水産研究本部

試験研究は今 No.350「ニシン中間育成、放流について」(1998年7月3日)

「ニシン中間育成、放流について」

はじめに

  平成8年度から始まった日本海沿岸性ニシン資源増大プロジェクトは、3年目となり、種苗放流は昨年の40万尾から、新たに稚内を加えて100万尾が予想されています。今年も2月から3月にかけて、厚田、留萌、稚内の各地先の親魚を用いて採卵が行われ、必要量の受精卵が確保できました。受精卵はその日のうちに栽培公社羽幌事業所に輸送し、そこで艀化、飼育された後、再び各地先に設置された生け簀に収容し全長70ミリメートルまで中間育成を行い、放流されます。この中間育成、放流部分を主に担当する石狩、留萌南部、留萌北部の各地区水産技術普及指導所及び関係する水産業専門技術員では、これらをニシンに係る広域普及課題と考え、平成9年の結果から問題点等について検討、整理を行い、平成10年以降の課題を取りまとめましたので、それらについて紹介したいと思います。

平成9年中間育成、放流結果から

  中間育成期間中(3~4週間)の生残は、各地区とも95パーセント以上でしたが、成長は一部の地区を除き、目標サイズの全長70ミリメートルに達しませんでした。生け簀網のよごれがひどく、3日毎に掃除が必要な地区もあり、また、中間育成期間が地域の基幹漁業であるホタテの採苗時期と重なるため、負担の大きい地区もありました。施設の管理面からは、生け簀の大きさや構造、網地の目合い、設置場所についてや、収容密度と成長の関係(適正収容密度)についても問題が出されました。

  放流時期は、全長70ミリメートルに達した時点でいいのか、あるいは限界といわれている水温18度に達する前に行うべきなのかの明確な基準がなく、放流適地についての十分な知見もありません。さらに、中間育成が3週間から4週間の期間必要なのか、数日間の馴致で変えられないのか、あるいは全く中間育成を行わないで放流する直接放流ではどうなのかといった意見が出されました。

平成10年中間育成、放流

  栽培公社羽幌事業所で全長50ミリメートル程度まで育成された稚魚は、5月下旬から各地先で中間育成後、6月中旬から順次放流されます。

  各水産技術普及指導所では、平成9年の検討結果を関係機関と協議し、今年は次の課題を設定して、中間育成、放流を行うことにしました。
  1. 生け簀への収容数を変えて密度別試験を行い、適正収容密度を求める。
  2. 生け費網地の目合い大型化の予備試験として2重網試験を行う。
  3. 中間育成放流との放流効果を比較するため直接放流を行う。また、放流適期の検討は、今後水産試験場の研究課題として、取り組む予定となっています。
  ニシンプロジェクト中間年にあたる今年は種苗の大量放流における中間育成作業の軽減を視野にいれて、中間育成、放流を実施します。2年続いての沿岸ニシンの豊漁や放流種苗が確認されるなど、放流効果への浜の期待は大きい中で、基礎的資料の収集は今後も重要と考えます。
    • 中間育成用生け簀への収容写真

(稚内水産試験場 主任水産業専門技術員 柿下浩二)