はじめに
ウニ類やエゾアワビ、マナマコなど北海道沿岸で重要な水産資源となっている底生動物には、親と異なり海水中を漂う浮遊幼生の時期があります。浮遊幼生の着底・変態を引き起こす化学物質の存在が知られていますが、流れの影響についてはあまり明らかになっていません。ここでは、マナマコ浮遊幼生の着底を例として、流れの速さと着底の関係について報告します。
マナマコ稚仔は、内湾など静穏な海域では潮間帯のタイドプールや掘削溝で多数生息していることが知られていますが、外海に面した海域では水深3~12メートル付近の深い場所に多い傾向があります。このように小さいマナマコが見つかる場所の水深は様々ですが、流速の遅い静穏な場所という特徴が共通しています。また、西日本では干潟に立てた枝付きの竹が流れを攪乱してマナマコの浮遊幼生を滞留しやすくする機能を持った採苗礁の開発が行われています。そこで、本研究ではマナマコ浮遊幼生の着底に及ぼす流速の影響を室内試験で検討しました。
マナマコ稚仔は、内湾など静穏な海域では潮間帯のタイドプールや掘削溝で多数生息していることが知られていますが、外海に面した海域では水深3~12メートル付近の深い場所に多い傾向があります。このように小さいマナマコが見つかる場所の水深は様々ですが、流速の遅い静穏な場所という特徴が共通しています。また、西日本では干潟に立てた枝付きの竹が流れを攪乱してマナマコの浮遊幼生を滞留しやすくする機能を持った採苗礁の開発が行われています。そこで、本研究ではマナマコ浮遊幼生の着底に及ぼす流速の影響を室内試験で検討しました。
方法
また、着底した稚仔がスライドグラスの間を移動する影響を除くために、スライドグラスの間を空けて配置し、さらに浮遊幼生投入から付着数調査の期間を2~3日と短くした試験も行いました。
結果
おわりに
玉石帯はナマコだけではなくエゾアワビやウニ類にとっても浮遊幼生の着底や稚仔の生息場所として重要な環境です。稚ナマコやエゾアワビの稚貝は、埋没せずに複層に重なっている玉石の下側や、そのような玉石が作る隙間に生息していることが潜水調査で観察されています。
水産工学室では2010年1月に「低速振動流水槽」を導入しました(図6)。この水槽では一方向の流れではなく、自然環境に近いゆっくりした振動流を設定することができます。今後は、この水槽を用いた室内試験により、水産で有用な底生動物の初期生態に及ぼす流れの影響を明らかにしていきたいと考えています。
(北海道立中央水産試験場 水産工学室 干川 裕
北海道立栽培水産試験場 生産技術部 酒井勇一)
北海道立栽培水産試験場 生産技術部 酒井勇一)