水産研究本部

試験研究は今 No.441「紋別地域における水産加工業への「関連機関支援強化事業」について」(2001年1月25日)

紋別地域における水産加工業への「関連機関支援強化事業」について

  現在、中小企業が新たな技術開発や新商品・販路開拓を進め、「産業集積」の新たな活路を見いだすために『特定産業集積の活性化に関する臨時措置法』(略称:地域産業集積活性化法)が施行されています。

  紋別地域(紋別市、興部町、雄武町)では、平成12年3月に通商産業省より水産食料品製造業と飼料・有機質肥料製造業を特定業種とする活性化計画の承認を受け、平成12年度から5カ年にわたり国の支援による各種事業が行われることになりました。

  この中で紋別地域の支援機関として網走水試紋別支場が「関連機関支援強化事業」を担当します。

  関連機関支援強化事業としては、次の事を進めていきます。

1.研究開発事業

地域水産物の付加価値及び品質の向上を図るための技術開発を行います。

2.人材育成事業

水産加工における新しい商品開発に関する講習会や実践的な研修により人材の育成や技術の向上を図ります。

3.調査研究・成果普及事業

  売れ筋商品、市場動向、消費者ニーズ等に関する調査を行い、需要構造の変化に対応した技術や製品の認識及び製品企画力の向上を図ります。また、水産加工業界等の科学技術情報や技術動向の収集及びこれらで得られた情報を提供するための「水産加工情報」パンフレットの発行を行います。

  今年度の研究開発事業としては、「割れ貝利用によるホタテエキス製造技術開発」を行っていますのでその概要をお知らせします。

「割れ貝利用によるホタテエキス製造技術開発」

  紋別地域(紋別市、興部町、雄武町)のホタテガイの生産量は、平成10年で約6万2千トンに達していますが、漁獲や加工処理の際に割れ貝が発生します(様々な条件で発生の割合が異なりますが、全体の5~10パーセントの範囲と思われます)。割れ貝は、砂かみが多くサイズも不揃いで、加工処理の際も砂取りに手間がかかります。そして、製品の価格が通常に比べ低いものとなっています。

  現在市場に流通しているホタテガイエキス(天然調味料)は、乾ほたて貝柱製造時の2番煮熟液を利用して生産されています。私どもの調査によりますと、ホタテガイエキスの年間の生産量は約1,500トン、生産金額は約12億円で、本州の10社程度の企業が生産しています。

  このような状況から、割れ貝の付加価値向上を目的として割れ貝からのホタテガイエキスの製造技術開発を行っています。ホタテエキスの製造工程を図1に示します。現在、貝柱や剥き身(ウロ除去)を用いてエキスの製造条件や市場性について検討しています。

  製品の特徴としては、ホタテガイ乾燥品から抽出した天然エキスであり、ほぼ無塩ですので(食塩は使用しませんが、ホタテガイがもつわずかな食塩が濃縮されるため完全な無塩にはなりません)その用途が期待されます。(網走水産試験場紋別支場 加工開発科長 阪本正博)
    • 図1