水産研究本部

試験研究は今 No.420「中央水試研究部の近況報告」(2000年4月10日)

中央水試研究部の近況報告(上)

  今回は、資源増殖部、資源管理部、海洋環境部の近況をお知らせします。
  なお、水産工学室、加工利用部については、今月中にお知らせする予定です。

資源増殖部

  ニシンはどんな場所に産卵するのでしょう?

  今年もニシンが産卵にやってきました。ニシンの卵は粘着卵といって、物に付着するように産み付けられることは良く知られています。現在、石狩湾の北側から留萌周辺で産卵しているニシンの群は、主に、スガモやホンダワラ類といった海藻に産卵していることが分かりました。しかし、産み付けられた卵を海岸で探してみると、その様な海藻があれば何処にでも産み付けられるという訳ではありません。

  厚田村の嶺泊地区にある平磯上の藻場では、今年で3年連続して卵が産み付けられているのが確認されました。しかし、その近くで同じ様な海藻が生えているのに産卵されない藻場があります。そこで、これらの藻場を比較することで、どの様な条件の場所にニシンが産卵をするか、を明らかにしようと観察・調査をしています。

  まず、1月に、平磯に水温・塩分計を、産卵場の沖に波高計を設置しました。海況と産卵の関係をつかむためです。2月上旬からは、週に1回、藻場調査を行い、産み付けられた卵の有無やその数、卵の状態などを観察しています。これらの調査は、5月の連休明けまで続けられます。

  同時に、産み付けられていた卵を試験場に持ち帰って実験室で飼育しています。孵化まで飼育して、その結果から、産み付けられていた卵が受精した日を推定します。

  この藻場調査が終わって、6月になると、今、採卵、孵化が終わり、育成されている種苗が放流されて、放流後の調査や天然の稚魚の生態調査が始まります。

  中央水試資源増殖部には、4月の人事異動で、栽培センターでニシンの種苗生産の研究をしていた高畠研究員が配属され、研究が一層進むことと期待されています。

(中央水試 資源増殖部長 宮本 建樹)

資源管理部

コウナゴ(イカナゴ)資源調査あれこれ
  後志地方の雪解けもようやく進み,コウナゴ漁の季節が近づいてきました。高級なシラスの原料となるコウナゴは,豊漁,不漁の波が大きく,春は漁業者やシラスの加工業者の皆さんが気をもむ時期でもあります。水産試験場では,コウナゴの漁況予測を目指して,昨年から後志南部地区水産技術普及指導所と共同で,島牧~寿都海域でのコウナゴの資源調査を開始しました。興味深いことがいくつかわかりましたので,紹介します。

1.ふ化時期が判明!
昨年の漁期前半に獲られたコウナゴは3月上旬から中旬にふ化したものと推定されたのに対し,漁期後半に獲られたものは4月上旬から中旬にふ化したものと推定されました。すなわち,昨年はふ化時期の異なる2つの群が漁獲の対象となり,漁期中に群の入れ替わりがあったと考えられます。

2.コウナゴはどれぐらい成長するのか?
昨年は,漁期中に5日で3~4ミリメートル,1日当たりに換算すると0.6~0.8ミリメートル成長したと考えられます。

3.島牧で親魚を採集!
今年の1月下旬から3月下旬に,島牧村木巻岬西沖約1マイル,水深30メートルの海域で,親魚の採集を試み,1月下旬から2月下旬に産卵直前の親を採集できました。

4.中央水試でふ化を観察!
今年の1月28日に採集した親を用いて人工授精を行い,中央水試でふ化実験をした結果,平均水温8.2度で,受精から25日目にはほぼふ化が終了しました(写真)。
  島牧から寿都海域のコウナゴ資源の様子が少しずつですが分かってきました。現在,調査を継続中ですので,新たな情報が得られましたら,また,お知らせします。

(中央水試 資源管理部 主任研究員 西内 修一)

海洋環境部

三上加奈子さん写真
  新人です。よろしくお願いします!

  このたび、北海道立中央水産試験場、海洋環境部に配属になりました三上加奈子と申します。

  出身地は札幌市です。北海道大学水産学部、食品科学科、食品製造学講座で芽胞菌の耐熱性の研究をしておりました。海洋についてはど・ど・ど素人で、一日も早く使える研究員になれるよう日々努力をしていきたいと思います。皆様、ご指導宜しくお願いいたします。

  趣味はテニスで、高校、大学と毎日のようにしておりましたが、卒業してから二年間、運動不足の生活を送ってしまいましたので、今年からは運動を始めようと思っています。

(海洋環境部 海洋環境科 三上 加奈子)