水産研究本部

試験研究は今 No.411「津軽海峡で沿岸環境をモニタリングする」(2000年1月21日)

津軽海峡で沿岸環境をモニタリングする

  近年、渡島管内の沿岸では、ホタテ採苗不振、孔あきコンブ、ヒトデの異常発生など、海洋環境の変化が漁業生産に大きな影響を与える問題が多発しています。このため、大学や研究機関に依存するだけでなく、漁業者自らも前浜の環境を把握しようという機運が高まり、漁海況予報のため漁協、町村のほか指導所、水試、大学なども加えたネットワーク構想作りが、噴連協、水産課長会などを核に進められています。

  その一環として、渡島南部地区水産業改良普及推進協議会(2町1村8単協)が中心となり、渡島南部水産技術普及指導所と函館水試が協力して、津軽海峡東側の沿岸漁場の環境をモニタリングするため、1999年5月より12月まで毎月1回、水温と塩分の海洋観測を始めましたので、その概要を報告します。
    • 図1
  観測定線は第1図に示したように、小安から椴法華にかけての5定線、距岸2キロメートル以内で、水深は小安~古武井で30メートル、椴法華沖は岸深なので50メートルまで観測しました。使用器具はアレック製メモリーSTDです。

  観測結果については、函館水試が簡単な解説文をつけて、指導所がその都度、管内の漁協と町村に知らせていますが、5~12月の水温・塩分断面図を月順に並べたものが第2図です。5定線すべてを載せるスペースがありませんので、最も西寄りの小安沖にしました。
    • 図2
5月:冬季の鉛直混合が終わった頃で、上下の水温差は小さく、約9度であった。
6月:やや昇温し始めた頃で、表面で14度、底層で12度以下であった。
7月:水深20メートルまで15度以上の水帯になっていた。
8月:表面は23度以上と猛暑を反映して高水温になっていた。
9月:表面水温はこの年最高の24度以上となり、水温躍層も顕著に形成された。
10月:水温の下降期に入り表面水温は20度に下がったが、水温躍層もなくなり、底層は19度台で、この年の最高水温になっていた。 
11月:さらに冷却され、表、底層とも16度であった。
12月:表、底層とも約14度に下がった。

  塩分値は春の雪解け水や大雨の影響で、表面付近がやや低塩分になったことがありますが、ほぼ33.8~34.3でした。この小安沖は汐首岬の西側にあり、津軽暖流の影響の強いところで、5定線のなかではもっとも高温、高塩分になっていました。

  1999年の夏は函館海洋気象台が観測を始めて以来の最高気温を観測した暑い夏となりましたが、5~12月の観測期間を通して表面水温は高め(1~2度)に経過しました。

  このほか、ほぼ定線観測の位置で水深3、10、20メートル層に2時間間隔で水温を連続観測できるメモリー式水温計を設置し、半年毎にデータを回収することにしています。5~10月分については現在解析中であり、結果はまたの機会にゆずります。

(函館水試資源管理部 渡島南部水産技術普及指導所 渡島南部地区水産業改良普及推進協議会)