水産研究本部

試験研究は今 No.413「1999年北海道海域の海況、漁況(浜からの便り)」(2000年2月4日)

1999年 北海道海域の海況、漁況(浜からの便り)(各地区水産技祈普及指導所からの情報より)

  1999年の夏は全道的に猛暑に見舞われ、海水温も各地で異常に上昇しました。このため地区によってはホタテガイやウニに少なからず被害を与えました。真冬のこの時期になって夏の暑さを人間の体の方はすっかり忘れてしまったようですが、海の生き物にはまだまだ後適症が残されているようです。そんな異常な夏の暑さも含め昨年の北海道沿岸の海況、漁況を各地区指導所からの情報をもとに整理してみました。

1.沿岸の海況

これについて全道的に整理すると…
  • 水温は夏季までは各地ともむしろ例年より低く推移したが、夏季から秋季にかけては逆に記録的な高水温になったこと。
  • 局地的には3月下旬、波島東部地区での暴風雪、7~8月の日本海各地の大雨による泥流被害、また、釧路西部地区では3月中旬に12年ぶりに流氷が接岸したことなどが挙げられます。

2.海域ごとの漁況

  次に各地の漁況を海域ごとに整理してみました。

(1)日本海(稚内~福島)
  • 留萌管内が主産地であるホタテ椎貝の採取は概ね良好であったが、夏季の大雨、高水温等により採苗作業が大幅に遅れた地区もあった。
  • ウニ類の生産は各地とも餌料海藻が比較的良好であったためか、身入り、生産量とも増加した地区が多かった。しかし、その一方で、夏季の高水温等の影響により水揚げが大幅に落ち込んだ地区も見られた。
  • 沿岸のニシン漁は今年も好漁で稚内、留萌、石狩管内合計で180トンを越えた。
  • その他の魚種では昨年と比ベスルメイカ、ヒラメが比較的好漁、サクラマス、ホッケ、秋サケは不漁であった。
(2)津軽海峡~噴火湾(知内~鵡川)
  • 天然コンブは汐首岬以西、津軽海峡側の著生は比較的良好で生産も例年並みだったが、汐首岬から噴火湾にかけての主産地は記録的な大減産となった。
  • 噴火湾のホタテ採苗は3年連続の不良であった。今年度は特に噴火湾胆振側が不良であった。
  • 夏場の高水温により一部地域でエゾバフンウニが大量にへい死した事例があった。被害の少ない地区でも身入不良などの影響を受けている。
  • 前浜のスルメイカ漁は昨年に比して水揚げ量は増加したが、低価格のため金額は昨年並みであった。
  • 秋サケ漁は全般的に不振であったが、渡島東部地区ではそれに替わってブリやサバが大量に水揚げされた。
  • 噴火湾のスケソウダラ漁は11月頃より好漁が続いている。
(3)太平洋(門別~根室)
  • ミツイシコンプはごく一部地域を除き大減産、ナガコンブは生産量は昨年並み~やや減少ながら、価格の高騰により金額で事業計画を上回った地区が多かった。
  • 秋サケは釧路東部、根室では昨年より漁獲量が増加、漁獲金額も大幅に増加したのに対し、釧路西部以西は漁獲量が減少、特にえりも岬以西では極度の不漁であった。
  • 釧路沖のサンマ漁は漁場が東寄りに形成され低調であった。
  • 日高沖のスルメイカ漁は漁獲量、金額とも低調であった。
  • 日高~釧路のシシャモ漁は豊漁年に該当している地区が多かったにもかかわらず全般的に予想よりも不漁であった。
  • ハタハタは全般的に不漁であった。
  • 日高管内では全般的に餌料海藻が少なく、ウニの身入りが悪かった。

(4)オホーツク海(別海~稚内)
  • 秋サケは根室海峡部では豊漁、オホーツク海では地域格差が大きかったが、全体としては前年を下回った。価格は全道的な不漁を反映し高価格で推移した。
  • 地撒きのホタテガイは昨年の台風時の土砂流出被害により減産となった地区もあるが、各地ともほば計画量を達成した。ホタテ稚貝の生産も概ね順調であった。
  • サンマは例年になく回遊量が多く漁獲が大幅に増加した。
  • 根室海峡から知沫半島にかけてのウニは生息密度が高い一方、餌料海藻が少なく、身入りが極端に不良であった。

3.珍種、奇種の出現

  各地からの報告ではやはり暖流系の魚介類が長期間、かつ広範囲に出現した年でした。

  ブリ、シイラなどは根室~十勝を除く各海域で報告されました。北海道ではちょっと珍しい暖流系魚種としてはクルマエビ(檜山北部)、カンパチ(室蘭)、トラフグ(日高西部)が漁獲されました。また、一年を通して暖流の影響がほとんどない十勝~根室半島の海域でもカジキの漁獲が大幅に増加(広尾)、ウミガメが大量に確認(釧路西部)、マンボウの漁獲(根室半島)などの現象が見られました。

(水産林務部栽培振興課 主任水産業専門技術員 坂本樹則)