増えると資源はどうなるのでしょうか?。図2は、仔魚の降海量と翌年の2年魚の漁獲量との関係を示したもので、仔魚の降海量が多いと翌年の2年魚の漁獲量も多くなるという関係がありそうです。つまり、資源の取り残しが多ければ産着卵数も増え、仔魚の降海量も増え、さらに、翌年の2年魚の漁獲量も増えるということです。実際の漁獲量はこれに前年の取り残し分(3年魚)も加わるので、さらに増えることになります。
    • 図2
  過去、最も降海量の多かった平成8年のふ化仔魚は、翌9年に2年魚として釧路海域の漁獲量824トン(釧路・十勝海域:1,906トン)を支えるものとなりました。平成10年の調査は現在継続中ですが、降海量の多かった平成8年を既に上回っており、平成11年のシシャモ漁に明るい材料を与えてくれています。一方、平成10年のシシャそ漁はというと、平成9年の降海量が少なかったことから、2年魚の量に不安が残る結果と考えざるをえません。しかし、平成9年の操業では産卵親魚が遡上する前に終漁したことから、3年魚(取り残し量)には期待が持てそうです。

  ふ出仔魚の降海調査からはシシャモ資源の変動について多くの情報が得られつつありますが、ふ出仔魚の量化や仔魚を産んだ親無量との関係などわからないことも多く残されています。シシャモ資源の維持・増大に向けて、資源の管理手法をより良いものにするためには、このような調査を継続して行うことが重要と考えております。

  霧の多くなる釧路ですが、日の出を見られる日を楽しみに、今年の残りめ調査を続けたいと思います。

(釧路水試 資源管理部 森 泰雄)