水産研究本部

試験研究は今 No.408「ホッキガイ稚貝が大量に見つかる」(1999年12月10日)

ホッキガイ稚貝が大量に見つかる

はじめに

  9月20日、豊浦町礼文地区でマツカワの試験放流(水深5メートル)を行いました。放流はスキューバ潜水で行い、同時にマツカワの潜砂状況も観察しました。このとき潜水者が海底に大量のホッキガイの稚貝を見つけました。この揚所では一昨年も同じ調査をしましたが、その時には稚貝は全く見られませんでした。この場所はホッキガイ漁湯ですが、過去2年間は1トン前後の漁獲で資源量もかなり少ない状況です.漁協、町からの要請もあり、早速稚貝の生息量調査を計画して、10月18日に実施しました。

調査方法

  調査場所は礼文漁港から豊浦港までのホッキガイ漁場に5線を設定(図1)し、水深3メートル~15メートルまでの海域で分布調査を行いました。調査には、1/20平方メートルのスミスマッキンタイヤー型採泥器(以下、SM)を用い、採泥したものを目合1ミリメートルの篩(ふるい)にかけ、ホッキガイ、バカガイに分けて計数し、殻長を測定しました。
    • 図1

調査結果

  稚貝の分布状況を図2に示しました。稚貝は、茶津から丸山にかけての水深5~7メートル線を中心に分布しており、水深3メートルでは少なく、11メートル以深では全く採集されませんでした。また高岡では水深3メートルと5メートルで若干見られただけでした。分布密度は丸山の水深7メートルでSMl回当たり990個(19,800個/平方メートル)で最も多くなっていました。SMl回当たり500個を越えた点は2地点で、100個以上であった点は5地点でした。1994年に苫小牧海域で卓越発生群が報告されていますが、その際の最高密度は759個(15.180個/d)でしたので、今回はそれをしのぐ量となっていました。バカガイの稚貝発生はホッキガイに比べるとかなり少ない状況でした。茶津から大岸の水深3メートルを中心とする浅い湯所に分布し、最高分布密度はSMl回当たり21個(4,290個/平方メートル)でした。ホッキガイ稚貝の殻長組成(図3)を見ると、殻長2ミリメートル台に中心があり、最大で14ミリメートル台でした。この時期の当年貝としては比較的大型の個体が多く見られたのが特徴的でした。また殻長1ミリメートル台は、篩の目合から抜け落ちていることが考えられるため、もっと小さな貝が発生している可能性もあると思われます。
    • 図2
    • 図3

おわりに

  今回の発生は、分布範囲が狭いこと、分布水深が浅いことから、これらが順調に生き残れるかは疑問であり、今後この稚貝の生残や成長を追跡して、継続した調査を実施する必要があると思います。

(函館水試室蘭支湯主任専技・増殖科・室蘭地区水産技術普及指導所)