「クローンヒラメの偽雄精子を永久保存」
クローンヒラメの作り方
偽雄クローン

平成9年度に作出したクローンヒラメの一部の魚に、雄性ホルモンを与えて雄にしました。これをニセオス(偽雄)といいます。遺伝的には雌なのに、通常の雄と同様にりっぱ(?)な精子を作ります。その偽雄が今年成熟しましたので、さっそく精子を採りました(写真1、2)。
偽雄クローンを作りますと、雌のクローン魚と普通に交配するだけでクローンが出来ます。クローン系統を効率よく維持するために、偽雄クローンを作ることは不可欠の技術です。しかし毎回偽雄を作るのは、手間の掛かる作業です。
クローン系統の保存
精子の長期保存

数年前に「ヒラメ・カレイ類の精液の長期保存法」について検討しました。精液をリンゲル液等で希釈した後、プラスチック製のストローに封入(写真3)して凍結するか、あるいはドライアイス(-80度)上で球状に凍らせた(写真4)後、液体窒素中に保存することで、解凍後にかなり高い精子活性が得られました。
今回行ったクローンヒラメの偽雄精子を用いた長期保存法でも、リンゲル液と凍結保護剤の混合液で5倍希釈した精液を、ストロー法又はペレット法で液体窒素中に凍結保存しました。その精子を解凍し、未受精卵に媒精後孵化率を調べました。表に示しましたように、1グラムのクローンヒラメ未受精卵に、ストロー1本又はペレット1個(希釈精液0.25ミリリットル)分の精液を受精に使用しましたところ、ストロー法、ペレット法ともに孵化率に若干ばらつきはありますが、クローン系統の保存には充分使用出来る結果が得られました。この様にクローン魚の精子を、活性を保った状態で保存しておけば、必要な時にあるクローン系統を復活させたり、あるいはクローン同士を交配(ヘテロ型クローン)させることも可能です。
クローンヒラメの利用
クローンヒラメを養殖に利用することはもちろんです。しかしそれだけでなく、遺伝的に均質なクローンは、増養殖研究における「実験魚」としても非常に利用価値の高いものです。凍結保存された偽雄精子が、今後益々有効活用されることを期待しています。
(中央水産試験場 資源増殖部 齊藤節雄)