水産研究本部

試験研究は今 No.390「桧山海域のスケトウダラ来遊資源量予測について」(1999年7月2日)

桧山海域のスケトウダラ来遊資源量予測について

スケトウダラ共同研究について

  函館・中央・稚内水試は道西日本海におけるスケトウダラ産卵群の分布・移動を解明することを目的として1996~1998年の3年間、北大水産学部と共同研究を実施しました。稚内水試の「北洋丸」を運航し、科学計量魚群探知機(ノルウェー・シムラッド社 EK-500;以降、計量魚探とする)を使用してました。このうち、桧山海域の1998年度の調査結果の概要とその結果等から判断した1998年度漁期の漁況予測及び実際のスケトウダラ漁況について簡単に報告します。なお、3カ年の調査内容・結果の詳細について関心のある方は、近々発行される共同研究報告書を参照してください。
 

漁期前計量魚探調査結果

  図1にこの調査で観測された海面1平方マイル当たりの魚探反応の強さ(SA)を示しました。この図をみると判るように桧山沿岸域には強い反応がありました。この反応量は1997、1998年の同海域の反応量を大幅に上回っており、調査を行った3年間の中では最もスケトウダラ産卵親魚の来遊量が多かったと推測されました。また、この調査時に行った中層トロールによる漁獲物調査では、昨年よりも魚体が一回り大きくなっていることも判りました。ただし、沿岸域の水温が水深200メートルで昨年より約1度高かったこともあり、スケトウダラの分布層は昨年よりやや深い400~450メートルとなっていました。
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    • 図1

1998年度漁期の漁況予測
これら漁期前調査の結果及び前年度漁期の漁獲物調査の結果(図2)から、次のような予測を行いました。

  • 漁獲物は6・7歳魚が主体となり、1997年度よりもさらに大型個体の占める 割合が増加する。
  • 1997年度よりも桧山海域における産卵親魚の来遊量は多いと推測されるが、沿岸域の水温が高いため、漁獲水深が深くなる可能性がある。
  • 1998年度は沖合域にもかなり魚探反応があったため、漁期後半にかけても比較的安定した漁獲が得られるものと考えられる。

実際の漁況

  1998年度のスケトウダラ延縄漁業の漁獲量は約10,900トンで、昨年度を約35パーセント下回りました。とくに漁期中盤~後半にかけての漁獲量は良くありませんでした。なお、漁獲物は尾叉長41センチメートル、年齢7歳にモードがあり、昨年度よりやや大型で高齢魚が主体となっていました(図2)。漁期前調査では、1997年度以上の反応があり、来遊資源量は1997年度以上にあったものと推測しましたが、来遊量の増加が漁獲量に結びつかなかった様です。この要因として、以下の点が考えられます。
 

  • 時化の日が多く、出漁日数、延べ操業隻数ともに1997年度を約2割下回った。
  • 水温が1997年度よりもやや高かったた め、産卵水深が深くなり漁獲効率が低下した。
  • 雌雄とも生殖巣の成熟が1997、1996年度よりも早かったこと(図3)や漁獲 効率が落ち込むのが早かったことから、産卵盛期が過去2年よりも早かったと推測され、餌に対する反応が鈍るのも 早かった。
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    • 図2
    • 図3

  なお、スケトウダラ延縄漁業者の話では、漁船のカラー魚探にはかなり反応がみられたが、反応の割には針掛かりが悪いとのことであったため、来遊資源量が過大評価された可能性はないものと考えています。

  せっかく大漁を期待した漁師の皆さんには残念な結果となってしまいましたが、1998年度は産卵に参加できた親魚の数はこの3カ年の中では最も多かったものと考えられますので、少しでも多く次世代が生き残って数年後に戻ってきてくれることを期待します。

 

(函館水試資源管理部 武藤卓志)