水産研究本部

試験研究は今 No.426「ウニ加工衛生管理説明会の開催状況」(2000年6月16日)

ウニ加工衛生管理説明会の開催状況

  最近、醤油漬けイクラによるによる病原性大腸菌O-157食中毒、イカ珍味によるサルモネラ菌食中毒、握り寿司による腸炎ビブリオ食中毒など、水産物を原因とした食中毒が連続して発生し、新聞、テレビ等マスコミで大きく報道され、世間を驚かせました。

  このうち腸炎ビブリオ食中毒は最も発生率が高く、平成11年度の北海道で発生した食中毒の74パーセントが、この菌による食中毒です。

  なぜ腸炎ビブリオによる食中毒が多いのか、その理由は、この菌が広い範囲の海水中に生息するからで、かなり沖合の海水からも検出された例があります。

  腸炎ビブリオは、2~3パーセントの塩分を好み、真水ではほとんど増殖しません。また低温でもあまり増殖しません。しかし、2~3パーセントの塩分があり、温度が20度以上になると急激に増殖を始め、時には、2~3時間で数千万から1億位の菌数に増殖し、食中毒を引き起こします。

  この菌は熱に弱いことから、加熱する食品から腸炎ビブリオ食中毒が発生することは少なく、生で食べるウニ、にぎり寿し、刺身などが発生原因になりやすく、気温や海水温の上がる夏季に特に多く発生します。

  後志管内では、今年もウニ漁業が始まる季節になりました。一部の地域ではすでに解禁になり、漁業を始めているところもあります。日本海沿岸のウニ漁は主に初夏から夏にかけて行う漁業であり、腸炎ビブリオが海水中で増殖する時期とほぼ一致します。

  生ウニの加工処理は漁獲したウニの殻をそのまま殻割器などで割るため、腸炎ビブリオが殻に附着していると可食部の身にそれが附着する恐れが多分にあります。また、加熱して食べることはほとんどなく、生で食べるのが最もおいしい食べ方ですので、食中毒の原因になる可能性が高いと言えます。

  一度、食中毒が発生すると生産者、製造者は患者に多額の補償が必要となるばかりでなく、地域全体の製品の信用を失います。信用を取り戻すためには、長い年月がかかることから、単に個人の問題でなく、地域全体に及ぼす影響も多大なものがあります。

  このような重大な事態の発生を予防するため、北海道立中央水産試験場、後志南部水産技術普及指導所、北海道後志支庁水産課、北海道倶知安保健所が協力し、ウニの加工処理に係わる衛生管理のポイントをわかりやすくまとめた「ウニ加工衛生管理マニュアル」を作成しました。

  昨今の食中毒の発生状況から、後志管内でウニを漁獲、加工処理する業者も衛生管理に対する関心が高く、この「マニュアル」のさらに具体的な説明を望む声が各地から出されました。そこで今年の3月から6月にかけて、要望の出された後志管内の各地区で後志支庁水産課、担当区水産技術普及指導所等の主催により説明会を開催しました。各説明会とも多くの漁業者、婦人部の方々が出席し、講師の説明に熱心に耳を傾けていました。

ウニ衛生管理に係わる説明会の開催状況

平成12年5月22日 美国町漁協会議室
  • 3月17日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明
    • 場所:中央水試会議室
    • 講師:中央水試加工利用部職員
    • 参加者:70名(後志北部市町村水産課職員、 後志北部各漁協指導担当職員、余市漁協浅海部員等)
  • 3月28日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明、「水産加工における一般的な衛生管理」
    • 場所:岩内文化センター
    • 講師:中央水試加工利用部職員、倶知安保健所生活衛生課職員
    • 参加者:118名(後志南部市町村水産課職員、 後志南部各漁協指導担当職員、浅海部会員、婦人部会員等)
  • 4月17日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明
    • 場所:古平漁協
    • 講師:中央水試加工利用部職員
    • 参加者:28名(古平漁協職員、浅海部会員等)
  • 5月22日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明
    • 場所:美国町漁協
    • 講師:中央水試加工利用部職員
    • 参加者:57名(美国町漁協職員、浅海部会員等)
  • 5月29日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明
    • 場所:美国町漁協
    • 講師:中央水試加工利用部職員
    • 参加者:71名(美国町漁協職員、婦人部員等)
  • 5月30日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明、「水産加工における一般的な衛生管理」
    • 場所:積丹漁協、日司生活改善センター
    • 講師:中央水試加工利用部職員、倶知安保健所生活衛生課職員
    • 参加者:126名(積丹漁協職員、浅海部会員、婦人部員等)
  • 6月7日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明、「水産加工における一般的な衛生管理」
    • 場所:盃集会所
    • 講師:中央水試加工利用部職員、岩内保健所生活衛生課職員
    • 参加者:38名(盃漁協職員、浅海部会員、婦人部員等)
  • 6月8日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明、「水産加工における一般的な衛生管理」
    • 場所:泊村漁村センター
    • 講師:中央水試加工利用部職員、岩内保健所生活衛生課職員
    • 参加者:44名(泊漁協職員、浅海部会員、婦人部員等)
  • 6月12日 「ウニ加工衛生管理マニュアル」の説明、「水産加工における一般的な衛生管理」
    • 場所:神恵内漁協
    • 講師:中央水試加工利用部職員、岩内保健所生活衛生課職員
    • 参加者:64名(神恵内漁協職員、浅海部会員、婦人部員等)
(中央水産試験場 加工利用部 加藤 健仁)