水産研究本部

試験研究は今 No.525「2年連続の不漁- どうしてオホーツク海にはサンマが来ない~」(2004年6月14日)

試験研究は今 No.525「2年連続の不漁- どうしてオホーツク海にはサンマが来ない?」(2004年6月14日)

2年連続の不漁 - どうしてオホーツク海にはサンマが来ない?

[*]は、関連するウェブページです。マリンネット北海道内のページはリンクしていますので、クリックしてみてください。また、マリンネット北海道以外で関連するページはURLを掲げましたので、たどってみてください。
なお、「pdf」とあるものは Adobe (Acrobat) Reader が、また動画は QuickTime が、それぞれ必要です。クリックして開かない場合は、マリンネット北海道のトップページの一番下にある説明を参考に、インストールしてください。
トップページ リンク先 http://www.fishexp.hro.or.jp/list/fisheries/marine/index.html

最近のサンマの漁模様

昨年2003年の道東太平洋のサンマの水揚げは103,286トン(全国さんま漁業協会調べ)で、2000年以来4年連続10万トンを超える豊漁でした。一方、オホーツク海域では2002年に続いて2003年もサンマの水揚げは、ほぼ皆無でした。
オホーツク海域でのサンマの漁獲量は80年代半ばから、しばらく低迷していましたが、1996年に実に14年ぶりに1万トンを超え、そのご2001年まで毎年3千トンから1万4千トンの水揚げが続いていました。浜では道東入り会い船の受け入れ態勢も整ってきたところでしたが、一転、2年連続の手痛い不漁となりました。
太平洋側とは対照的なオホーツク海での不漁の原因は、いったい何なのでしょうか。サンマ漁には季節外れ[*a:とっとNET北海道]のこの時期、不漁だった2年間のオホーツク海のサンマ漁を振り返ってみます。

*a:とっとNET北海道>魚種別検索=サンマ-基本情報-Go

オホーツク海にサンマはいたか?

道水試が毎年9月にオホーツク海で実施している漁期前調査で2002年と’03年は、まとまったサンマの魚群をまったく発見できなかったことから、この2年間、オホーツク海にはサンマそのものが極めて少なかったと見られます[*b:浮魚ニュースun0218.pdf、*c:同un0318.pdf]。
オホーツク海のサンマのほとんどは、太平洋生まれの群れの一部が餌を求めて、南千島を抜け、来遊してくる[*d:釧路水試だより第82号pdf]、太平洋側と同じ資源(太平洋北西部系群[*e:水産庁HP])と考えられています。では、太平洋で豊漁をもたらしているサンマ資源が、なぜ、オホーツク海には来なくなったのか。その理由は、2002年と2003年で違っていました。

*b:浮魚ニュース2002年度第18号 pdf オホーツク海サンマ漁期前調査結果
*c:浮魚ニュース2003年度第18号 pdf オホーツク海サンマ漁期前調査結果
*d:釧路水試だより第82号 pdf オホーツク海域へのサンマの回遊と漁況変化
*e:水産庁のホームページ>資源評価>資源評価平成15年度版>サンマ(ダイジェスト版)[http://abchan.job.affrc.go.jp/digests15/html/1511.html]

来遊するサンマと来遊しないサンマ

  オホーツク海に来遊するサンマは、中小型魚(肉体長[*f:水産広場オホーツク]で20-29センチメートル)が多く、大型魚はほとんど回遊してきません。それは、魚体の大きさによって太平洋での南下移動経路が異なっているためではないかと考えられています。すなわち、例外的な年もありますが、たいてい中小型魚は南千島近くまで分布するのに、大型魚はその沖合で漁場になることから、大型魚はオホーツク海にほとんど入ることなく南下してしまうのではないか、という想定です[*d:釧路水試だより82号pdf(前出)]。

  ところで太平洋のサンマは主に冬に産卵しますが、夏を除いてほぼ周年産卵してるようです。主群の冬生まれは秋には小型魚となり、翌年1歳の秋には大型魚に成長します。また、秋生まれ群は満1歳の秋には中型魚になると考えられています。このような年齢の違いや、さらには魚体の大きさで好む水温帯も違うことなどから、南下時期や回遊経路が違ってくるようです。また、年による成長の違いも大きく、年齢と成長、資源状態との関係は複雑です[*g:巣山、*h水産庁pdf]。

