水産研究本部

試験研究は今 No.437「 サンマの脂はどれくらい~」(2000年11月24日)

試験研究は今 No.437「 サンマの脂はどれくらい?」(2000年11月24日)

サンマの脂はどれくらい?

  秋の味覚サンマを今年も味わっていただけたでしょうか?今年はとても大きなサンマが現れて新聞やテレビで紹介されていましたが、サンマの美味しさの指標となる脂肪量、「脂ののり」はどれくらいだったのでしょうか。

  釧路水産試験場では平成11年から釧路市漁業協同組合のご協力を得て、生鮮出荷されるサンマについて粗脂肪量を測定してきました。

  一般に、回遊魚は索餌期と産卵期では脂肪量は変化するといわれ、本道で8月下旬から水揚げされるサンマは千島沖でネオカラヌス・プルムクルスやツノナシオキアミ等の動物プランクトンを十分に食べて南下してきたものです。

  図1に示すように、体長29cm以上の大型サンマの脂肪量を時期別、年別に比較してみますと、漁の始まった8月下旬は毎年、20%前後の脂肪量でしたが、平成7年、8年の場合は漁の終期の10月になると、15パーセント程度まで減少しました。しかし、昨年と今年のサンマは漁期を通して20パーセント以上の脂肪量があることがわかりました。近年、海水温の上昇が見られ、例年よりサンマの南下が遅れているのが原因と考えられます。
    • 図1
  サンマは水揚げ後、各工場で選別機によって体重別に分けられています。釧路市漁業協同組合総合流通加工センターでは4キログラム詰めに必要な尾数で分けられています。つまり、200グラムのサンマは20尾、160グラムは25尾というように分類されています。そこで選別後のサンマについて脂肪量を測定してみました。図2に平成11、12年の尾数別の脂肪量を示しました。いずれも体長29センチメートル以上の大型サンマですが、125グラム(32尾)から今年はテレビ等で話題になっていたように220グラム(18尾)というサイズのものもありました。脂肪量は昨年、今年もいずれのサイズでも20パーセント以上ありますが、なかでも22尾以上のサイズでは25パーセント以上ありました。
    • 図2
  図3は平成11、12年に分析したサンマ225匹の水分と脂肪量の関係です。水分と脂肪には負の相関が見られ、水分が少ないほど脂肪量が多いことがわかります。脂肪量を測定するにはソックスレー脂肪抽出器やジエチルエーテルという有機溶剤が必要です。しかし、新たに抽出器を購入したり、有機溶剤を扱うのは大変なため、水分を測定することによって、脂肪(パーセント)=-1.191x水分(パーセント)+89.578 という計算式で、各施設でサンマの脂肪量の推定が可能になるのではないかと思います。
    • 図3
  サンマの脂肪には血液をサラサラにするEPAや学習機能の向上に役立つDHAがたくさん含まれています。生鮮サンマの時期は終わってしまいましたが、今年も冷凍品や加工品で脂ののったサンマがまだまだ楽しめそうです。

(釧路水産試験場 利用部 宮崎亜希子、辻 浩司)