*f:水産広場オホーツクNo.21肉体長とは?(本文なし)
*g:巣山:東北区水産研究所のホームページ>東北水研ニュース>62号目次>サンマの成長の年変動に関する研究[http://ss.myg.affrc.go.jp/tnf/news62/suyama.htm]
*h:水産庁のホームページ>資源評価>資源評価平成15年度版>サンマ(詳細版)pdf[http://abchan.job.affrc.go.jp/digests15/details/1511.pdf]

2003年漁期は...

  太平洋のサンマ資源の評価を総括している東北区水産研究所では、サンマ標本採集用に新たに開発した中層トロールを使って、 サンマがまだ太平洋に広く分布している漁期前の状況を短期間で押える調査を2001年から開始しました[*i:独立行政法人水産総合研究センター]。これによって資源全体の様子を把握できるようになりました。

  2003年の中層トロール調査結果によると、太平洋のサンマは大型ばかりで、中小型のサンマの数が大変少なかったようです[*j:浮魚ニュースun0312 pdf]。オホーツク海に来遊してくるはずの中小型魚が少なかったことが2003年オホーツク海の不漁の原因でした。

*i:独立行政法人水産総合研究センター>研究成果情報>平成14年度水産研究成果情報>中層トロールによるサンマの資源量推定技術の開発[http://www.fra.affrc.go.jp/kseika/14kseika/myg/myg02002.htm]
*j:浮魚ニュース2003年度第12号 pdf 北西太平洋サンマ長期漁況海況予報発表される

2002年漁期は...

  では、一昨年2002年の中層トロール調査の結果は、というと、中小型魚主体、まさしくオホーツク海に回遊するサイズが主体でした[*k:浮魚ニュースun0212 pdf]。なのに、この中小型魚はオホーツク海に入ることなく太平洋を南下してしまいました。それは、南千島に沿って流れる親潮が、この年は非常に冷たく、サンマの行く手をふさいだからでした。

  2002年、北海道、とくに道北・道東は冷夏の年でした[*l:気象庁]が、オホーツク海沿岸の夏の水温も過去20年で一番冷たい年でした。海況とサンマの回遊の関係について、詳しくは北水試だより62号[*m:pdf]をご覧ください。なお、この中で紹介した海面水温SSTのデータはインターネットで公開されているデータ集[*n:コロンビア大学ラモント・ドーティー地球科学研究所]から入手しました。

*k:浮魚ニュース2002年度第12号 pdf 平成14年度北西太平洋サンマ長期漁況海況予報発表される
*l:気象庁>報道発表資料 >平成14年度>夏(6〜8月)の天候[PDF形式:412KB]>[http://www.data.kishou.go.jp/stat/tenko020608.pdf]
*m:北水試だより62号 pdf オホーツク海さんま漁の初漁日を予測する
*n:The IRI/LDEO Climate Data Library> IGOSS nmc Reyn_SmithOIv2 weekly sst[http://ingrid.ldgo.columbia.edu/SOURCES/.IGOSS/.nmc/.Reyn_SmithOIv2/.weekly/.sst/]

サンマ調査は、これからが本番

  2年続けてオホーツク海ではサンマ皆無と残念な結果でしたが、オホーツク海のサンマ漁況は、南千島の海況条件と太平洋の中小型魚の量が決め手であることが再確認されました。

  さて、今年のサンマ漁は、どうなるでしょう。サンマの資源状態を知るための全国サンマ研究チームの調査は、もう始まっています。本州各県の水産研究機関は、サンマの稚仔採集をしているところです。そして東北水研の中層トロール調査船は来週6月1日から、釧路水試調査船北辰丸は7月からサンマ資源調査を開始します。

  ことしこそ、オホーツク海でも、うまいサンマ[*o:さかな革命(動画)]がとれることを期待しましょう。

*o:さかな革命>1999.8.20(金曜日)放映「魚革命」サンマ・北海道のサンマはうまい(動画)

(網走水産試験場 資源管理部 佐藤 一)